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□願い
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死なないで 鬼男くん
「鬼男くん………」
「……」
彼には既に、俺の声に反応するだけの気力さえ残ってないようだった。
俺はそんな彼の頬にそおっと触れてみる。
「―――――あっ」
ボロッと緑色の塊 … 鬼男くんの頬だった物が剥がれ落ちた。
そこから、少量の黒い何かが滴る。
これは夢なんじゃないかな、という淡い願いは、鬼男くんの低い呻きによって掻き消された。
目の前にいる鬼男くん。
褐色だった肌は、緑色に
綺麗で真っ直ぐだった目は、血走り
優しく微笑みかけてくれていた顔は、苦痛で歪み…
鬼男くんは『腐敗』したのだ。
生きたまま。
俺は、痛みに悶え苦しむ彼を、ただ見守ることしか出来ないのだろうか?
俺のせいで
鬼男くんは苦しんでるのに。
……………。
もしかしたら…
俺は短剣で
自分の腹をズブリと刺した。
楽になって 鬼男くん
解説