弱虫ペダル

□お引っ越し
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『来週から、もう少し長い時間付き合ってください』
お昼頃山坂は屋上に荒北を呼びつけ前にベプシを置いて頭を下げた
「なンだよこれ」
『え、いつもベプシ飲んでたから好きなのかと思って』
「いや、好きだけどそォ言うことじゃなくて。急にどォしたの」
『ふふふ、私来週から寮に入るの!』
ドヤッと自信満々に言った山坂に荒北はそォなのォとあまり興味無さげに返事をした
あれから毎日のように荒北は練習に付き合ってくれていたが何時も何だかんだと荒北は日が落ちきる前には山坂の事を返していた
「なに?練習の為に寮に入ったのォ?」
『まさか、元々入るつもりだったけど途中からの入寮だから来週からってだけよ』
「フゥーン…」
「おめさん達最近仲いいな」
『あっ、新開君』
「なんでオメーインだよ」
「屋上に上がってくの見えたからついてきた。で山坂さん来週から入寮らしいけど荷物は?」
新開は二人で話していたことを大体聞いていたようだ
『明日の夕方頃に届くよ』
「手伝ってあげようか?」
『え?』
新開はそう言ってにこりと微笑んだ
『いいよ、部活で疲れてるだろうし。私そんなに荷物ないし』
「ジャア、東堂にも手伝わせるか」
「寿一も誘っとこう」
「あー、福チャンお詫びしたいとか言ってたしな」
『えっ、ちょ、ちょっと!』
何故か山坂を置いて引っ越しの話が段々と進んでいった
必死に断ろうとしている山坂の話を二人は全く聞かず
「東堂に連絡ついたぜェ」
「寿一も大丈夫だとよ」
『あぁぁぁーーー!!!』
勝手に決まってしまった
「好意は素直に受け取っとくもんよォ?」
『うぅぅぅぅん……ありがとう』


「葵ーーー!!!来たぞぉぉぉ」
翌日の放課後東堂は山坂の姿を見るとブンブンと大きく手を降った
『あっ、皆!早いね』
「急いで来たからな」
東堂はドヤッと自慢げに笑う
「荷物もう運んでるのか?」
『うん。あとは、そこのダンボールと……』
山坂はビシッと指を指した先には
『妹が送りつけてきた物だけですね』
ダンボールの山と重そうなトレーニング器具達だった
「「「………」」」
『とりあえず、トレーニング器具は実家に送り返すけどダンボールの方は中身確認したいから中に運んで』
「わかった」
絶句している三人を気にせず山坂は指示を出した
福富は頷き荷物を運んで行くのをみて三人も遅れて運びはじめた

「おめさん妹がいたんだな。いくつ?」
ダンボールを大体運び終え中身を確認している山坂に新開は聞いてきた
『14よ。今中2』
「へぇ、来年受験生だな。妹さんもここか?」
『まさか、あのこ千葉にいるもの』
山坂の言葉に新開はえっ、と驚いた
『あれ、言ってなかったっけ?箱根に来たのは私だけよ。寮に入るまで親戚の家に止めてもらってたの』
向こうは煩かったからと言った山坂の顔は少し寂しげだった
『向こうにあまり執着は無いけど心残りがあるとしたら『裕ちゃん』達かなぁ』
「裕ちゃん?友達?」
突然出てきた名前に首を傾げた
名前の感じ的に女の子だろうか
『前の学校の部活仲間。私はマネだったけどね。みんな個性的でね真っ直ぐな人達なんだ!』
嬉々と話す山坂を見てその『裕ちゃん』らはとても大切な友人なのが伺えた
「葵!ダンボール入れ終えたぞ!」
「他は何かすることはないか?」
『あー、じゃあダンボール開けてくれない?開けるだけでいいから』
「うむ!了解した!…む?」
ベリベリと開けたダンボールにはサイクルウェアや自転車関連の物が入っていた
東堂はサイクルウェアをダンボールから出してばっと広げた
『あ!ちょっと尽八!開けるだけでいいって言ったでしょ!』
「うむ、女性用はやはり違うな」
『でしょうね!』
「葵!」
東堂は山坂にそのサイクルウェアを合わせる
『……なに?』
「着てみてくれ!」
『ヤダ』
即答すれば何故だと駄々をこねる
「このデザインのやつ着ているところ俺見たことがない!」
『でしょうね!それ長袖の奴だし!』
「俺も山坂さんのレーパン姿見てみたいな」
新開も東堂の意見に乗っかる
『え、でもあれ妹が送ってきたやつだからサイズ合ってないかも』
「なら、尚更サイズ確認の為に来た方がいいンじゃナァイ?」
『ぐっ、荒北まで』
「じゃ、俺ら外で待ってるから!」
新開達は福富の背中を押して部屋から出ていってしまった
『えっ、ええぇぇぇぇ!!?』

「葵!ちゃんと着れたかね?」
『今入ってきたら絶交だからね』
扉の中からマジトーンの山坂の声が聞こえた
どうやら着替えているようだ
「葵のレーパン姿…一年ぶりか」
「なんか東堂変態クセェな」
「そのとき山坂さんどんな感じだったの?」
「む、そうだな。モデルをやっていたからな、全体的に大分細かったな。胸もあまりなかったな!」
「へぇ、スレンダーだったのか、でも今の山坂さん結構胸あったよな」
「オメェもどこ見てンだよ」
「…それだとさっきのレーパン入らないんじゃないか?見た感じ中々細身だったぞ」
「「「えっ」」」
福富の発言に目を丸くしたときガチャっと扉が開かれた
『……これサイズ合ってないかも』
前のチャックがヘソまで下がったレーパン姿の山坂だった
「!!!?ちょ!山坂チャァァァァンなんつー格好で出てきてンの!!」
『だって、チャック閉まらないんだもん』
「下着は!」
『はぁ?普通つけないでしょ』
「「着けてないのか!!」」
「そこに食いつくんじゃネェェェェヨおバカチャンドモォォォ!!」
新開達が騒いで至ら福富が自分のジャージを山坂に羽織らせた
「横腹の辺りキズが見えてたぞ」
『あっ、ありがとう』
「それと前が閉まらないのは多分バストがあってないからだと思うぞ」
『あー、中学の時と比べると大分大きくなったからなぁ。とりあえず着替えてくるね』
「あぁ」


そして日も大分沈んできた頃無事に荷物の片付けが終わった
『皆ありがとう今日からちょっとずつ片付けて来週からの予定だったのにおかげで今日から住めるよ』
「まあ、途中で脱線しまくったけどナ」
「おっと、そいえばフクに聞いたぞ!山坂!今勝負出来んのは練習しているためだと!」
『え!?』
山坂は福富の方を見ると気まずそうに目をそらした
『……ねぇ、尽八。その話どのくらいまで聞いた?』
「む?フクからはトレーニング中と言うことだけだ!訳は隼人から聞いた。モデル業のせいで約1年ロードに乗れなかったのだろう?」
どうも新開がうまい具合に話を誤魔化してくれたようだ
山坂は口パクで新開にありがとうと言うと新開は手を降った
「そう言うことなら言ってくれれば俺がいくらでも練習に付き合ってやったのに」
『ううん!気にしないで!私一人で練習しないと集中出来ないから!』
東堂はそうかと少ししょんぼりしたような気がしたが気にしない
『そうだ!送り返す分のダンボール出してくるね。福富君ちょっと手伝ってくれない?』
「あっ、ああ」
「俺も手伝うよ」
『ありがとう。二人はちょっと待ってて、勝手に部屋のもの弄ったら……死刑ッショ』
「「ショ?」」
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