☆矢・妄想小説

□年上の恋人
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日本の城戸邸。
時刻は夜の10時をまわっていた。
一輝は自分のベッドに横たわり、静かに目を閉じていた。

こんなに時間に考えるのはやはり想い人のことで。
彼のキラキラと太陽の光を受け、輝く金の髪。
少し華奢な体つきも、細く長い指も、
閉ざされた瞳をふちどる長い睫も・・・
すべてが好きだった。
今、どうしているだろうな・・・ギリシャは今何時だろう・・・
少しだけ年上の彼のことをぼんやりと考えていると、
コンコンと部屋のドアがなった。

「兄さん?・・・起きてる?」
扉を薄く開け、弟の瞬が顔をのぞかせた。
「ああ・・・どうした?瞬」
「あのね、ちょっといいかな・・・
今、下に黄金聖闘士がきているんだ。
それで・・・あの、呼んでくるように言われたんだよ、兄さんを」
ここは日本の城戸邸である。
たまに黄金の彼らもやってくるが、こんな時間にとは珍しい。
「瞬、もう夜遅いぞ・・・10時を過ぎているだろう?
・・・誰が何の用で来ているんだ?」
ちらりとサイドテーブルの時計を見て言う。
どうせ、アイオリアかデスマスクあたりだろう・・・。
あまり青銅の瞬たちに悪い遊びを教えないでほしいものだ。

・・・こういうとき、シャカは来るはずもない。
集団行動も苦手なはずだし、こちらから行く用事もたくさんはない。
用事がないのに行くと嫌がられるだろうと思い、
あまり逢瀬は多くなかった。
自分に好意を抱いてくれていることは何とかわかるものの
それ以外のことはほとんど未知のままなのだった。
「あ・・・そうなんだけど・・・
来ているのは、アルデバランと・・・
シャカなんだよ、兄さん」
シャカ、その単語に心臓がドキンとはねた。
瞬は少し恥ずかしそうに、
「僕・・・あーちゃん・・・あ、アルデバランと
ちょっと出かけてくるから、兄さんはシャカの相手をお願いできるかな?」
とうつむいて言った。
・・・牛め・・・瞬に会いにきたのか・・・。
一瞬いらついたが、シャカのことが気になるので一輝は下に降りていくことにした。
「わかった。瞬、あまり遅くなるなよ?」
ドアを閉めて、瞬と並んで歩く。
「うん!ありがと、兄さん」
可愛い笑顔を一輝に向ける瞬。
なんで瞬は牛なんかと・・・と嫉妬の炎が燃える。
が、階段をおりていくと大きな体躯のアルデバランの背中が見えた。
その陰にシャカがいた。
「あーちゃん、おまたせ!
・・・シャカ、兄さん連れてきましたよ。
・・・ごゆっくりどうぞ」
瞬はタタッとアルデバランに駆け寄り、その太い腕に抱きついた。
「一輝よ、夜分遅くにすまなかったな」
人目を憚らず、腕を絡めあって玄関へと向かう瞬たちを見て
シャカが無表情のまま言った。
「いや、別に・・・俺は平気だ」
一輝も無表情に言う。
しかし、内心は嬉しかった。
アルデバランの付き添いとしてだろうが、
それでも自分に会いにきてくれたのが嬉しかった。
「・・・あいつらが戻るのを待つのだろう?
どこかに行くか?それとも、何か食べるか?」
あまりシャカの普段の生活を知らないため、二人きりだと
何をしてよいかわからない。
シャカは少し考えて、
「・・・君と少し、話がしたい。場所はどこでもかまわん」
と瞳を閉じたまま一輝をみつめて言った。
具体的な希望を言われて一輝は驚いたが、
まあ妥当なところだろうとも思った。
「ああ。最近あまり話をしていなかったからな・・・部屋にくるか?」
コクリと頷くシャカを確認し、一輝は二階へと歩き出した。
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