銀魂〜出動!真選組!!〜

□恋歌篇
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「・・・・・・・そこで熱心に何を見ておる。」


怪しい人影がビクッとなるのを確認しながら声をかける。


「いや、あの、お嬢ちゃん!?違う、違うよ!?ストーカーとかじゃないから!!」


怪しい人影は電柱にしがみつきながら必死に弁解しようとする。


「ストーカーかと問うた覚えはないのだが・・・墓穴を掘ったのぅ。」


ドカッ!!電柱を力の限り蹴り、ストーカーを地に落とす。


逃げる隙も与えずに着物の襟元を掴み、引きずる。


「あだだだだだだ!!お嬢ちゃん!?どこ行くの!?」


「奉行所に決まっておろう。」


必死に抵抗するストーカーをものともせずに、ズルズル、ズルズル重い足取りで先に進んだ。































「え!?こやつが警察だと!?」


奉行所。予想外の展開に、声を裏返して床で指を弾く。


「わざわざすまなかったね。この人は『真選組』の局長、近藤勲さんだ。」


世も末だ。恋歌は頭が痛くなったのを感じた。しかも組織の頭ときたら溜息も出る。


「ほら〜!!だから言ったでしょっ!?しょっ引いても無駄だっ・・・・・・」


近藤は言葉を詰めた。目の前にはまごうことなき己のの刀が自分に矛を向けていたからだ。


この娘・・・・・いつの間に俺の剣を・・・・・顔色を変えることなく冷静に考えた。


「調子に乗るな。警察ならストーカー行為してよいと法で決まっておるのか?」


完全に見下されているな。目の前の少女を見下ろしてそう思った。


「まぁまぁ!大目に見てくれよ!それより君は侍希望なのか?すごいな〜女の子が珍しい・・・・」


女の子なのに・・・・・刀を持つたびに言われた言葉。耳にタコが出来る。


「そなたも女子が剣を持ってはならぬと言うのか。」


「いや、誰もダメだなんて言ってないぞ。ただ人の刀を使うのはいただけない。」


「自分のものがあったらとうに腰に差しておるわ。」


何故かは分からない。分からなかったが、恋歌は近藤に全て話した。



















「なるほどそんなことが!」


一通り話を聞いた近藤は真厚そうな顔つき。しかしその顔からは同情の影はなかった。


「そなたの気持ちは大変ありがたいが、女子の私に刀を振らせてくれる場所なぞもうないのじゃ。」


背中でぼっそり呟き、奉行所をさっさと出ようとしたとき、後ろから声がした。


「あるぞ。刀が振れる場所。」


その言葉にばっと近藤の方を振り返る。


「俺達と一緒に仕事すればいい。・・・・つまり真選組に入ればいい。」


真選組・・・・噂によると男しかいない組織。まぁそれは別に全くどうでもいいのだが。


霧が晴れたような、すがすがしい気持ちが恋歌の心を支配する。


そこでなら刀を持っても咎める人間は存在しない。


そこでなら堂々と刀を腰にさせる。


そこでなら




                    自分が自分でいられる。



まずは両親を説き伏せなければ。近藤にきっとなってみせる。とだけ言ってさっさと家路に着いた。






























須藤家。そこは由緒正しき武家の一家。廃刀令のこのご時世でもいまだ武士が、侍がいる一家。


大きな門が、自分を向かい入れてくれるように威厳を持って開く。


そこからは電灯が漏れる。そこから一人の人間の姿が現れる。


威厳のある家にふさわしく、威厳を持った誇らしげな顔。


何でも吸い込むような目は父親譲りらしい。


「お主一体どこにおったのだ!!パパ心配しちゃうでしょ!!」


威厳のある顔とは打って変わって、ただの過保護な親だったようだ。


「父上。話がある。お時間頂けませぬか。」


父はいぶかしげな顔をしながらも、自分の部屋へと誘導した。




























「何ィ!?真選組に・・・・・・幕府の狗になると申すか!!」


「さっきからそう申しておろう!!」


「認めませぇーン!!可愛い一人娘をあんな男の巣窟に預けるなんて出来ませーん!!」


「いい加減子ども扱いに女扱いはやめろこのクソ親父!!」


「親父であってもクソではない!!立派な親父だ!!」


歯をきしめながらいがみ合う親子。それは望月が沈むまで続いた。


「いい加減にせぬかお主・・・・・・何度頼まれても・・・・・呑まんぞオイ・・・・」


「いい加減にせよ父上・・・・・・何度はじかれても・・・・絶対折れんぞコラ・・・・」


見ているこちらが眠くなるような目の下の隈。


以外にもあっさり折れたのは父親の方だった。


「・・・・・・もうよい、分かった。そこまで言うなら・・・・・・・・」


頭を掻き毟りながらぼやく。その時、我が子の顔が明るくなるのを父は見逃さなかった。


「ただし!!一つだけ条件がある!!その条件とは・・・・・・・・」


しばらく続く沈黙に、ツバを飲み込む音が一度だけ聞こえた。


「愛してるダディー(投げキッス)を10回唱えれば認めてやろう!!」


それを聞いた瞬間肩がずり落ちそうになった。一晩中口論し続けた結果こんなもので折れるとは・・・


我が父親ながら不憫に思えた。






















真選組屯所前。すっぱくなった口を尖らせて、門を仰ぐ。


腰にはあんなに反対していた父親が、須藤家代々に伝わるという名刀を差してくれた。


鼓動を高鳴らせながら、いよいよその血に足を踏み入れる。


「フンッ!!フンッ!!」


入るや否や、バトミントンのラケットを、振り回している隊員と思える人間が視界をを支配する。


一瞬場所を間違えたのかという錯覚さえ覚えた。


「あの〜・・・・すいません。」


「フンッ!!フンッ!!」


不安げにかけた声は一瞬でかき消される。


「すいま・・・・・」


「ハイヤー!!ホイヤー!!」


隊員は佳境に入ったのかより一層声高らかに素振りをしだした。


ガキン!!


次の瞬間、名刀が隊員の首元にピッタリあてがわれていた。


「あの、すいません。近藤勲殿の居所はご存知でございましょうか?」


「お嬢さん!?言葉遣いと行動が矛盾してるよ!?これ以上深くこられたら・・・・・・」


「いえ、素振りに夢中だったようでこちらに注意をひきつけようと・・・・・・・」


「だったらもうちょっと穏便にひきつけてください!!お願いだから!!」


一向に話の主要をいわずにどうでもいいことをウダウダ突っ込む男にうんざりきてしまった。


「だから近藤勲殿の居所をご存知でござりましょうか?」


刃を直角にして、再度たずねる。


「・・・・・・・部屋です。真っ直ぐ行って二つ目の部屋を右。」


「ありがとうございました。」


刀を鞘に収め、案内された方へと赴いた。
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