゚・。+☆+。・゚黒魔女゚・。+☆+。・゚
□ファション無用
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「ねぇ、いったいいつになったら弁償してくれるの?俺のコート」
ベッドの上であぐらをかいた幸村がブスッしてる。
『すぐになんて無理』
例によって朝から片付け。
今日は日曜日だけど、黒魔女修行に休日はなし。今朝も五時に叩き起されました。
でもさ、朝の五時過ぎからベッドの下に頭突っ込んで、髪の毛一本残さないように掃除してる中学生って、世の中に何人いる?しかも箒で!
「なんで無理なんだ。璢唖が駄目にしたんだろ、俺の着替え」
『だって小遣いがたりないし』
「お小遣い?いつもらえるだい?明日?明後日?」
『ブッブー!』
ウチはガバッとベッドの下から頭を出すと、両手で×をつくってみせた。
そしたら幸村の奴、いきなりぶっ飛んだ。
「な、なんだ、璢唖!やるのか!」
幸村ったらベッドの上に仁王立ちになって、壁際にピタッとくっついてる。
両手をウルトラ○ンの戦闘態勢みたいに挙げてる。
『な、なに急に……』
「それはこっちのセリフだよ。アンドレア十字如きで俺がビビるなんて思ってるのか?」
『(でも声震えてますけど) アンドレア十字って何それ?』
「はぁ?もしかして璢唖、何もわからないでやってるの?」
幸村はウルトラ○ンの格好をやめると、ズイッとウチに近づいてきた。
ああ、やめてくんないかな。せっかく皺一つなくベッドメーキングしたのに。
幸村はとんでもない力で、×をつくったウチの腕を真っ直ぐにした。
「X字型の十字をアンドレア十字っていってね、死霊を蘇らせるのに使うんだよ」
『死霊を蘇らせる?』
「何でもいいから、アンドレア十字の形を胸に押し当てて、墓場まで五千九百歩、歩くんだ。着いたところで『我、汝を待ち望む。現れよ』って言うと死霊が蘇る」
面白い!魔法オタクのウチの心を擽るよ。
『でもさ、どして、それが幸村をビビらせるわけ?』
「ビビッてない!驚いただけだ」
『同じだと思うんですけど』
「魔女に向かって死霊召喚のポーズをとるっていうのは、敵を召喚するってこと」
『ちょっと待って。幸村さま、霊なんかいないって前に言ってなかった?』
「それは幽霊のことだろ。死霊は魔界の住人だ」
またまた訳のわからないこと言い出したよ。
「死霊は死体を乗っ取って人間界に現れる低級魔物なんだ。黒魔女が魔術や呪いで、指一本触れずに人間を苦しめてるとき死霊は墓場からゴソッと起き上がって、斧とかチェーンソーで人間を切り刻んだりする」
『前にそんな映画あったね。でも、人間を苦しめるって意味じゃ同じでしょ』
「馬鹿いえ。あいつらは魔法も使わず悪さばかりする、魔界の面汚しだよ。だから黒魔女にっとって死霊は敵も同然。向こうもそう思ってるから、すぐ戦いになるんだ」
『へえ。そうなんだ。じゃあ、本当に召喚してみようかな』
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