銀魂〜突撃! 真選組!!〜

□原作リメイク
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〜春休み明けは皆けっこう大人に見える〜







「……一体どうなってるんすか」







「私が知っているわけがなかろう」







「こっちが聞きてーよ」









 逃げるように真選組帝国を後にし、人が多い場所にあるベンチに腰掛けた三人。







 まどろむように流れる沈黙を破った順番に、座っている。







 彼ら曰く、うつくもが終わって真選組シリーズ再開の知らせを聞いて持ち場に戻ったらこのザマだったらしい。








「でも、なんであんな……土方さんまで変わった演技を」







「ああ。それは思った。人生最大のトラウマになってしもうたぞ責任取れ」







「……おかしいのは奴等ではなく、俺だと思ったからだ」








「無視してんじゃねーぞオイ」









 新八と恋歌はさも不思議面をするが、土方からすればこいつ等の方が不思議でならない。








 自分以外の全員が変わっているのだ。自分の方がイレギュラーだと考えるのが普通だろう。







 こんな状況……もう笑うしかねーだろ。自嘲気味に吐き出した煙が寂しい。








 世間は、そんな彼等をお構いなしに人ごみを作り、街頭の大型テレビは音楽を鳴らしている。









「土方さん、須藤さん……僕等、タイムスリップでもしたんですかね?」









「イヤ、タイムスリップっていうか京にトリップしてただけだからな?」










 深刻げに呟いた新八に、ボソリとツッコんだ恋歌を置いて話は進まる。









「もしかしたら、バチでも、当たったんじゃないかって」










 一言呟いて、新八はひと呼吸置く。そして、寂しげな表情を帯びてこう言ったのだ。












 実は最近僕……ツッコミ、サボってたんです。









 原作でもアニメでも二次創作でも。とんでもない量のボケを捌いて、ヘトヘトになって









 それでも人気は中途半端だし、グッズも出ないし、二次創作でも扱いヒドいし








 やっぱり、ツッコミよりボケの方がオイシイんじゃないかって









「オリキャラの目の前でよく人気だのグッズだの言えるなオイ」








 でも、僕がサボってる間にも皆は……自分なりに出来る事を探して成長しようとしてた








「お願いだから無視はやめて! お前達にまで無視されてしもうたら私はどうしたらいいの!?」








 前に進もうとしていた。だから、立ち止まっていた自分は、置いていかれたのではないかと。








 この数分で、新八はそんな結論に達したのだ。







 そしてそれは、土方にも心当たりがあるのではないか。という考えにも至った。








「成程。だからツッコミキャラでありながらヘタレオタクというボケ属性を付けたりしたのか」







「アレは妖刀が……」







「訳の分からん薄黄色のニュルッニュルした気持ち悪いヤツで奇抜な事やらかしたりしたのか」







「それはただ好きなだけ……っていうか何前触れもなくマヨネーズを悪く言ってんのコイツ」








 完全に疑わしい人間を見つめ付きで問い質す恋歌に、一応は反論してみせる土方。







 だが、完全に否定をすることが出来ない材料がそこにある。








 今回の演技にしても、ボケたかった訳ではないと胸を張って言える自信がない。









 そういう意味では、彼もまた「ツッコミをサボった人間」と言えるだろう。










 それで彼等だけは取り残されてしまったのだ。










「俺達がツッコミサボってたせいでボケが飽和状態になり形を歪めてしまったとしたら……」










 俺達には、こんなところで嘆くないのかもしれねぇな








 三人で腰掛けていたベンチには、哀愁めいたものが漂っていた。








 約一名「イヤ、私は基本ボケに徹してたと思うんだが」という気持ちを胸に秘めて。









 その内の二人は、立ち上がり互いに背を向けすっかり変わってしまった自分の居場所へ歩を進め始めた。








 全く状況が理解出来ていない一人を残して。










「帰るわ。新生真選組帝国に。一応、カイザー止めとくな」










「そうですか……僕はやっぱり、万事屋で働いていこうと思います」











「イヤ、それは構わんがせめて分かりやすく説明してからにしてくれないのか?」











 その時、テレビの音楽が鳴り止み、ニュースが始まる音が聞こえた。



























 えー、続いてのニュースをお知らせします







 江戸に蔓延し始めた謎のイボによる被害が拡大しております







 医療機関の操作によって、その正体が掴めてきました







 生物の体に寄生し、その宿主の養分を吸い取り、やがては体を乗っ取ってしまうというこのイボはなんと!!







 「キューサイネトル」という、れっきとした寄生型エイリアンであることが判明しました






 
 まず、エイリアンはメガネをかけた厳ついオッサンのような生態になり、宿主の情報を読み取ります







 その後、宿主と全く瓜二つの姿に変態







 宿主に成り代わり、独自に進化を始め、数日で二年に相当する成長を遂げます










 特出すべきは、彼等が好むのは宿主の向上心であるというところです







 上昇志向のある人ほど彼等に寄生されやすく、その向上心を糧に彼等は進化します







 周囲に、突然変わったり、「二年後」という言葉を口にする方はいませんか? 







 キューサイネトルに寄生されている恐れがあります






 すぐに、仮死状態の本体がぶら下がっていないか確認してください







 そして、キューサイネトルをハリセンのようなもので思い切り叩いて潰してください







 アナタ達の友人は、何も変わってなどいません!!







 二年など、経っていません!!








 今!! アナタ達の目の前に広がる世界は!! ただの、イボが織り成す世界です!!



































 派手になった山崎の金色の毛先に、小さな、見慣れた山崎が土色の顔色をしてぶら下がっていた。
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