銀魂〜出動!真選組!!〜

□派府意右無篇
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〜携帯のメールアドレスは覚えられるのに電話番号は覚えられないのは何故だろう?〜



『派府意右無(パフィウム)』という攘夷浪士の密偵から帰った山崎の報告を元に会議が行われていた。


「奴等は明後日にターミナルに爆弾を設置するとの事です。明日は前祝にかこつけて

キャバクラで豪遊します。敵を一網打尽にするチャンスは明日を置いて他にありません!」


山崎の言葉で場の雰囲気が凍りつく。


「じゃあ明日切り込みに行けばいいの?」


脚を入念に手入れする李麻が訊いた。


「いえ、外の見張りは店の者ではなく奴等が行います。人数も相当ですので正面突破は厳しいです。

おそらく総員でいっても核にたどり着くまでに相当戦力を削(そ)がれるかと・・・・」


「じゃあそんなチャンス見過ごせって言うのかよー!ターミナルで待ち構えんのかよー!!」



李麻のやるせない声色。全員が頭を抱えた。


「・・・この中の誰かがキャバ嬢にでもなれればいいんですけどねぇ。こうもムサイ男ばっかじゃ・・・」


ふと近藤の左隣を見た山崎の口が止まった。各体調も一斉に左隣の座席に座る恋歌を見上げる。


((((((((((女、いたじゃん。))))))))))


「副長オオオオオオ!!アンタよくぞ入隊してくれました!!」


山崎がガッと恋歌の右手を握る。


「いや。半年前からいるんですけど。つーか何じゃそなた等!先程からジロジロと・・・・」


「「「「副長!!」」」


ニ、三人ほどの隊長格の人間の言葉とともにその場にいた人間が一斉にひれ伏(ふ)する。


「「「「どうか、キャバ嬢になって奴等をいっちょおもんだってくだせぇ!!!」」」」


あまりに唐突なことで開いた口が塞がらない。


え?何でキャバ嬢?それってクビってこと?


恋歌の頭にはそれしかなかった。


「明日一日だけでいい!山崎のように店キャバ嬢になりすまして奴等を粛清してほしい!!


表の雑魚は俺達が何とかするから!」


近藤も必死に懇願する。クビじゃないのか。ひとまず安心した。


「それは私(わたくし)に密偵を致せと言うことでしょうか?」


「ああ!頼む!!」


キャバ嬢という職業に関して、あまりにも知識が無い故に不安を覚えつつ訊く。


いや、しかし。隊士達にここまでさせておいて、大将にまでこんなに頼まれて。


断れる奴がおるものか。腑に落ちなかったが首を縦に振った。


























「ありがとうございましたー。」


コンビニと店員の言葉を背に、肩を落として袋の中のジャンプを手に取った。



「まいったなー・・・まいったなー・・・キャバ嬢とかまいったなー・・・」


パラパラと頭に入ってこない漫画達に目を落としながら呟いた。暗みがかかってよく見えない。





油断すんなよ。





不意に土方にかけられた言葉を思い出した。


「言われずともせぬわ、そんなもの・・・・」


誰にともなく呟いた。それからその言葉を掻き消すように大きくため息をついた。


このため息は斬り合いに対する不安ではない。全く無いといえば嘘になるが。


これはどちらかというとキャバ嬢に成りすませるのかという不安の方が大きい。


「あら、恋ちゃんじゃない。お仕事帰りかしら?」


艶めかしい声が聞こえハッと振り返る。


「あ、妙殿。そなたは・・・?」


「私?私はこれから仕事よ。」



「かような遅くに?」


「ええ。キャバ嬢は夜が仕事ですもの。」


「そうでしたか・・・しかし、くれぐれも御身体は・・・・ってキャバ嬢!?」


ジャンプが恋歌の手から滑り落ちた。


























「なるほど。そういうことだったの。あ、そうだわ。店長!」


所変わってスナックすまいるの裏部屋。一通り事情を聞いたお妙が店長と思しき男に駆け寄った。


「それでね・・・・・その子を・・・・・で・・・・」


「でも・・・・が・・・・・・・・今日は・・・・・」


「大丈夫ですよ・・・・・私の・・・・・」


遠くで話しているせいで話の途切れ途切れで内容が聞こえない。


思い立ったらすぐ行動。それが恋歌のモットーだ。話をしている二人の元へ歩み寄った。


「あの・・・何の話を?」


「ホラ!店長!この子ですよ!顔も可愛いし。結構稼ぎますよ!」


「いや、無視しないで。というか稼ぐって?」


「ああ、そうだね。この子ならねぇ。」


「オイコラ待てやおっさん。話を勝手に進めるでないわ。」


「そうと決まればすぐに・・・恋ちゃんいらっしゃい。今日一日頑張りましょう。」


あまりに唐突なことで解せなかったが、今の一言で全て合点がいった。


(今日此処でキャバ嬢にされるのかアァ!!)


「や、でも・・・・」


「来てくれるわよね?」


圧倒的なオーラを前に、賢明な判断は一つしかなかった。


「・・・・・・・・・はい。」


















何十分経っただろう。全身が映る鏡を見てみれば大層な美人が映っていた。


「え?誰コレ。私(わたくし)?」


「そうよ。」


ニッコリ笑って言うお妙。


指先を鏡にそっと当てた。そこにはいつも刀を振るっていた野蛮な女の面影は無い。


腰まであった髪は団子状に書き上げられて蝶の形をした髪留めで留められている。


黒い女物の着物には、百合の花が描かれている。


周りの人間が歓声を上げなかったのはきっとその人形のような姿に見惚れていたから。


「じゃあ今日一日よろしく!じゃあ皆今日も頑張って!」


こうして夜の花道は幕を明けるのだった。
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