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□鬼弟子
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…容姿端麗。



曽良くんという人は、まるでその言葉をそのまま具現化したような人だった。
いや、容姿だけでなく、動きの一つ一つも美しかった。
お茶を飲む、というただの動作さえ、彼の手にかかれば芸術品になってしまうのだ。
あのいつも五月蝿い太子でさえ、黙って彼の美しさに見入っていた…。

「曽良くんめぇえぇぇえッ!!! さっきはよくもぉおぉぉお!!!!」

彼に見とれる僕と太子の横で、一人芭蕉さんは叫んだ。
すると、その声により曽良くんは僕等の存在に気が付いたようだ。
湯呑みを置き、コチラに近付いてくる。

…まるで、何かの舞台を見ているかようだった。


「…芭蕉さん……」


僕たちの前に着くと、彼はゆっくりと口を開いた。




「………死ななかったんですね。残念です。」


「おまああぁぁああぁあぁっ?!」

………え?!
美しい見た目に合わない言葉を吐いた彼に驚く間もなく、太子の甲高い悲鳴が僕の鼓膜を震わす。

両隣にいたはずの二人は消えていた。



「……い…いも…こぉ……!」

「…………太子ぃ!!」

太子は僕の横で腰を抜かしていた。

「ば、芭蕉さんが…芭蕉さんがあぁあぁああ!!!」

太子は何らかの脅威から少しでも逃れようとするかのようにかに、後ずさっていた。
そんな太子の視線を辿る。




「芭蕉さん!!!!」

曽良くんの足元。
そこには………





頭から血を流した芭蕉さんが転がっていた。



考えるより先に身体が動いた。

「……芭蕉さん!!! 大丈夫ですか?! 芭蕉さんッ!!!!」

僕は芭蕉さんの身体を揺する。

「………嘘…ですよね……」

芭蕉さんはピクリとも反応してくれなかった。

…芭蕉さんの微笑みが、僕の頭を過ぎって…消えた。

「……そんな…………芭蕉さん……芭」



ゾクリと背中に悪寒。

「―――妹子ッ!!!」






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