銀魂〜出動!真選組!!〜

□李麻篇
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〜他の女子を「男好き」とか言う奴に限って男子の前では仕草を意識する〜




歌舞伎町の小さな家。そこには思春期真っ只中の少年と少ない毛髪を散らかした父親が住んでいた。


「ただいま〜。」


キャンディのような声色で父親を呼ぶ少年。


藍色のさらさらのねこっ毛をやや短くそろえて、紫のパッチリした目が覗き込んでいる。


そのお陰で何度女に間違えられたか。両手で数えても全然追いつかない。


「おかえり、李麻!頼んでたもの買って来てくれたか?」


少ない毛髪を散らかし、度のきつい眼鏡をかけているその姿は本当に親子なのかと問いたくなる。


「うん!育毛剤とヅラと・・・・・・」


「李麻!?頼んだものと違うよね!?それ遠回しにお父さんにハゲって言ってるよね!?」


「うん!」


李麻と呼ばれた少年は満面の笑みでこっくり頷いた。そして追い討ちをかけるように


「だって親って思われたくないもんっ!授業参観親に来て欲しくない子供の心境。」


砕けそうになる心を、寸前で建て直し、仏壇にお香を立てる。


チーーーーーーーー・・・・ン


「母さん。李麻はこの通り日に日に毒舌に拍車がかかって・・・・」


「誰の存在せいで腹黒少年とか呼ばれなきゃいけなくなってると思ってるんだよこのクソ親父。」


「母さん・・・・もう今年中にはげると思う。ストレスで。」


涙で視界を歪めながら、父は相変わらず仏壇の前に手を合わせる。


「・・・・じゃあ今度こそ本当に頼まれたもの買って来るねっ!おとーさん。」


バタン。帰ってきてまだ座布団を暖めないうちに外へ出てしまった。


「我が子ながら本当に恐ろしい・・・二十歳超えたらどうなることやら・・・・・」


ピンポーン。突如鳴り響く来訪の合図。


李麻?にしては早すぎる・・・・・・最寄のスーパーでも10分はかかるのに・・・・・・


不思議に思いつつも「はーい」と聞こえるはずのない問答をしてドアノブをひねる。


その瞬間、何かスプレーのようなものが視界を埋め尽くす。


そこから吐かれる煙をかいだ時、スプレーがゆらゆら揺れた所で、父の意識が途切れた。























「あ〜・・・・かったる〜・・・・・・」


「止めてくだせぇ須藤さん。仮にも愚民
(しみん)共の前ですぜ。ピシッとしねぇと」


「その言葉、愚民と書いてしみんと読むそなたにそのままそっくり返そうか。」


見回り前に手渡された紙を再三凝視しながら返した。


着任早々、早速事件となると腕が鳴る。




過激派攘夷浪士の頭、陣野 榊。攘夷活動という目的ならどんな犠牲も厭わないらしい。


それこそテロ活動を起こしたり、市街地を襲撃したり。


だがそれだけならまだいい。


善良な市民を人質に取ったり、家宅に押し入ったりととんでもない奴であった。


そして今てにもつ紙一枚こそ、その陣野の指名手配書である。


「よく国語の教科書に載ってるような顔じゃのぅ。」


「何でぃまだまっ更じゃねぇですかい。俺なんかもうとっくに落書き済みですぜ。」


ひょいっ。見せられたその紙には筆で、某有名アニメのキャラのようなひょろりと一本波立った毛。


いかにも度が強そうな側面席が分厚く、表面積が小さい眼鏡。


どちらかというと優男という印象を与える彼の顔は老いぼれた老人に変わり果てた。


「アハハハハ!!でもコレ、ヒゲが足りんぞ。」


悪ふざけで、筆の先端で鼻の下に黒い染みを一筆入れる。


「アゴヒゲもあったほうがいいんじゃねぇですかぃ?」


まるで漫画に出てくるような長老のように長く、縮れたヒゲを筆を何筆も厚塗りして表現する。


「そうなると杖も持ってた方が・・・・・・」


「じゃあ、ド〇ゴンボールも携えさせましょうや。」


「じゃあ背景は龍で・・・・・」


「いー加減にしろテメーら!!」


遠くにいる者でも鮮明に聞こえるような鈍い音。


振り返れば先程まで指名手配書に落書きをしていた二人組が筆を背から滑り落とし頭を抱える。


その目前には拳をぶら下げた土方がいた。


「検挙のための材料に落書きすんな!!お前等小学生か!!」


「中学生の国語や社会の教科書にも落書きだらけですぜ」


「そんな事出来んのは歴史人物や国語の教科書の作品の作者バカにしてる奴だけだろ!」


あ、すいません。実は私も諭吉を横長の長方形で囲ったことが・・・・・・


「作者!?テメーが話に入ってくんな!!テメーは黙って話だけ進めてろ!!」


「あー、欲望が出ちまったんですねぃ。」


「気持ちはよく分かるぞ。」


はい・・・そうなんです。集団で降って来てくんないかなー・・・っていう願望が芽生えて・・・・


「話進めるって、そっちじゃねー!!陣野に関する情報があったかって聞いてんだ!!」


それを聞いて、総悟は手帳をパラパラとめくりだす。


目ぼしいところで手を止め、一度苦い顔をしてからこう言った。


「案外眼鏡が似合いまさァ。」


「それただの感想だろうが!!手帳のくだりいらねぇだろーが!!・・・・お前は!」


いらついた声色で恋歌に目を向ける。その目はもはや瞳孔がどうこうという問題ではない。


しかし恋歌はそれ以上に大きく目を見開き、ある一人の男を指差す。


「あれ・・・・陣野じゃね?」


見比べろと言わんばかりに加工が施された指名手配書を見せだした。


すると落書きどおりの井出立ちに、龍の刺繍が入った皮のジャケットを羽織っていた。


そして肩には人一人は平気で包めそうな真っ黒な袋を背負っていた。


(((いたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ)))


驚きの余り、声も上げられずただただ口をあんぐり開けてたたずむだけだった。
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