刀剣乱舞

□主と太刀
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『うぅ……ん』
ガンガンと響く頭を押さえて俺は布団から起き上がった
あれ?俺、いつ部屋に戻ってきたっけ?
昨日刀剣達に酒を飲まされてからの記憶が無く少し焦る
とりあえず仮面を着けなければと手探りで辺りを探るとカチャリと冷たいものが手にあたった。何かと目を向けるとそこにはお月さまがあった
『!?やべ!』
いつの間にかお月さまを下敷きにしていたらしく俺は慌ててお月さまを鞘から抜いて歪んだり欠けたりしていないか確めた
幸いにも何処にもそのようなものは見当たらずホッと息をついて枕元に転がっていた仮面を着けた
その時俺は部屋に置いてあったタブレットがチカチカと赤く光っているのが目に入り眉を寄せた
緑は近藤さんや土方さんなどのプライベートのメール
赤は政府からのメールだ
メールを開き中を確認すればやはり刀剣達関連のメールだった
簡単に言えば『さっさと出陣しろ』との催促のメールだった
『こっちの事情も知らねぇで偉そうに』
俺はまだ皆に出陣も遠征もさせたくはない
一見皆俺に心を開き前の主のトラウマを忘れたように見える
しかし実際にそれは俺に心配させまいとそう見せているのだ
メールの確認の為にタブレットを弄れば短刀達は「遠征ですか?」と不安げに見上げてくるし、鍛刀部屋に入ろうとすれば何人かに阻止される。お陰で一度も鍛刀部屋に入ったことがない
そして、まだ審神者である俺が怖いと思う奴らもいる
『…いざとなりゃ俺が出陣すればいいか』
俺はパタリとタブレットを伏せて痛む頭を押さえながら着替えて部屋を出た

「おう、大将。今日は随分と遅いお目覚めだな」
『あー、薬研……昨日酒飲まされたせいか…頭が超痛い』
「二日酔いか?待ってろ今薬出してやる…あ、それと、大将これ」
薬研はそう言って信長に何かを手渡してきた
それは短刀達が作っていた面だった
「兄弟達に渡してくれと頼まれたんだ。ついでに加州や大和守の旦那達も作ったみたいで頼まれた」
『おー、ついに出来たのか』
信長は一番上にあった面を取って早速着けてみた
『似合うか?』
「ああ、似合ってる。白い虎はきっと五虎退だな。見せてやれば喜ぶぞ」
『後で見せてこようと思う…それと、悪いんだが少しの間朝飯の準備手伝えないかもしれねぇ』
「なんだ?そんなに痛むのか?」
『いや、上からのお仕事でだ』
そう笑えば薬研は少し渋い顔をして無理するなよと薬を渡してくれた
『善処する。ありがとな』
「そういや、大将、今日なにか着けてるのかい?良い香だが少し強いと思うぜ?」
薬研はそう言って部屋に戻っていった
『何も着けてないんだが?……酒の匂いか?』


「おーきた君!」
大和守に突然苗字を呼ばれて信長は勢いよく飲んでいたお茶を吹き出した
『ごほっ!ゲホッ!…おまっ!ゴホッボホゴホッ』
お茶は気管に入ったようで何で名前を知っているのか聞きたいのに言葉にならず大和守は信長に、大丈夫?と背中をさする
『おまっ…どうしたんだきゅうに…ゲホッ…』
「あー、口から垂れてるよ?…沖田君もしかして昨日のこと覚えてない?」
『……昨日、俺なんかやらかしたのか?』
不安そうに聞き返してくるのを見て大和守は信長が何も覚えていないのだと知り愉快そうに口端をあげた
「昨日皆で沖田君の名前当てクイズしてたんだよ?そんで当てられた人は沖田君の顔を見れるって条件でね」
大和守の言葉に信長はサァっと青を青くした
『そっ、それで……?』
「ああ、安心して。誰も当てられなかったから。あれで分かったことなんて、沖田君の上司や同僚の苗字が近藤と土方な位だし」
大和守の話を聞いて信長はホッと胸を撫で下ろした
しかしならなぜ大和守は沖田君と呼んでいるのか疑問に感じた
『何でお前急に俺を沖田君なんて呼んだんだ?』
「んー、沖田君が沖田君に似ているからかな?あだ名みたいなものだよ」
随分と心臓に悪いあだ名だなと信長は胸の中で呟いた
「沖田君、その薬何?何時もは飲んでなかったよね」
『二日酔いの薬だよ。昨日お前らに飲まされたせいで頭痛いんだよ』
大和守は納得したのかふーんと小さく声を漏らした
「主ー!起きたの?…ん?」
薬研にでも起きたのを聞いたのか加州が朝食の膳を持って部屋に入ってきた
加州は部屋に入ってくるなり首を傾げた
「なんか、今日香何時もより強いね」
「あ、それ僕も思った。今日何かつけてるの?」
『え?』
「何時も近付いて嗅がないとわからない位の香だったから主の匂いなのかと思ったけど違うみたいだね」
「沖田君、お酒の匂い消すために着けてるならちょっとつけすぎだよ?」
『え?はぁ?』
二人の言葉に信長は頭に疑問符を浮かべて首を捻る
『俺、何も着けてな「あー!本当に五虎退の面を着けてる!」』
突然短刀達が入ってきたお陰でまた香の話はうやむやになった
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