マギ

□その名はアリババ
1ページ/6ページ



パッカパッカ パッカパッカ


暢気な音を立てて、荷馬車は揺れる 乗っているのは大きな男と一人の 少年、そして少女とその母親
それとフードを深く被った人一人

日差しをよける屋根はついているものの、日 差しは相変わらずさんさんと照っていて暑苦 しい

『(暑いなぁ……)』
そう思いながらもその人はフードを脱ごうとしない
代わりに足にまとわりつく鎖をそっと撫でた

少年は荷馬車から今しがた出てきた町のほう を見ると、金属で出来ているらしい笛を胸に 抱えながら嬉しそうに呟いた
「わー、ウーゴくん。街がだんだん小さくな ってゆくねえ!」
『…(ウーゴくん?)』
笛に語りかけているらしい少年が呼ぶその名に疑問を抱きながらもその呟きに母親が答えた
「ぼうやも隣町まで行くの?」
「そうさ!」
「まぁ、一人でえらいのねぇ」
「一人じゃないよ?ホラ!」
「?」
母親の言葉に、少年は嬉しそうに笛を掲げる

「キミも一人なのかい?」
『…私?』
「そうだよ、おにいさん」
『…おにっ……さぁて、どうだろうね』 「…?」

その人の言葉に、少年は首をことりと傾げた

だけど、それ以上踏み込まない方が良いと判 断したのか、少年は「そうなんだ」とこの話 に終止符を打った
納得はしていないのだろう、顔にはありあり と不満の色が浮き出ていた

と、その時、一番日差しに当たらない場所で リンゴをモシャモシャと食べていたおっさん( 豚)がリンゴの芯を床に投げ捨てた
「これ…騒ぐな子供よ…ホコリが散るそれにお前も勝手に喋るんじゃない」
男はそう言ってフードの人にリンゴの芯を投げつけたら
『………(汚っ)』
「せまいし、子供はうるさいし…ど〜〜なっと るんだね〜っ、運転手よ…」 「すみません、ダンナ様」
口うるさい男に答えたのは、荷馬車を操って いる青年だった
その顔には愛想笑いが浮かんでいたが、男が 気づく様子は無い
青年は御者を勤めながらも頭をかきながら男 に愛想笑いを振りまく
「うちは安いですが、仕事は確かですよ。ダ ンナ様の大事なブドウ酒は、きっちり運ばし て頂きますんで!はい!」
「フン、当然だ。きさまには一生手の届かん 高い酒だ、丁寧に扱えよ…」
『(そんなに美味しそうでもないけどね……これ)』

フードの人がそんなことを考えていると いつの間に移動していた のか少年が男の傍により、皿の上に載ってい るリンゴの山に手を伸ばしていた
「ワシの林檎に触るなっ!」
突然の大声に、少年が動きを止める

男の声に反応したのか、運転手が振り向いた
「だめだめ、それはダンナ様の林檎だよ!」
「僕にもおくれよ」
「おまえ…お金持ってんの?」
「持ってないよ?」
「じゃあだめです。ダンナ様はお金があるか ら林檎が食べられるの。お前は金がないから 、林檎は食べられないの!ね〜っ、ダンナ様 〜」
「そ…そんなぁ…」
「ハッハッハッ、わかっておるではないか運 転手よ」
青年の言葉に気を良くしたのか、男は上機嫌 で笑い出した

『君そんなにお腹空いてるの?』
「うん……お腹ペコペコなんだ、ずっと何も食べてないから」
少年は涙目で訴える
それを見てフードの人はさっき男が投げつけたリンゴの芯を手にとった
「おにいさんそれは食べられないよ」
『まぁ、見てて』
フードの人はなにかを呟いた
すると
芯は光を放ちそして沢山のリンゴが出てきた
『はい、どうぞ』
その内いくつかを少年に差し出した
「わぁ!今のどうやったんだい!」
少年はリンゴを受けとるのも忘れキラキラと好奇心に満ちた目でフードの人を見る
『ナイショ、君だけに特別に見せてあげたんだから皆にはシーだよ?』
そう言ってその人は人差し指を自分の口に当ててリンゴを手渡した
「本当に食べてもいいのかい?」
『うん、それだけで足りる?』
「ありがとう、おにいさん!僕はアラジン! おにいさんは?」
『私はアリア。アラジン悪いんだけどあそこの親子にもリンゴ渡してきてくれる?』
少年もといアラジンは頷き親子に渡しにいった
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