銀魂〜突撃! 真選組!!〜

□短編集
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※イチャイチャ回です。苦手な方は、PC画面、携帯、スマホ、タブレットなどから3kmほど離れて御覧くださいませ




























〜愛娘には、物心が着く前から「男は皆狼なのよ気を付けなさい」と口が酸っぱくなるまで言え〜






 鉄之助の事件から幾日か経ち、真選組にも彼等にも日常が戻りつつあった。





 入院していた土方も今や退院し、事件以前と同じ量の仕事をこなしている。





 今日も遅くまで睨み付けていた帳簿に何とか折り合いをつけて、もう眠ってしまおうとした時だ。





 まだ明かりを着けたままだった土方の部屋と、縁側を仕切る障子にボンヤリと人影が浮かんだのは。





 見てはいけない何かを見てしまったのではないか。そんな焦燥感に駆られるが、程なくして杞憂に終わる。





 二、三度ほどノックしてから開かれたドアの先には、もうとっくに寝ている筈の恋歌が立っていた。





 こんな夜中に男の部屋を訪ねてくる彼女の神経を疑いながら、どうかしたのかと尋ねる。





「包帯を付け直したかったのだが、痛みだして手に上手く力が入らなくてな」





 代わりに包帯を巻いて欲しいと述べた恋歌は、怪我をした左足を引きずりながら部屋の中へと入っていった。
















「あだっ!? ちょっ、タンマ!! タンマって!! ちょっ……痛い痛い痛い痛い!!」 





「ちょっとの間だ我慢しろ」






 少し赤みを帯びた包帯を取り去り、新しい包帯を白い足に巻いていく。





 一旦包帯を取り去れば、ふくらはぎ辺りに赤黒い跡が、直径何センチかの円を作っていた。





 痛いと目にうっすら涙を浮かべて繰り返す恋歌の声を無視して、土方は黙って手を動かす。





 あの時、恋歌もあの場に置いていたら怪我をさせずに済んだのだろうか。包帯を巻き直しながらそう考えた。





 無論、自分の作戦も判断も間違っているとは思わない。そうした私情を挟むのは御免蒙るし、タラレバを言っても仕方がない。





 だが、それでも。そう思わずにはいられなかった。





 色々溢れる気持ちを口にする代わりに、恋歌の身体を抱き寄せる。ビクリと震えた身体に巻き付く土方の腕の力に、一層力が入った。





 少しすると恋歌が細腕をそっと背中に回す。その指先が、何度か背中の傷口を服の上から撫ぜた。





 肩口に押し付けられた土方の顔を、恋歌は見ることが出来ない。それ故に、彼の表情も良くは分からない。





 彼の真意には触れずに、恋歌は心地良ささえ沈黙を破った。





「兄上様はどんな御仁だったんじゃ?」





 恋歌の問いに、土方は彼女の肩口に付けていた頭を持ち上げた。





 抱き寄せ合っていた身体二つも、人っ子一人分ほどの距離が空く。合わさった目は、不意をつかれたと言っていた。






「どっかの誰かに吹き込まれたのか?」





「『副長は本当は心優しいお方っす。なので嫌わないであげて下さい』だと」 





 言いながら、恋歌の頭にはこの間まで副長小姓として屯所を歩き回っていた少年の顔が浮かぶ。





 口では「そんな土方、銀河中探しても何処にもいないから」などとからかったが、心の中では思わずせせら笑った。





 言われなくても、もうとっくに知っているのに。





 土方が懐に手を突っ込み、何かを探っていた。多分、煙草を探していたのだろう。





 しかし、一つ小さく舌打ちをしてから頭を数回、乱雑に掻いた。





 たまたま煙草が懐に無かったのか、他に理由があるのかは、知るところではない。





「成程な。包帯云々よりそっちの話をしに来たって事か」





「包帯云々も本当の話じゃ。失敬な」





 フンッと鼻を鳴らして、偉そうに腕組みする恋歌に「あーはいはいそうですか」と返す。





 一つ、深く吐く溜め息。その跡に目線を伏せて、土方はポツリと言った。





「多分あれが、家族に対する普通の態度だったと思う」





 小さい頃からずっと傍にいた母親が死んで、訳のわからないまま豪農の家に連れて来られて。





 顔も知らない兄弟に、腫れ物のように扱われたり、冷たい目線を浴びせられる日々。





 きっと幼い土方には、為五郎氏が家族として『普通に』接してくれた事。それが何より嬉しかったんだろう。





「そんな風に『普通に』愛してくれる人が居て良かったな」





 感慨深そうに頷く恋歌の声には、どこか皮肉めいたものを感じた。





 恋歌の過去は知らないが、以前屯所に来た彼女の父親の姿は今でも覚えている。





 しでかしてくれた事を考えると複雑な気分になるが、恋歌の父は、本当に娘を愛しているのは分かりきっていた。





 もっと根っこに深いものでもあるのか。思考を巡らせてはみたが、すぐに止める。





(今はいいか)





 人には、誰にも言いたくない事の一つや二つはある。それは目の前の少女とて例外ではあるまい。





 事件に関係するわけでもなし、土方が詮索することではないだろう。





 それよりも。と、用事が住んで覚束無い足で立ち上がろうとする恋歌の手を掴んで座らせた。





 完全に自室に戻るつもりだったのだろう。恋歌の表情は困惑の色を見せていた。






「一つ聞きたい。俺が起きてなかったら包帯はどうするつもりだったんだ?」




「そりゃあ……他に起きてる奴を探してたが?」





 予想はしていた答えを当然だと言わんばかりに述べた恋歌に、土方の血管は浮いた。





「何考えてんだテメーはあああああ!!」




「えっ? いや……寝ているところを起こすのは流石に悪いと……何故に怒る?」





「何故も何もねーわ! 良いか!? 男なんかな、皆狼だケダモノだ! もうちっと危機感持て! じゃじゃ馬でも一応女だろ!!」





「そうか、事情はよく分からんが土方がそこまで言うなら気を付け……って誰がじゃじゃ馬だコルアアァァ!!」















「イチャイチャしてんじゃねぇよクソが」





 隣の部屋で一部始終が聞こえていた李麻は、その夜、リア充のお陰で一睡も出来なかったという。






  
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