銀魂〜出動!真選組!!〜

□ギャグパート集Part2
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〜生きていくためには猫を被ることも必要!!〜



「皆の衆。耳の穴かっぽじいてよう聞け。この度、真選組(正確には私)が・・・・・・・





TV出演することになったぞ(生放送)。」



それが、大広間に大使を集めた恋歌が開口一番に放った言葉だった。


「ふくちょー。面倒だからって( )ではしょってるとこあるよね?それやめよう?

何か( )書きされてるところの方が重要だと思うんだけど?小説以外わかんないよ?」



「戯けが。小説だから分かると踏んではしょったのじゃ。」


「もっとダメだろ!!」


しかし、李麻のツッコミを聞いている者などいない。


『TV出演』のくだりで大広間内のボルテージが上がっているからだ。


憧れのTVに(友情出演的な何かで)映ることが出来るかもしれない。


その夜、当の出演者が乗り気でないのとは対照的に隊士の各々が興奮気味に布団に入った。























『おはようございます。TV OEDO!!の時間がやってまいりました。

本日我々は、今、市民の間で人気沸騰中のあの美人剣士の密着取材に成功しました。

密着取材を担当する花野アナに中継を繋ぎます。花野アナ?花野アナ?』



パッ。画面が中年の男から若い女に変わる。


土方、沖田、李麻、山崎を初めとした真選組一向がその様子を見る。


「つーか、今屯所前だからその気になれば生で見れるんだけどね。」


「隊長。それを言っちゃダメです。」













「はーい!!こちら中継の花野です!

