black note【オリジナルBL小説】

□【創作】僕の光
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あの頃の僕の世界は、家の中だけ。

もっと言えば、
ベッドの上から聞こえる景色だけ。

でもね僕は寂しくないんだ。
友達が外の話を聞かせてくれるんだ。

彼の名前はエスぺ。
名前が無いって言ってたから僕が付けた。

意味は、希望。
僕の希望。

僕の世界は彼で出来てる。
エスペの話してくれる事が
僕の世界になった。

でも彼の姿を僕は見たことが無い。
僕は目の病気を患っている。

どんどん見えなくなって、
やがて完全な暗闇になった。

彼に出会ったのは
そんな暗闇に一人でいた時。

僕が友達を心から望んだ時だった。
彼に会って僕は一人じゃなくなった。

病気に侵された僕を彼は毎日見舞いに来て、いろんな話を聴かせてくれた。

次は、彼を見たい。
エスペの顔を見て話したい。
そんな願いが生まれた。
こんな事を望むのはいけない事ですか?

そんなある日お医者様が来て、
僕の目が見える様になるかもしれない、
と告げた。

コレでエスペの目を見て話すことが出来る。

両親も同意してくれて、
僕の手術は決定した。

嬉しくなった僕は彼にその事を話した。
彼は、おめでとう、と言ってくれた。
でも、彼の声は哀しそうに震えていた。

その時の僕には
理由なんて解かりもしなかった。


・・・僕は手術を受け、
目が見えるようになった。

眼を覚ませば
隣にエスペが居てくれると思ってた。

初めに見たのは、真っ白い天井。
次に泣いている両親。

首を廻らせて病室を見廻したが
彼の姿はどこにも無かった。

僕は両親にエスペはどこか聞いた。
でも両親の答えは、
そんな奴はいない、だった。
毎日来ていたエスぺを
両親は知らないと言った。

僕は不思議な感覚にとらわれていた。

両親が居なくなった後、
一枚の手紙を見つけた。

『もう君は大丈夫だよね、
 でもボクは君が心配だ。
 だから、君が大人になるまで傍に居るね。
 安心して、
 大人になった君はボクを忘れてる。
 ありがとう
 ボクは君のトモダチになれてよかった』

これはきっとエスペからの手紙。


小さい頃子守歌代わりに
両親が話してくれたお話を思い出す。

一人が寂しいと思っている
子の所へトモダチとして自分にそっくりな
子が来てくれて、トモダチになってくれる。

トモダチは本当の友達との
付き合い方の練習をしてくれる。

孤独を癒してくれる。
そんな優しい物語。

でも、その子に本物の友達が出来たとき
トモダチは消えてなくなる。

最初は、思い出。
最後は、夢物語。

本当は悲しい物語。

彼はきっと寂しがった
僕のトモダチだったんだ。

だって、彼は僕に優しい気持ちを
いっぱい教えてくれたんだ。

彼は僕自身、
だから寂しかった僕を解かってくれたんだ。

そして、
目が見えるようになった僕から離れた。

コレで僕は外に出ることが出来る。
沢山の友達ができるだろう。

けどもう、エスペに会うことは出来ない。

一番会いたいと、
顔を見たいと思っていた彼には会えない。

僕の目から涙が零れた。
初めて流した涙。
目が見えなくなった時も
涙なんて出なかったのに。

大切な、
本当に大切な僕の友達を思って流す、涙。

決して作り物のトモダチなどではなく。
彼は本当の『友達』なんだ。

僕は無事目が見えるようになって。
学校にも行くようになって、友達もできた。

幼いころの事は次第に薄れていった。
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