銀魂〜突撃! 真選組!!〜

□ギャグパート集
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〜ゴッコ遊びは白熱する時と素に戻る時の切り替えが肝心〜








〜ごっこ遊びって







「相変わらず詰めの甘い奴だな、総悟(ハンネス)よ」






 デジャヴを感じつつも後ろを振り返れば、壁にもたれかかって腕を組んで佇む恋歌の姿があった。






「ピッ……ピクシス司令官(ふくちょー)!!」





 ある程度予想がついていた彼女の登場に、李麻は叫んだ。





 そして、一歩間違えれば即刻「中二病」という烙印を押されかねない恋歌の口ぶりに、沖田はピクリと眉を動かした。






「確かに立体起動装置は我々人類には必要不可欠。だが、奴らを仕留める気でいるならお前は奴等の生命力をなめすぎじゃ」






 奴等と本気で互角に渡り合いたいのであれば……。そう言いながら、恋歌はガサゴソと懐を弄った。





 そして、ある物を一同の眼前に突きつける。






「このブレードもまた必要不可欠であろうが!!」






 彼女が取り出したハエタタキを見て、沖田と李麻は大きく目を見開いた。






「しまった! 盲点だった!!」






「これがアニメから入った俺達と単行本から入った人間との差ってやつですかィ……!!」






「さっきから何なんだよそのどうでもいい情報!! 何でいちいち他人の進撃の巨人のハマり方まで熟知してるんだよ!!」






 山崎のツッコミをモノともしない面々は、話し口調を崩すことなく話を進めていく。





「とにかくこのウォール・倉庫の守備等駐屯兵団に任せて先に行け! 山崎(キッツ)!!」





「行かないって言ってんでしょあと誰だよキッツ!! せめてコニーのまま居させて下さいよ!!」






 飽くまで自分の足で行こうとしない彼らに山崎はツッコミを入れるも、奴等のボケは止まらない。





 一瞬、山崎の発言に「はぁ?」とでも言いたげな顔を浮かべて、彼らはすぐに茶番の世界に戻った。





「司令官! お言葉ですがアイツに我々人類の未来を託して良いのでしょうか!」





「そう思うのも仕方あるまい。奴は小鹿のように繊細な男じゃ」





「ビビって内地に逃げる奴に偉そうに言われたくねーよ!! でもキッツが誰か今思い出せましたよありがとう!!」







 相も変わらず、一向にウォール・倉庫奪還に向かおうとしない面々。





 その内、ハンネス……ではない。沖田が口火を切った。






「司令官。事ここに及んじゃあ仕方ありやせん。調査兵団に協力申請をするべきかと思いやす」






「そうだな……おい、お前達!」






「「「「「はっ、はい!」」」」」





 面子が濃くなる毎に、口数が減っていた二番隊の隊士達を呼びかけた。






「ちょっとそこまで行って調査兵団の兵士を呼んで来い。無論、熟練のな」





 恋歌の命に、二番隊の隊士達は目を大きく見開いた。そして彼らのこめかみには、嫌な汗が一筋流れている。






 しかし、彼らに二の矢を継ぐ時間はない。何か言いたげな目をしていたが、隊士達は一目散に駆け出した。






 そして残された沖田、恋歌、李麻は、立体起動装置(又の名をアース●ェット)とブレード(又の名をハエタタキ)を両手に持つ。






 三人の目には、明確な闘志が宿っていた。山崎の目には、呆れの感情が宿っていた。







「良いか二人とも!! 調査兵団が来るまでは何としてでもここを守り通す!! 一匹たりとも外へ出すな!!」





「「はっ!」」





「もし一匹でも外に出せば……民達に、何と詫びれば良いのか……ッ!!」






「民よりもこんな茶番に付き合わされてる読者に詫びる言葉を考えろオオォォ!!」







 山崎のツッコミを背に意を決した兵士達が、倉庫の真正面に立つ。






 最悪の事態がいつ来てもいいように、武器を構えたその時、またしても彼らの後ろから声がした。







「倉庫の掃除に何時間かけてやがるのかと気になって来てみれば……そういう事か」







 言葉の後には、ふぅー、と長く息を吐く音と、ニコチンの匂い。振り向けば案の定、土方がそこにいた。






 ヤバイ! 茶番ばっかりやってて今の今まで掃除をしてなかったのがバレたか!! 今度は山崎が嫌な汗を流す番であったのだ。





「いやあのそのっ……違うんです副長! これは……」





 焦る反面。これはチャンスである。山崎はそう思った。





 真選組有数の常識人である土方ならば、自分と同じくツッコミポジションに回ってくれるに違いない。





 ともすれば、この諌山先生に土下座して然るべきレベルの茶番も終わるに違いない。






 しかし、そんな山崎の希望も、土方の次の一言で絶望に変わった。

















「よく喋るな豚野郎」






「アンタもそっち側に行くんかいいいいいいいい!!」






 こうして土方の立場がハッキリした瞬間、倉庫の入り口正面に立っていた三人は、土方の方へ体を向ける。






 そして三人一斉に、何か眩しいものを見るようにして目を細めたり、腕で光を遮る仕草を取る。





 彼らの髪や服は、謎の風でごうごうとたなびいていた。






「この後光……さては貴様ッ! ただの調査兵団の者ではないな……ッ!!」





