銀魂〜出動!真選組!!〜

□最終章
1ページ/16ページ







真選組屯所は今日も朝日を浴びて立派に江戸に建っていた。


しかし、何時もと違う事が一つ。そこに、見慣れない顔が一つ、門前で仁王立ちになっている。


朝から仕事を入れられていた李麻がいち早くそれに気付いた。


「あの〜・・・どちら様で?新聞ならウチは要らないよ。」


仁王立ちの、中年の隊士達と比較してもむさ苦しい男性に尋ねる。


「その姿…真選組隊士とお見受けする。」


「うん。お見受けするっつったって屯所から出てきたら100%真選組だしね。」


「我が名は須藤 歌ノ介。ここにおる須藤恋歌は我が娘である。」



数秒間の沈黙が流れた。





「誰かー!!屯所前に変なオッサンが!!」


「待たぬか!!今名乗ったよね!?身元も言ったよね!?つーか顔、クリソツじゃん!?」


「どの口が言ってんだよコソ泥が!!嘘つくならもーちょっとマシな嘘つけ!!」


李麻の言うとおり、その男の顔に、恋歌の面影は欠片もなかった。


「何故にここへ着てそのような嘘をつかねばならぬのじゃ!!通せ、通せー!!」


「通すかボケ!!つーか誰かあぁぁ!!」


「どうした李麻?」


寝起きの顔をした近藤と山崎、そして総悟が姿を現す。


「あ、こんどーさん!あのね、あのね!!

コイツふくちょーの父親とか訳分かんない嘘ついて屯所の金パクろうと・・・・」


それを聞いた近藤達は、その男の顔をなめ回すように観察した。


「コイツはストーカーだよ間違いない!!」


言うや否や近藤はその男の手首をガッシリと掴む。


「ザキ!手錠もってこい!ストーカーが言うんだから間違いないよ!」


「了解です!!」


「そんな事しなくても今ここで消せばいいじゃないですかィ。」


総悟がバズーカーを担いでそう言った。その時、何かがポロリと落ちた。


「あれ?沖田さんなんか落ちたよ?・・・ってマヨじゃん。」


「ああ、それは朝飯に土方さんをこr・・・」


「ッキャーーーーーーーーーーーー!!!!」


その説明が終わらないうちに男は発狂して近藤の手から逃れようと身悶えをしだした。


「これは・・・もしや!」


すぐさま李麻は、あの赤いキャップを手に取りニ、三度回して取り外した。


そしてその男の手首に一滴だけかける。その刹那、男の肌は赤い吹き出物が覆った。


「間違いない。あの人のお父さんだよ。」


「え?何で?」


「こんなんで吹き出物出る一族なんて他にいないもの。」


*********************************************************************



「「「どうも、すいませんでした。」」」


改めて屯所に招きいれ三人一斉に深々と頭を下げた。


「分かれば良い。あまりのクリソツ加減にそなた等も見落としたのであろう。


そして改めて名乗ろう。我が名は須藤 歌ノ介(すどう うたのすけ)」


「それはないけどね。」


先程の態度とは一変、煎餅をかじりながら李麻は言葉で投げ捨てた。


「このクソガキッ!!…まぁそれは良いとして近藤殿。我が娘は。」


「ああ、今寝ておる所でしょうから起こしてきましょうか。」


近藤が少し重そうに腰を上げた時、勢いよく扉が開け放たれる。


歌の介が最愛の娘を見紛う筈がなかった。


「れ…恋ちゅわアァァァ…」


飛び掛ったその顔面に白く小さめの拳がめり込んだのはそれからすぐの話。


「屯所に来るならアポはしておけと言うただろうが!!このボケ親父!!」


「なっ!貴様ァ!感動の再会だというのに何じゃその冷たさは!!」


「ちょっと感動したけど先の挨拶ですっ飛んだわ!!」


ギャアギャア!!屯所の喧騒に昼夜はない。それが来訪中であっても。




落ち着いた歌ノ介は小包から立派な本…卒業証章でも入っていそうな冊子を取り出す。


それが山をなして机に置かれた。


「手紙でも言うた通りじゃ。ちぃと自慢話をしたら見合いの話が山のように・・・・」


「断る。」


冊子を一枚も見る事無く断った。


「まだ見てもないのに何故そう頑なに断る!!」





心に決めた男性(ヒト)がおるのじゃ!!





とは口が裂けても言えなかった。第一言ったところで反対されるに決まっている。


「・・・・・私より弱い男は嫌いじゃ。あとメガネ。」


「おま…自惚れるでないぞ!世の中そなたより強い者もまた山のように…」


「たとえ客観的に見て私より強い男であっても。」


くよくよと食い下がる父親を圧のある声色で製して続けた。


「私がそうと認めなければそやつは私より弱い。」


「全く、誰に似たのじゃそなたは。そなたの母はもっと物分りが良かったぞ。」


「ほー、貴様が言うかそれを。」


親子の間で静かに火花が散ってゆく。


「まぁまぁやめねーか恋歌。こうして親父さんが遠路遥々来てくださったんだ。」


「局長・・・・」


仕方なく引き下がった。


「・・・・・とにかく見合いなどせんからな。片っ端から断っておけ!」


それだけ言うと木刀を担いでさっさと出て行ってしまった。


「あ!おい!恋歌ァ!?」


近藤が呼び止めようともそれは無駄だった。


「・・・・・申し訳ありませぬ近藤殿。」


「はい?」


急に改まった態度に近藤は当惑する。


「あやつの母はあやつを産んですぐ他界して、それからはワシが男で一つに育てた。

成長するたびにあやつは母と同じ顔に育って来てのぅ・・・・

それほど親らしい事をしてやった覚えはない。護身程度に一度剣術を教えただけじゃ。

…孤独の中であやつは我が背中を見つめ続けてしまったが故にあのような性分に…」


しみじみと話すその姿に近藤はフフッと笑い


「アイツはよくやってくれてますよ。野郎共には出来ないような大胆かつ繊細に。

あいつ等は、口に出さないだけでアイツの事気に入ってます。」


それを聞いた歌ノ介の顔は心底安堵した顔だった。


とはいえ最初は恋歌の入隊に反対した者も多かったなぁ…近藤は目を細めて懐かしんだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