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□放課後時間☆ 鬼男と妹子Ver
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彼らが校門から出る頃には、既に日は姿を消し、すっかりお月様の独壇場と化していた。


静かな夜だった。


そんな静けさのせいなのだろうか。

彼等二人も、これといって何も会話を交わさず、ゆっくりとしたテンポで帰宅している。

…そんな、ゆったりとした沈黙は、鬼男の呟きで終わりを告げることとなる。

「……おーい、妹子?」

「……ん 何?鬼男くん。」

「嫌に今日、静かじゃないか?」

鬼男の一言に、妹子が眉を潜める。

「…夜だからじゃない?いつも僕達が帰るのって夕方だし。」

「…それもそうだけ」

「たまには良いじゃないですか。」

鬼男の言葉を遮り、妹子は微笑んだ。

「太子達が居ない帰り道も、中々レアで乙な物だと思うよ?」

「………それもそうだな。」

鬼男はゆっくりと空を見上げた。

鬼男の横顔が、夜の暗さを背景とし、月明かりに照らされる。

「…こんな風に月を見上げるなんて、普段しないもんな。ほら!妹子も見てみろよ。綺麗だぞ。」

「…本当だ、今日は半月だね。」

「………。」

「半月と言えば、あの模様、盛りつけられたカレーにしか見えないよ。」

「…………え?」

「ここ最近太子が、良い男になるため料理を覚えたい!って意気込んでたからさ、料理番任せてたんだよ。そしたらあの馬鹿、毎日毎日カレーしか作らない!僕がカレーは飽きた、って言ったら次はカレーパンだよ?! 何を間違ったらカレーパンなんて思考に至るんだよ!カレーパンもカレーも一緒だろ! ……って何鬼男くんどうしたの?」

「いや…… お前らって一緒に住んでんだっけ?」

「うん。太子と同じ学校に行くことになってコッチに住むってなった時、太子が、『一緒に住めば家賃半額!!』って誘ってくれたんだよ。」

「…ふーん 太子先輩とは幼なじみってことか。だから『太子』だなんて呼び捨てなんだな。」

そういうことです、と呟いた妹子が、小首を傾げる。

「…そういえば、鬼男くん、閻魔先輩の事『大王』って呼んでるよね?何で大王なの?」

「あぁ、僕が幼い頃から、何故かあいつのこと大王って呼んでんだよ。不思議だよな。」

「やっぱ、鬼男くんと閻魔先輩も幼なじみなんだ。…もしかして、二人も一緒に住んでたりする?」

「あぁ。」

「………え」

妹子は、冗談半分で尋ねたことが図星だったことに驚いた半面、いやに納得してしまった。

確かに、あの二人いつも激しい会話しかしていない様で、お互い何処か信頼しあってる感じがするもんな…

「……ブハッ」

鬼男が吹き出した。

「え?どしたの鬼男くん。」

「…妹子、俺らさっきから馬鹿二人組の話しかしてない。」

「…………あ」

……たしかに。

「妹子、此処は一つ賭けをしないか?」

「……賭け?」

「次、先に大王と太子先輩の名前を出した方が負けだ。んで負けた方が明日コンビニで勝った方に何か奢る! どうだ?簡単だろ。」

「んー… いいよ!じゃあよーいスタート!」

「唐突だなぁ。」

「ねぇ鬼男くん。」

「ん?」

「今日の夕飯は何にする予定?」

「………そうだなぁ…… 昨日はダイオ」

「ダイオ……?」

妹子がニヤリと鬼男の言葉を反復した意味がわかり、思わず鬼男は顔を赤くさせる。

「ダッ大王イカのパスタだったから、今夜は白米を食べたいな!」

「………ふーん…」

妹子は唇を尖らせる。そんな妹子に鬼男が攻撃を仕掛ける。

「妹子、明日は土曜で学校休みだけど、何か予定あんの?」

「あぁ、明日は太… っとぉっ! 太平洋まで出掛けたいなぁ… なんて」

「えー それ無理あるんじゃね?」

いやいやセーフだよ、なんて妹子が顔を赤く染め手をワタワタさせてる時、鬼男の携帯の着メロが軽快に鳴った。

「誰から?」

「珍しいなぁ 芭蕉先生からだ。」

鬼男はしばらく携帯の文字を目で追うと、柔らかく微笑んだ。

「芭蕉先生なんだって?」

「『閻魔くん今日は、いっぱい、いっぱい補習頑張ったから優しくしてあげてね。』だってさ。……あ!」

「いいよ、これは不可抗力。一次休戦にしよ。…閻魔先輩頑張ったらしいじゃん。」

「らしいな。 芭蕉先生のお墨付きだし、今日くらい優しくしてやろうか …あれ?妹子もしかして携帯ポケットに入ってる?何か光ってるぞ。」

「…ん 本当だ。センターで何かメール留まってたみたい。」
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