「まっ……眩しい! これが……途中からハマった僕達と連載当初から本誌を呼んでいた人間との差だというのかアァ!!」





「その口の悪さ。その目つきの悪さ……土方さん。アンタまさか……!!」





「沖田隊長。それほとんど悪口ですよね?」






 恋歌、李麻、沖田、山崎。順番に口々に述べている間にも、土方は立体起動装置とブレードを手に取る。






「お前達は傷付いた兵士を介抱しろ。俺は残りを片付けっ!?」






 朗々と、語っていた土方の言葉が止まる。当たりは、真夜中のように静まり返った。







 言葉を止めた土方はというと、右手で口元を覆い、小刻みに震えている。






 そしてようやく小さく、しかし、ハッキリと周囲に聞こえる声で言ったのだ。

















「舌……噛んじまった」







「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」







 慣れないボケをするからだ。そんなバカな。






 言いたいことは山ほどあったのだが、開口一番に山崎から出てきた声はこれだった。






 残る三人の顔が気になって、見てみれば、至極白けた顔を惜しげもなく土方に向けている。







「なんだ。ただの兵長のモノマネする奴であったか」





「なんだ。ただのオルオか」





「興ざめもいいところでさァ」





「テメー等オルオの事バカにしすぎだろ!! 言っとっけどリヴァイ班で一番腕が立つ奴だぞコルァ!!」





「言ってる場合か誰でもいいからさっさと駆逐しろよ!! 二話も続けてんのに一匹たりとも駆逐出来てねーんだぞ!!」






 その時、一同の後ろから二番隊の隊士達がこちらに向かって駆けてくる音が聞こえた。





「隊長ー! 皆さーん!! 調査兵団を連れて来ましたアアァァァ!!」





 その声で後ろを振り返った瞬間。見えたのは、一番隊、つまり沖田の部下にいる隈無清蔵(くまなくせいぞう)の姿だった。





 彼の周囲を包む、土方(オルオ)を遥かに凌ぐ後光に、一同は目を完全に塞いでしまった。





「まっ眩しいいぃぃ!! まさか……まさか本物の人類最強が来たとでも言うのかアァァ!!」




「いや……こいつぁ、こいつぁ兵長どころの騒ぎじゃないですぜ……!!」





「バカな!! 兵長よりスゴイ人って一体……!?」





 目を瞑りながら、まだ茶番の中にいる、恋歌、沖田、李麻が口々に騒ぎ出す。




 現実の世界にいる山崎以外に、自身が調査兵団所属であるからだろうか、土方が目を開けたまま立っていた。





「一人だけ……可能性があるかもしれねぇ」





「何だって!? 人類最強と謳われた男よりも凄まじい光を持つ人物なんて……!?」





 土方と李麻がやり取りをしているのを、気にも留めず隈無はただ立ち尽くしていた。






「調査兵団に入るために、この場に残る者は近々ほとんど死ぬのでしょう」





「そ、その台詞はまさかああぁぁぁ!!」





 隈無が言葉を並べたと更に同時に強まった光と風で、他の者達が身動きを取れない。





「自分に訊いて頂きたい。人類のために心臓を捧げることができるのかを」





「「「「エ、エルヴィン団長オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」





 叫び声と共に、訓練兵も裸足で逃げ出す程見事な敬礼をしてみせる四人。





「あんだけゴネといて結局全員調査兵団にジョブチェンジイイイィィィ!?」





 全員が心臓を捧げたポーズを取った隅で、山崎はツッコミを入れた。





「皆さん! 私に続いて倉庫の中へ!! 共に黒い悪魔共を蹴散らしましょう!!」





 立体起動装置(アー●ジェット)とブレード(ハエタタキ)を両手に持ち、一同は倉庫へ足を踏み入れた。





 一番最後に入った元憲兵団の李麻が電気のスイッチを入れる。





 二、三度点滅した後、倉庫が明るくなり、周囲が見えるようになった。





 そして武器を持った戦士達は、一斉に固まることになる。
















「こんどー……さん?」




「何を、しておられるのですか?」




「おお、李麻、恋歌。総悟にトシに清蔵さんまで。何だ? 進撃の巨人ゴッコはもういいのか?」





 座り込み、何か作業をしていた近藤が、李麻達に呼ばれて顔だけを入口の彼らに向ける。






「危ないです近藤さん。ここはもう立派な壁外。いつ奴等が牙を剥くか分かりやせんよ」




「そうだぞ近藤さん。すぐに動けるようにしとかねえと!!」




「ああ、ゴキブリの事なら大丈夫」




 無垢な笑顔を向けながら、近藤は自分の体一つ分位置をずらし、ある物を彼等に見せつけた。




「こっ、これは……!! あっ」




「どうした団長!! あっ」





 目撃したものは、たちまち現実に引き戻される。





「いや、あんなに白熱してるのに邪魔しちゃ悪いと思ってな?」





 俺一人でバルサン炊いといたんだ。
















 Q:貴方がたは黒い悪魔たちを倒せずとも役に立ったのですか?






「も、勿論。……いえ。今回の茶番で我々は……くっ……何の成果も得られませんでしたアアァァァァァ!!」









 隈無の悲痛な叫び声が、屯所中に響いた。






 
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