銀魂〜出動!真選組!!〜

□鬼兵隊篇
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そんなやり取りを知る由(よし)もない屯所の隊士達は資料の見直しに駆られていた。



「…こいつの顔、どっかで見たと思ったら『佐倉 常春(さくら つねはる)』じゃねぇですかィ」


今回の事件の被害者の写真を手に取った総悟がそう言った。


「佐倉というと…あの剣豪のか?」


佐倉常春とはそこそこ名のある過激派攘夷浪士の一派の頭で、その腕は鬼の如しと言われている。


真選組も事あるごとにお縄を頂戴しようと躍起(やっき)になったが、いずれも失敗に終わっている。


恋歌は、ニュースや資料でしか見た事がないので手合わせが叶わぬ夢となった事に落胆した。


入隊してから何度手合わせして圧勝する自分の姿を想像をしたことか。


「…須藤さんは犯人についてどう思いやすか?」


写真を目の前に広げられながら訊かれて、現実世界に引き戻された。


「それ程の腕前の持ち主が鞘から刀を抜く前、断末魔も上げさせる事もなく死んだとなると…

…神速使い以外考えられんな。それも相当腕の立つ…な。」


「なるほど。同属だからこそ分かるってわけですかぃ。」


自慢ではないが、首を少し前に傾けた。


「鬼兵隊(きゃつら)も我等が動く事を想定の範囲内で事を起こし始めておる。

暗に『我等が散々梃子摺(てこず)った相手を安易に殺せた』と抜かしておるわ。」


そういい残して資料室の去りかけた恋歌の足は、総悟の声に止められた。


「・・・この期に及んでサボりはやめてくだせぇよ。」


「誰がサボるか!!呼び出されたんじゃあの土方(クソ)に!!」


噴火したのかと錯覚させるくらいの音で資料室のドアは閉められた。






















屯所、学習室。ドアの向こうでは苦悶の声が広がっていた。


「鬼兵隊隊長の名前。」


「高・・・・林?いや、山?丘?確か森林的な感じだったと思うが・・・・・」


「『紅い弾丸』と恐れられる拳銃使い。」


「コレは覚えたぞ。行島しみ子じゃ。」


「鬼兵隊の参謀は?」


「あはっ♪頭文字も出てこな〜い」


というやり取りがもう何十分続いていることか。見張っている隊士は頭を痛めた。


遂には土方(教えている側)も資料を机にたたきつけて


「全っ部違う!!自信満々で言ったのも含めて違う!!何で覚えられねーンだ!?」


と怒鳴る始末。


「いや、一目見たら覚えられるから。一度面見たら覚えられるから。」


小筆を机でバウンドさせてぼそりと言った。


「覚えたところで生きて帰れる保障ねぇからな!?ヘタすりゃ今生の別れだぞオイ!」


「ヘタには会わぬわ!上手く会う!資料持ってきゃ万事OKじゃ!!」


「ヘタってそのヘタじゃねーよ!!遠足にでも行く気かテメーは全く…」


見張りにまで危機を傾けなくともハッキリ聞こえる声に隊士はその場を離れた。

















「…という訳でっす。まー心配ないだろーけど旦那もチャイナも気を付けてね!」


所変わって、市民警告の名のもと万事屋(よろずや)に李麻が来ていた。


「あの・・・・・聞き漏らしかもしれませんけど・・・・僕は?」


「ああ、言ってないよ。別にどうでもいいし?むしろ気を付けるな。」


「何で僕には毒舌!?僕が何かしましたか!?何か悪い事・・・・」


ピリリリリ・・・新八のツッコミが言い終わることなく李麻のポケットから着信音が鳴る。


「ああ、ちょっと失礼。」


通話ボタンを押して、携帯を耳に当てる。


「ああ、もしもし〜僕だよ僕!…え?犯人の出没ポイント割り出せた?あんがとさん!

で、現場にはふくちょーが?…うん、うん。りょーかい。じゃーねっ!」


「僕」という一人称さえなければ女子高生のような受け答えをしてから電話を切った。


「ああ、あのね…」


「いや。今の聞いて大体分かったからもういいです。」


「まぁ市民の税金ふんだくった分まで働いてくれや。

っていうか作者。シーン切り替わって俺の台詞まで一体何行使った?」


あの、話進まなくなるんで作者に絡むのやめてもらっていっすか?あとサイン下さ…


「何さり気に自分の野望暴露してんだぁ!?話の展開はどーしたアァ!怒るよマジで!!」


「旦那。そんな奴構ってたらマジで話し進まなくなっから。…じゃあ僕もう仕事戻るね?」


そう言って出されたお茶を一気飲みにして席を立った。


「あ、そうそう。こっちだけでどうにもなんなくなったら巻き込むからそこんとこヨロシコ。」



と言って、玄関のドアを閉めた。



この事件が江戸の危機を脅かす自体にまで発展するとも気付かずに。
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