魔法少女リリカルヴィヴィオ
□第一話 始まり
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第一話 始まり
「すぅ〜はぁ〜……」
高ぶる胸を抑えるために大きく息を吸い込んで深呼吸。
Bランク昇格試験。それは一人前の魔道師となる最初の壁。
受かる自信はあるが全く緊張しないといえば嘘になる。
しかし、それでいい。
余裕をかましすぎれば足元をすくわれ、緊張しすぎれば思うように身体が動かなくなる。
油断もせず、堅くもならない。この適度な緊張こそが試験に受かるための第一歩だ。
トクトクとやや速い鼓動を刻む胸をヴィヴィオが寝かしつけること約一分。
試験の開始時間になると同時にヴィヴィオの眼前にウィンドウが展開。
「お? ちゃんといるな。あたしが今回試験官をするアギトだ。ってまぁ、言わなくてもわかってるか。久しぶりだな。ヴィヴィオ」
ウィンドウに映る赤髪の少女――正確には年上だが――が苦笑と共に自己紹介。
知り合いなんだから硬くならなくても良い。そんな気遣いが感じられる砕けた口調と苦笑。
「よろしくお願いします!」
「へぇ……」
それをわかりながら、あえて硬い挨拶を返したヴィヴィオ。
気遣いはいらない。知り合いだとも思わなくても良い。そんな目で見て欲しくなくて、純粋に試験官として見て欲しい。
この意を感じ取ったアギトは目を細めて、後頭部をカリカリと掻く。
「ったく、本当ならバッテンチビが担当するはずで、いきなり押し付けられたみたいで乗り気じゃなかったんだが――」
面倒だ。本当に。試験官などガラではないのにぼやいて。
口元は笑みの形から崩れない。
「――高町ヴィヴィオ二等空尉」
「はい!」
「受ける試験はBランク。試験内容はコース上に浮かぶターゲットの破壊。撃ち漏らしや被弾、危険行為があれば随時減点していく。大まかな内容はこんなもんだが、内容に間違いはねぇか?」
「間違いありません!」
頼もしく頷き、試験開始の声を待つだけとなったヴィヴィオを見ながらアギトはふと考える。
硬っくるしい試験官など乗り気ではなかった。それが今、楽しみで楽しみで仕方ない。
あまりにも目が真剣だからだっただろうか。不屈のエースの娘は伊達ではないという証なのか。
どちらでも良いとアギトは思考にピリオドを打つ。
確実なのは、彼女が今、ヴィヴィオの試験を見てみたいと思っているというただそれだけ。