銀魂〜出動!真選組!!〜

□李麻篇
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たたずんでいるだけの三人をよそに陣野と思しき人間の影はどんどん小さくなってゆく。


(アレで変装してるつもりなのか奴は!完全に注目の的になってんじゃねぇか!!)


(まさか波平の頭のてっぺんにあるアレまでつけておったとは・・・・・)


(Tシャツの柄がド〇ゴンボールでしたぜ!)


(お前等はどんだけ気付きにくいとこ見てんだよ!!もっと他に突っ込むところあんだろ!!)


互いの目と目だけで会話していく間にも影は消えかかる。


「副長〜!!隊長〜!!」


振り返ればパトカーに乗った山崎が運転席から顔を出して声を上げる。


山崎を見つめ、恋歌と土方の歯が軋む。


刹那に、山崎の目前には今にも暴れ狂いそうな、二つの影が現れた。




しまった、やってしまった。運転手の顔は見る見る青ざめる。


「「まとめて呼ぶんでんじゃねー!!」」


そんな声と共に山崎の顔面には、人二人の足が覆い被された。






















「・・・・・なるほど。ホシの住処がつかめたと申すか。」


パトカーの中。報告を聞いたあと、ボロボロになった山崎に聞き返す。


「はい・・・間違い・・・・ありません・・・・」


おぼつかない意識の中、ほんの僅かな力でアクセルを踏む。


と言うより足を置いているだけのようだ。


「おい、ジミー。もっとスピード出せぃ!」


「ジミー!?ナニソレ!!それはもしかして地味から来てます!?」


「どうした?右足腫れてんぞジミー。」


「と言うか全体的にボロボロではないか。陣野一派にやられたのか?ジミー。」


「ジミーって言うなぁ!!つーか右足の腫れもボロボロなのもお前等のせいだろ!!」


張本人達に何も知らないような顔で言われるとつい尊敬の意を忘れてしまうものだ。


当然、刃を向けて「殺すぞ」と言うような目を向けられれば話は別だが。





















「ただいま〜!!」


その頃、李麻は誰もいない家に着いたところだった。


「・・・・・おい、ハゲー!!ただいま〜!!」


・・・・何も返らない。返ってくるのは李麻が出す声による反響だけ。


異常な静けさの中に、何か邪悪な気配を感じる。


買い物か?いや、違う。あのバカ親父は休みの日は家から一歩も出ない。


そういえば帰りがけにパトカーが走ってたような・・・・・・


不測の事態を前によからぬことばかりを考えてしまう。


間違いであって欲しい。


そう思いながらも李麻の足は自然とパトカーが走っていた方へと向かった。






















キキッ!!


ブレーキ音と共に、中に入っていた者達の目の色が変わる。


猛者。彼等の背中には猛者の気配が感じ取れるようにも思える。


車窓からは永遠と続く海が見え、彼等の真正面にはさび付いた倉庫がそびえ立つ。


彼等が降り立った時、そこには既に何十台ものパトカーが停まっていた。


彼等が待つのは、土方のただ一つの言葉と、ただ一つの合図。


そう、沈み行く夕日の空に、天高く右手を挙げ、


「突撃!!」


ただそれだけの言葉。その言葉を聞いていたかのように無数の侍が倉庫から現れる。


漆黒の制服を身にまとった隊士と、薄ら汚れた着物を着た浪士の姿と剣が入り乱れる。


まだ出ていない者は、最後の確認を手短に済ませようと急ぐ。


そこには、山崎の運転するパトカーに乗っていた三人がいた。


「土方さぁーん。さっさと行きやしょうぜ。このペースじゃ朝が来ちまいやす。」


「分かってる」土方の眼がそう訴えていた。そして、その眼を恋歌に向け


「剣でやり合うのは初めてか?チンピラ相手とは訳が違う。気ィ抜いて死・・・・・・」


その時には恋歌はもういない。


目だけで探していると土方と総悟の服に若干の返り血が飛び乗る。


すぐ前方を見れば、胸から腹を一太刀で斬られた浪士がニ、三人。


そして天を舞っていたのか、反逆者の血を吸った刀を持った恋歌が地に足をつける。


刀を持った手をガタガタ震わせながらも、足早に奥へと進む。


「・・・・・・・要らぬ心配だったみたいでさぁ。」


「そのようだ。」


短くやりとりをし、鞘からスラリと剣を抜いた。
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