black note【オリジナルBL小説】

□【創作】紅い村の少年
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俺は戦争で家族を失い、旅をしている。
絵の才能に恵まれ、金に困ったりはしない。

そんなある日、とても美しい村があると聞いて筆休めの為に立ち寄った村で俺は信じられないモノを目にした。

それは自らの体を傷付けながら微笑む少年だった。

まるで今まで自分が書いてきた情景のようで恐ろしかった。

考えるよりも先に体が動いた。
周りに転がる遺体など気にすることなく少年の腕をつかみ、近くの家に駆け込み、水をぶっかけた。

少年は一瞬驚いたように目を見開き、すぐに泣き出してしまった。

解ってはいたが随分長い間このままだったらしい。

血が黒く濁って落ちない。

俺は服が汚れるのも気にせず少年を抱きしめた。

すると少年は、手を背中にまわして縋るようにして抱き付き声をあげて泣いた。

少年は小さく、"一人は嫌だ。"と呟いた。
その気持ちはよく解る。

家族を失った時、一人の辛さを知った。
旅をしているうちもその感覚は消えなかった。

暫く背中を撫でていると、落ち着いたのか泣き止んだ。

否、泣き疲れて眠ってしまった。

その寝顔はとても安らかで頬が緩む。
せめて、と思い顔の血をぬるま湯に浸けたタオルで拭き取る。

血で赤く染まって痩せこけてはいるが綺麗な顔をしている。

いくつもある傷は血の量にしては浅く痕が残ることはないだろう。

死のうとしたわけではなく、ただ、己を傷つけたかったのかもしれない。

一体この少年はどんな罪を犯したのか。


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