銀魂〜突撃! 真選組!!〜

□原作リメイク
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〜夏休み明けも皆けっこう大人に見える〜






 作者(ゴミクズ)が銀魂のサザエさん方式を無視して強引に二年時を押し進めたわけではない。






 二年も経ってないのだから、連中は、二年間修行していたわけでもない。













 つまり……

















「要するに、結局全部デキものじゃねぇかアアアアァァァァァァ!!」






 ヤムチャ銀さんも、イボがヤムチャになっただけ!!






 大人神楽ちゃんも、イボの上にイボが二つ出来ただけ!!






 ビッチ時雨さんも、イボが男達に依存して離れられなくなっただけ!!






 ゴリラ二人も、イボが乳繰り合ってイボの子を成しただけ!!







 今この場にいない人物に、ツッコミを入れても無駄というものである。







「向上心か……皮肉なもんだな。俺達はツッコミをサボってたお陰で寄生から免れていたようだ」






「そして私は単に江戸に居らなんだから事なきを得たというわけか……」








 寄生から免れた者が出来ることはただ一つ。






 目に闘志を宿した戦士達は、ハリセンを片手に走り出した。







「この歪んだイボ世界にハリセンを叩き込み!!」






「僕等の世界を取り戻すんじゃあああぁぁぁぁ!!」













 勢いの良いかけ言葉で、颯爽と街中をかける土方と眼鏡






 目指すは、イボに取り憑かれた仲間達のもと






 どうにもならないほど世界が歪む前に。一刻も早くハリセンを叩き込むべく二人はただ地面を蹴った






 しかし奴等も一筋縄ではいかない! どうする二人とも!! どうなる真選組シリーズ!!







「『頑張れ土方。ついでに眼鏡。俺達の戦いはまだまだこれからだ!』 梨栖(アホ)の次回作にご期待くださ……」






 どこからともなくマイク片手に台本を読む恋歌の後頭部に、二本のハリセンが叩き込まれた。









 何連載開始早々打ち切ろうとしてんだアァ!!






 オメーもツッコむんだよボケエェ!!






 ぶべらあぁぁ!!




















 仕切り直して、ハリセンを片手に持った三人が江戸の街中を颯爽と駆ける。






 まるで侍が刀を持つようにハリセンを構えて走っていく彼ら。






 その時三人の正面、つまり反対方向から人影が真っ直ぐこちらへ向かってきたのだ。






 最前列を走っていた新八の動きが止まる。人影がそんな新八の腕を引いて、自分の持つ豊満な乳房に押し当てた。






「新八ィ! お前今までどこ行ってたアルか!?」






 バカバカバカァ! 心配したんだからぁ!! イボになった神楽は、そう言って新八を抱き締める。






 元々、色の付いた話に縁のない新八に、美女からの抱擁など耐えられる筈もない。






 案の定、彼はメデューサと目が合った時のように身を石にしてしまった。






「オイ! 早くハリセン叩き込め!!」






「イボが命乞いしておるだけじゃ惑わされるな!!」






 新八の後に続いていた二人の換言も、今の新八にはひどく遠く感じるものだった。






 神楽さん!! そのボディを無遠慮に押し付けるの、反則だろオオオォォォォ!!






