銀魂〜突撃! 真選組!!〜
□ギャグパート集
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それは、恋歌が見廻りに行こうとコートを着ながら縁側を歩いていた時だった。
庭先でキャッキャと楽しそうな声がするなとチラリと横目をやれば、沖田と李麻が楽しげに雪玉を互いに向けて投げていた。
沖田と李麻が一方的に山崎へ雪玉を投げつけているようにも見えるが、気のせいだろうと正面に向き直り歩き始める。
その時「危ない!」という李麻の声にもう一度振り返ると、恋歌の眼前にはとんでもないスピードで雪玉が襲いかかってくるではないか。
「うおっ! 危なっ!」
ぐんぐん距離を縮めて襲いかかってくるそれを恋歌は短く悲鳴を上げながら身をかがめてかわした。
当たり場を失った雪玉は障子を突き破りだれかの部屋の中に入っていく。
一部始終を見届けた雪玉を投げた張本人、李麻が「ゴメンゴメン」と悪びれもなく謝りながら縁側まで歩いてくる。
一緒にいた沖田も李麻に倣ってこっちにやって来た。その直後に、李麻が言った言葉が始まりだった。
「ふくちょーってさ、女子力全然無いよね」
ああ、神様。このクソガキを殴っても良いですよね? 良いって言わないなら神様、まずお前から殴る。
この言葉を受けて恋歌が一番最初に思い至ったのはそんなことだった。
「……は?」
「ふくちょーってさ、女子力全然無いよね」
「いや、聞こえておったから。もう一回言えの『は?』じゃないからな今のは」
しんしんと雪が降る中、場の空気も比例するように気温が下がっていく。
李麻の言う「女子力」というのは恋歌にも聞き覚えがあった。
食事会があれば皆の分を取り分けて均等に配る。転べば小さく「キャッ」悲鳴を挙げるなど、そういう仕草や態度の事だろう。
「何さ『うおっ! 危なっ!』って。完全なるおっさんじゃん。酔っ払って千鳥足で帰ってたらコケかけた感じだよ! ねー沖田さん」
笑い混じりに言う李麻の言葉に、それでも恋歌の堪忍袋の緒は切れはしなかった。代わりに粉々に砕けて跡形もなく消え去っただけだ。
至極面倒臭そうに生返事を返す沖田の姿は最早眼中にはない。
「いや、私にも女子力はあるぞ」
言いざま、恋歌の左手は目にも留まらぬスピードで李麻の喉笛まで延び、クレーンのごとく鷲掴みにして持ち上げた。
持ち上げられた李麻の表情が苦悶に満ちて、宙に浮いた足をバタつかせる。
「ぐおおおおおおおおおおお!!」
「な? 女子力ってこういうことだよな? 片手で16歳男児持ち上げられるなら有り余っておるだろう? なぁ、私は女子力の塊だよな? なぁ、李麻」
落ち着き払った口調とは裏腹に、手は首を絞め潰さんとする勢いだ。
「僕のじっでる女子力ど違……ぐががっ……だ、助げで沖田ざん殺ざれるぅぅ……!」
大口を開けても僅かずつしか吸い込めない酸素を振り絞り、やっとのことで出せたSOS。
大きく開いた目は血走って、うっすら涙すら浮かんでいるが、沖田の表情は一片たりとも変わらない。
「イヤ、今のはオメーが悪い。例え女子力皆無だろうがおっさんだろうがクソだろうが女に接する時ァ礼儀ってのが必要なんでィ」
「そういう事じゃ」
「ごっふああああああああ!!」
礼儀知らずは死ぬぞ。とサラリと言ってのける沖田に、一番礼儀知らずなのお前じゃね? と李麻は虫の声でツッコミを入れた。