銀魂〜突撃! 真選組!!〜

□ギャグパート集
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 今はもう使われていない真選組屯所奥地に存在する古びた倉庫。




 そこで、二番隊の隊士達と、たまたま居合わせ手伝わされる山崎が倉庫の外と中を行ったり来たりする。





 外に出てくる隊士は、埃かぶった荷物を抱え一定の場所に置き、また中へと入っていく。





 今週の二番隊の掃除の担当場所は、この倉庫なのだ。




 汚い。埃臭い。思うことはあるが、もしサボった場合の罰の事を考えると可愛いものだ。




 皆が真面目に掃除をする中、二番隊隊長、御月李麻が手ぶらで外へやって来る。





 そして山崎の一人の両肩を、両手でガッシリと掴むのだ。





 その手は汗ばんでおり、あまつさえ震えているようにも感じる。





 肩を掴まれた山崎は、訝しげな表情を惜しげもなく李麻に晒す。





「御月隊長……どうしたんですか?」





「ザキヤマ。隊長として持てる限りの権限を全て行使して命ずる」





 シリアスパートと何ら遜色のない声色で話すものだから、隊士の緊張が高まっていく。





 構わず李麻は続けた。

















「倉庫の奥地に存在する……黒い悪魔達を一匹残らず駆逐しろ!!」






「ゴキブリ退治かよオォオオオォォォォォォ!!」






 汚れ仕事を部下に押し付ける、年下の上司に山崎はツッコんだ。


















〜ゴキブリとかみなまで言っちゃダメ〜


































「シャラアアァァップ!! その名を口にするな!! 黒い悪魔もしくはGと呼べ!!」




「どっちでもいいわ!! 自分でやって下さいよ!!」




「ヤダ!! 僕G無理だもん!!」




「俺だって無理ですよ!!」




 押し問答を続けている間に、李麻と共に倉庫の掃除に当たっていた隊士達がどよめく。




「隊長、マジですか……!!」




「五センチ級を七匹ほど確認した。だが……それ以下のサイズもゴロゴロいる筈っ!」




「ばっ、ばかなっ!!」





 まるで、壁の外の巨大な生命体に怯える人類のような表情を浮かべる二番隊の隊士達。





「一匹仕留めるだけでも我々人類が束にならねばならないというのに……!!」





「これでは我々と奴等の間にある圧倒的な生命力の差は広がるばかりではないかっ!!」





「さっきから何の役演じてんだ!! テメー等は一体いつ心臓を捧げたんだよ!!」





 隊士達に山崎がツッコミを入れている間にも、黒い悪魔(通称G)の進撃は止まらない。





 今にこの倉庫を出て、歩き回り、飛び回り、屯所中の人類を恐怖のどん底に叩き落とすかもしれない。





 二番隊と山崎が倉庫の前で、素早く円陣を組み始めた。





「……どうしますか隊長!! やっぱりここは山崎(コニー)を投入するしか……!!」





「そうだな……よし行って来い!!」





「ふざけんじゃねーよ!! 五センチ級だけでも何匹いると思ってんですか!! 隊長達も手伝って下さいよ!!」





 必死の形相で訴える山崎に、李麻と二番隊の隊士達はフッ、と短く笑う。





 その笑みには、哀愁じみた、深い影が刻まれていた。








「僕達は……謂わば内地で安全に暮らしてきた憲兵団。あんな大勢対処できる筈がないだろが!!」





「要するにただのヘタレ集団じゃねえか!! つーか何でどいつもこいつも進撃の巨人ブームきてんだ!!」





「「「「オメーもな!!」」」」





 皆がどこか別の世界に行っている中、現実と戦う山崎が必死にツッコミを入れる。これでバカ達がいくらボケても問題ない。





 しかし、問題なのは倉庫の中にいる黒い悪魔共である。一匹いたら三十匹はいると思えと親に教えられてきたヤツを、七匹も見たのだ。





 確実に李麻が認識した以上の数はいる。自分も勿論、憲兵団改め腰抜け集団に到底対処しきれない。






 どうする。山崎が頭を抱えて悩んでいると、後ろから声が聞こえた。






「ったく……たかが掃除に何時間かかってんでィ。まーた土方コノヤローがイライラしだしたぜ」





 振り返り、そこにあったのは沖田の姿。彼等に今の沖田の姿に、全てを優しく包む菩薩の姿を重ねていた。






「助けて沖田さん!! 倉庫の奥に黒い悪魔がいるんだよ!!」






「おい、ひょっとしてそれってゴキブ……」






「お黙り!! 黒い悪魔もしくはイニシャルGとお呼び!!」






 沖田と李麻でそんなやり取りが成される中、一同は沖田を羨望の眼差しで見つめる。






「アホかテメー等は。奴らを相手に丸腰でいこうなんざどうかしてるぜ」






 事情を把握した沖田は、やれやれと言わんばかりにため息を一つ。





 言いながら、どこからともなくあるものを李麻達の眼前に差し出した。李麻達の目が大きく見開かれる。






「俺達はこの立体起動装置があって初めて奴等と戦えるってぇのを忘れちゃいけねェや」






 沖田の渾身のドヤ顔と共に、立体起動装置、又の名をアー●ジェットが姿を現した。





「俺もアニメからハマッたクチだが……その後人から借りた単行本をパラ見してるだけの奴よりは世界観も分からァ」






「……これが我々と、アニメでハマった後にちゃんと単行本を買い熟読している人間との差か……ッ!!」






 ついていけない山崎を置いて、周囲はますます熱くなっていく。





「じゃあ早くその立体起動装置でも●ースジェットでもなんでもいいから駆逐しちゃってくださいよ」





 と、それとなく奴等を退治してくるように沖田に山崎は言う。





 部下の分際で命令するなだのとは沖田は言わなかった。しかし、代わりに芝居がかった笑みを沖田は浮かべる。





 倉庫の中どころか、入り口にさえも寄り付かない様子から、その場にいた山崎は嫌な予感がした。





「沖田隊長? あの……まさか、沖田隊長も憲兵団だなんて言いませんよね?」





 山崎の言葉に、沖田は心外だと言わんばかりに山崎を視線で刺した。




「アホか。んな訳ねぇだろィ」




「ですよね。じゃあ早く……」




「俺ァ駐屯兵団……主にこのウォール・倉庫を守る事が仕事。壁外調査はテメーがすべきだぜ、山崎(コニー)」





 山崎の二の矢を封じて、沖田は素早く立体起動装置を山崎に手渡した。













「相変わらず詰めの甘い奴だな、総悟(ハンネス)よ」






 マジかコレ。マジで行かなきゃならないのか。そんな考えが頭をよぎった、その時だった。彼らの後ろからそんな声が聞こえたのは。






 つい数秒前にも、似たような出来事があったような気がする。そんな思いを胸に、一同は後ろを振り返った。




















  続く
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