 彼女が必要としているのはほぼ眼鏡であっても、それでも自分を必要としていて、抱擁してくれるのは揺るがざる事実。






 新八の目には、彼女が可愛く映って仕方がない。






 本当に……こんな可愛らしい子が本当にイボなのだろうか。真っ白な頭の、冷静な部分がそう告げる。






 イヤ、もう……別にイボでも……。思考がまどろんだその時だ。






 アスファルトが創る、新八と神楽の影を覆う、新たな影が生み出される。






「惑わされてんじゃねえぇぇ!!」






 跳躍した土方が、ハリセンを振りかぶっていた。無論、神楽に向けて真っ直ぐと。






 絹を裂くような女の悲鳴。振りかぶったハリセンは、小気味の良い音を立てた。






 ドサリと、人が倒れる音。しかし、倒れたのは神楽ではない。その間に入った……






「カイザー・ソウゴ・ドS・オキタB世!!」






 イボに名付けられた通り名を、殴った土方が叫ぶ。






 沖田は、弱々しい声で、淡い笑みを浮かべながら、何故か血を一筋垂らした口を動かした。







「ひ、土方さん……貴女が女に手を挙げるところなんて、私は見たくありませんよ……」






「私はしょっちゅう手を挙げられているけどな!」






「ソレはあんたが悪いだけでしょうけどね!」






「オイ! しっかりするアル! バカイザー!!」







 ツッコミ紛いのコメントと、それに対するツッコミの横で、こんなところでも『バカイザー』が流行していることに、何でだと弱々しく呻く。







「こ、近藤さんが消えた後、私は組織を大きくすることだけを考えて生きてきた……」









 真選組を守るためなら非情な斡旋を強いることも厭わなかった







 でも土方さん、貴方まで汚れてしまったら……







「真選組は本当に、ただのならず者の集団になってしまう……!!」







 まるで戦場で事切れる寸前、仲間にまだ半ばだった志を打ち明けるように話す沖田。






 そしてその沖田の話を聞いていた土方の表情にはどんな鈍感でも見て取れるほど困惑の意が現れている。







 本当にコイツがイボなのか? こんなに、真選組の事を思っているコイツが……







 きっと土方の頭を占めるのはそんなところだろう。







「もう一度……土方さんと、マヨ丼……食べたかっ……!!」







 それだけを言い残して、沖田はかくんと首を傾けた。






「食べたことねーだろ!! 犬のエサとか言ってただろ!! 出まかせ言ってんじゃねーよ!!」






 死んだように瞼を閉じる沖田に、新八は冷静にツッコミを入れる。






 しかし、完全に冷静さを失った土方はそうはいかない。






 何も言わなくなった沖田を腕に抱き抱えて、彼の口にキャップを外したマヨネーズの開け口を差し込む。 






 そしてそのまま容器を手で握りつぶし、マヨネーズを沖田の口内へと入れていく。






 まるで人工呼吸のように。






「オイやめてやれ!! もうそれただの嫌がら……おぼろろろろろろ」



「須藤さあああああああああああああああん!?」






 恋歌がツッコミの途中でしゃがみこんで、動かない。






 ハリセンを握る恋歌の右手の力が段々弱まっているのを、彼女の背中をさすりながら感じていた。






「須藤さん大丈夫ですか?」






「ああ……それより、これはチャンスじゃ。今の内にカイザー、チャイナ娘を叩くぞ」






 新八の問いに、口元をポケットから取り出したハンカチで拭きながら恋歌は答えた。






 右手が、ハリセンを強く握り締める。






「私はチャイナ娘をはたく。お前はカイザー行け。ついでにあのアホも巻き込んで構わん」






「え、僕に出来ますかね?」






「出来ない奴には頼まん。3呼吸で奴等に寄生するイボ叩き落としアホの目を覚まさせるぞ」







 簡単にブリーフィングをしながらハリセンを真剣さながら構え、数歩先にある目標を見据える。






 そして同時に駆け出したその時だった。






「やめなさい新ちゃん!」






「ふくちょー!」






 呼ばれた声に、各自振り返る。そこには、生まれた子供を抱く妙の姿と、長身のイケメンと化した李麻がいた。






「瀕死の人間を襲うだなんて貴方それでも侍ですか!?」






「あ、姉上エエエエエエェェェェェェ!?」






「もう出産しておる……だと?」






「ねえ何で僕には何にも言わないの?」






 白い布に包まった赤子を抱えながら、ハリセンを携える新八を悲痛な目で見る妙。






 新八の手は完全に止まった。






 イボとはいえ大好きな姉の姿をした女を手にかける事を思うと、紙のハリセンが重く感じる。






 遂に思考まで止めかけた時、パァンという小気味の良い音が聞こえた。






 見てみるとイボの李麻に馬乗りになってハリセンを繰り返し繰り返し振るう恋歌の姿があった。






「眼鏡エェェェ!! 惑わされるな!! それは妙殿でも女でもない!! ただのイボじゃ!!」






「アンタは惑わなさすぎんだろオオオォォォォ!!」






 エースを狙うテニスプレイヤーのように大きく振りかぶっては李麻の両頬お交互に叩いていく。






 既に李麻は白目を向いて気絶していた。






 可哀想にと思う心の裏で、彼女の言う通りかも知れない。と、そう思う心が芽生え始める。






 そうだ……三人で決めたではないか。






 この歪んだイボ世界にハリセンを叩き込み、自分達の世界を取り戻そうと。







 その為ならば。新八は再びハリセンを構える。







「これ以上、姉上の顔でゴリラ嫁演じさせは……しない!!」







 意を決して。そんな表現が似合いだろう。新八は地面を蹴り、大きく駆けた。






 妙は子供の盾になるようにして、身を屈める。






「やめてええええぇぇぇ!! 違うの!! この子の本当の父親は……」







 その時、恋歌は見たのだ。今まで白い布に包まれて、見えなかった赤子の姿を。






 一見、どこにでもいそうな赤子ではあった。まだ首も据わっていなければ、目も開いていない。






 しかし、どこかで見たことある。そんな感覚をその子には感じさせられる。そんな赤子だった。






 目を瞑りながらハリセンを振りかざす新八。そのまま振り下ろせば妙を捉えることは出来るだろう。







 しかしあと数センチというところで、新八とイボの妙の間に人影が入った。







 バシィ!! 激しいハリセンの音が鳴り、生まれた風が辺りにいる人間の服や髪を揺らす。








 新八の物理的なツッコミを止めたのは、妙と赤子を守る形で間に割って入った土方であった。










 
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