黒子のバスケ4

□第81Q 始動
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ダムッ ダムッ


季節は冬
暑かった夏も、過ごしやすい秋も終わり、11月に突入した今、寒い季節が到来し始めた
そのためか、夜になるとさらに気温は下がり、人の気配は少なくなる
そんな中、ストリートコートからボールのつく音と共に動き回る二つの影が公園に設置されたライトに照らされ黒く伸びていた
「はぁ…はぁ…」

ダムッ ダムッ

シュッ…!! ガコッ!


一つの影が、対峙した影を抜き、そのままゴールへとボールを投げるが、ボールはリングに当たって弾かれた
「うん、かなり上達したな…シュートは置いといて」
転がったボールを拾い言った瑛に、先ほど瑛を抜き、シュートを試みたが失敗した黒子がムッとした顔をした
「最後のは余計です」
「あはは!本当にテツヤは、昔っからシュートは全然ダメだよな」
「昔なら、瑛君の方が酷かったじゃないですか」
「おっ、それ言っちゃうか?…まぁ、今回の目的はドライブの方だし…これなら、決勝リーグには間に合うだろ」
「…ありがとうございました」
「ん?」
クルクルと指の先でボールを回していた瑛は、黒子の言葉に黒子を見た
「あの日からずっと…こうして夜までボクに付き合ってくれて、本当に瑛君には感謝してます」
突然言われたその言葉に、瑛はきょとんとした顔をした後、クスリと笑った
「お礼なんていいよ俺達仲間なんだから。仲間からの頼みなら喜んで手をさしのべる」
お前もそうだろ?と笑って言った瑛に、黒子も笑みをこぼした
「大体俺もお前に"アレ"教えてもらってんだからお礼なんて尚更言われる筋合いねぇよ」
「それもそうですね」
「まずは明日、絶対勝つぞ」
「当たり前です」
黒子の即答に瑛はまた笑う
その笑みには皆が勝ち進むであろうという絶対的な自信があった
だが、試合など最後まで何が起こるか分からないのも事実
明日から始まるウィンターカップ予選
それぞれがそれぞれにこの日まで練習を頑張ってきたのだ
「ここから…俺の知らない"黒子のバスケ"」
「?何か言いました?」
「え?いや、何も…っ…ごめんテツヤ、ちょっとトイレ行ってくる」
瑛は持ってきていたカバンを掴んでその場を離れていった



季節振り返り秋頃
瑛は自室でハンドリングしながら考え事をしていた
黒子に青峰との一対一を見られたあの日瑛は昔におきた様々な事を思いました
あの頃は夢だと思っていた出来事は実は夢ではなかったのだ
「だから、中2の冬なんて中途半端な時からの転生だったんだな……っ」
瑛は突然胸の辺りが苦しくなりそこを押さえた
「っ……なんだっ…これ……」
息も段々と荒くなり汗も滲んできた
「っ!等々出てしまったか」
「!!えっ……バ神?」
突然部屋にバ神が現れた
余りにも久しぶりすぎて忘れてる人もいるだろう
「毎回思うがバ神って酷くないか?」
「っさい!…そ…れより…っ…等々出てしまったって、なにがだっ…」
「その発作だ」
バ神は少し顔を険しくして瑛の胸を指差した
「お前は等々前の世界と時の歳に追い付いてしまった…その発作はそれが原因だ」
「なん…で?」
「体が前の世界に引っ張られ女に戻ろうとしているんだ」
「えっ…」
瑛はバ神の言葉に思わず息が止まりそうになった
「本当ならこんなこと無いはずなんだが、命日を過ぎた辺りから何故か異変が起きていた…そして、今日等々発作が起きたんだ」
バ神は懐から瓶を取り出した
「これからお前は突然女になってしまうことがあると思う、数日もすればまた男の体に戻ると思うがどうしてもすぐに男に戻らないといけないときそれを飲め」
受け取った瓶の中には錠剤がいくつも入っていた
「女になる前には多分発作が出ると思う…本来なら飲ませたくは無いのだがな」
「っ…これから……俺、どうなるんだ……」
「お前はその薬が無くなるとき選択しなければいけなくなる」
「選っ…択……?」
「男として生きていくか、女として生きていくか。だ」
「そんなの…」
「……お前過去に本気で女に戻りたいと強く願っただろう」
「!!」
「リミットはまだあるからじっくり考えろ」
「…答えを出さなかったらどうなるんだ」
「そうだな。ある日は男、ある日は女というふざけた体質になるかもな」
そう言ってバ神はくすりと笑った
「こんなの俺も見たこと無いからどうなるかわからん。もしかするとお前の存在がなくなるかもしれん…だから答えは出した方がいい」
瑛はバ神の言葉でうつむいてしまって
「俺は本来ストーリーには余り関わってはいけないんだ。だから次会うのはその薬が無くなったときだ」
バ神はそう言って消えていった


「クッ……はっ、ッあぁ……」
瑛は瓶から一粒の薬を取り出し飲み込んだ
「っ……はぁ、っはぁ」
息苦しい胸を掴み目の前の鏡に写り混む自分の顔を睨み付けた
「っ、まだだ…俺は…まだ……」

負けるわけにはいかない

その強い想いを胸に秘め、静かに明日を迎えるのだった
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