今回は神秘のベールに包まれたあの美人剣士の現住まい、真選組屯所に来ております。」


合図を聞き取ったかのように、カツン、カツン、足音が画面に近づいてくる。


「数々の女性雑誌でアイドルを抑えて『なりたい女性』『理想の女性』のナンバー1に君臨、

街を歩けば誰しも振り返る美貌の持ち主、『神速の女王』の異名を持つ真選組副長・・・」


「須藤恋歌じゃ。」


ベストポジションで足を止め、花野アナが手に持ったマイクを自分の口元に持って行き、言った。


「おはようございます。今日は一日よろしくお願します。」


マイクを一旦自分の口元に戻して、また恋歌の口元に差し出した。


「こちらこそ手柔らかに頼む。」


「ではニ、三ほど質問を。ズバリ今の自分が在るのは何のお陰だと思っていますか?」


『街中で偶然会うた近藤局長、それと我がままを許してくださった父のお陰と・・・・』




「僕、初めて見たよ。あの人が真顔でまともなこと言ってるの。」


「このままボロが出なきゃいいんだがな。」


画面の向こうでそんなやり取りが行われているなど知る由もない恋歌はTV画面で淡々と話す。





「先程紹介した女性雑誌の中にアイドルのファンからの苦情が来たという噂もありますが…」


先程とは打って変わって、大して自分に関係ない話を振ってこられて若干目が見開く。


戸惑いながらもマイクのそばで口を動かした。


「少数のアイドル派から苦情が来ようとも、世間では私の方が人気があるという事実は永遠じゃ。

ただの僻(ひが)みに腹を立てる必要はないと思うておる。」


この発言でおそらく何人か敵に回しただろう。TV画面の向こうでは皆がそう思った。


花野アナも眉をヒクヒクと動かす。


「それでは、須藤さんは朝、どのようにお過ごしになられてるんですか?」


「朝は、身支度を終えたら大概市街を巡回しておる。何時でも攘夷浪士が掃除できるようにな。」


と言いながら、街の中へと足を踏み進めた。


街中を歩く恋歌を後からゾロゾロついてくる『STAFF』と書かれたTシャツを着る人達。


「お茶の間でささやかな謎になっているこの真選組の巡回ですが主にどんな目的があるのですか?」


ドキュメントのように花野アナが真剣な顔つきで恋歌の口元にマイクを持ってくる。


「一つは先程申し上げたように攘夷浪士の掃除。もう一つは駐輪違反等の軽犯罪の取締りが主じゃ。

これを疎(おろそ)かにする者には例え上司でも手厳しく注意しておる。」


真面目にやった事がない故に、傍らで土方や山崎にくどいほど言われた台詞をそのまま言った。


「なるほど。それも市民の安全を思っての事なんですね。」


『真選組の一員として当然の義務をまっとうしようとしておるだけの事じゃ。』




「オイイィ!!何アレ!?何で一番ちゃんとしてねぇ奴があんな豪語してんだァ!?」


「仕方ないですよ副長。いくら須藤さんでもTVの前で『私はサボってます』なんて言えません。」


煎餅(せんべい)がかじられる音混じりのTV画面越しの会話。


「何時もちゃんとやってればねぃ・・・」


「そりゃご最もなんだけど沖田さんに言う資格あんのそれ。あ、立ちションしてる親父が。」



TV画面越しには塀に小便を飛ばしているグラサンをかけた中年の男がいた。


「あ!あんな所に違法者が!!須藤さ・・・ってアレ?」


隣にいたはずの恋歌がいない。ふとその男の方に目を戻すと信じられない光景が目に飛び込む。


それは、何の前触れもなくバズーカをその男の方にぶっ放した光景であった。


もくもくと土煙が立ち込め、咳払いの音がしばしば聞こえた。


あまりに大胆で、計画性のないその行動に花野アナは何も言えない。しかしすぐに頭の整理をつけて


「ちょっと!!須藤さん!?確かに違法はよくないですけど今の人…死んだんじゃ…」


「案ずることはない。『ギャグでなら』何しても死なぬ。」


真顔で平然と答えた。


「恋ちゃあぁん!?危ないよ!!街中でそんなもの使ったら!オッサン死んじゃうからね!?」


「やかましい。立ちションはご法度じゃ、まるでダメなおっさん略してマダオが。

公衆の面前で汚らしい(放送禁止用語)晒して恥ずかしゅうないのか。」


眉一本動かさずバズーカを傾けて吐き捨てた。


「おっさん長谷川(はせがわ)だから!!マダオじゃないからね!!」


爆風で吹き飛んだグラサンを掛け直して訂正する。


「放送禁止用語使ったことにツッコめよ!!・・・つーか知り合い?」


マイク越しの花野アナの声が市街に響き渡った。

















「真選組屯所に場所を移してお送りします。午後のご予定は?」


「昼食中に配られるスケジュールを見ない事には分からぬ。」


団体行動が大の苦手な恋歌にとっては、後ろからついてくるスタッフは鬱陶しいものでしかなかった。


蹴散らしたいのをこらえて、定食が置かれた盆を持ち上げ定位置へと歩を進めた。


箸を手に取った瞬間、花野が何か物騒なものを見るような目でこちらを見る。


「いたがした?花野殿。」


「あの・・・・須藤さん。お隣の人のソレ・・・何ですか・・・?」


その言葉でふっと横を見ると言うまでもなく定食メニュー全てが薄黄色一色であった。


「・・・・・・・・・・ナニソレ?」


「真選組B定土方スペシ・・・」


言い終わる前に盆ごと遥か彼方へ追いやった。


「今日はB定かぁ〜・・・・フゴア!!」


不憫にも山崎にそれが当たったことは誰も気付かない。


「昨晩山崎を通じて申したはずだよなぁ?『明日だけはその薄黄色の気持ち悪い物体食うな』って」


「薄黄色の気持ち悪い物体なんか他にもあんだろ。コレにはマヨネーズってちゃんと名前があんだよ。」


「大体前々から言おうとは思ってたがなァ…何でわざわざ人の隣に来て食す!?

隣でベチャベチャベチャベチャ・・・食欲が失せるんだよ!!出てけ!!」


「だったらテメーが出て行ったほうが得策だ。マヨの魅力が分からん奴に物を食う資格はねぇ!!」


「何その発言!もしや皆マヨ好きだと思ってる!?残念でしたー。マヨ好きはテメーただ一人じゃ!

皆、食後にお前の悪口めっちゃ言ってるから!」


カメラの前だということを忘れていがみ合う二人。終いには鞘から剣をすらりと抜き、


「表出ろボケ!!今日こそ粛清したらァ!!」


「上等じゃゴラァ!!今日こそブッ殺したらァ!!」


昼食には全く手をつけていないにも関わらず、殺し合いという名の喧嘩が始まった。



「どうやら『鬼の副長』と『神速の女王』の異名を持つ二人の副局長は犬猿の仲だったようです。」


この喧嘩騒ぎを他人事のようにまとめる他道はなかったのだった。


やっぱり神秘のベールは解かなければよかった。スタッフ一同午後の取材を残してそう思った。
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