ゆめくろ

□1夜 夢の中で
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葉月瑛菜は人前では泣けない娘だった

嬉しい 悔しい 感動などの感情では涙を流すことがあっても
辛い 苦しい 悲しい などの感情では絶対に泣かずただへらへらと笑っていた

そして独りになった時に静かに泣いていた
溜まっていたものを吐き出すように涙を流しながら



「くっ……グズッ…ふぅっ…えぐっ」
何もないただ真っ白な空間で葉月は体を丸めて小さくなり声を押し殺して泣いていた
「やぁ、こんなところでどおしたんだい」
そんな葉月に誰かが話しかけてきた
「……だれ?」
「さぁ、誰かな?……夢の中でも泣くなんて、どんな辛いことがあったんだい」
その人は指のはらで葉月の涙を払った
「私の脚、動かなくなるかもしれないの」
葉月の目からまたポロポロと雫がこぼれる
「今まで頑張ってきたの、でも頑張ったせいでバスケ出来なくなるかもしれないの」
葉月はうわーんと声をあげてないた
「こんな脚やだぁ、記録会なんて断ればよかったぁ私にバスケを返してよぉ」
葉月を見てその人は少し考えて頭をポンポンと撫でた
「夢の中だけでならその願い叶えてあげる」
「ほんと?」
葉月は目を丸くして聞き返した
「うん、君は夢渡りって知っているかい?」
葉月は首を横にブンブンと振った
「夢渡りってね、夢と夢を繋いで別の世界に行くことだよ」
「別の世界?」
「そう、別の世界の君は脚がとっても丈夫かもしれないし逆に運動なんて出来ないくらいか弱い子かもしれないもしかしたら男の子かも」
その人は微笑みながら葉月の頭を撫でる
「君はどんな君になりたくてどんな世界に行きたい?」
「……私もバスケが楽しめる世界に行きたい」
葉月は自分の願いをポツリポツリと漏らしていく
「脚も痛くなくて……そうだ男の子になりたい」
「男の子にかい?」
「うん!そしたら女の子だからダメって言われなくなるもん!」
「わかった……君にはここがいいかな」
そう言うと白い空間に扉が現れた
「さぁ、行っておいで、あっでもひとつだけ約束ね。向こうの人には君の名前を教えたらダメだよ」
「なんで?」
「もとの世界に帰ってこれなくなるからだよ」
葉月はわかったと言って扉に手を掛けた
手をふるその人に手を振り返し葉月は扉を開け光に包まれた
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