銀魂〜出動!真選組!!〜
□派府意右無篇
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女に飢えた男達に恋心を抱かせ、癒しを与える。恋煩いに貧富の差は関係ない。
それが少ない知識を走馬灯のように駆け巡らせてまとめた恋歌のキャバ嬢の姿。
しかし実際、目の前に広がるキャバ嬢の世界はどうだろう。
高い酒を無理矢理頼ませ、金を搾り取る。痴漢行為をしようものなら殴る蹴るの暴行を加える。
控え室の影で、揺れる茶髪のポニーテールを見学していた恋歌は、目を見開いていた。
(・・・こ、このように接客すれば良かったのか…知らなかった。)
「恋ちゃん!?見学する人間違ってる、間違ってるよ!
何で寄りによって一番学んじゃいけない人から何かを学ぼうとしtグハァ!!」
突っ込んでいた店主の顔にはドンペリの瓶がめり込まれていた。
「店長ー!!店長が殉職したぞオオォ!!」
慌てふためくボーイ。来客の指名を待つキャバ嬢達もそれに群がる。
「キャバクラで働く事にあたって殉職がある危険な職だったとは・・・知らなかった。」
携帯していたメモ用紙とペンを取り出し書き留めだした時、
「恋ちゃん!ご氏名入りました。妙ちゃんと入ってね!」
戦いのコングが鳴った。
着慣れない女物の着物に苦戦しながら、指定されたテーブルに歩を進めた。
テーブル先には客の男二人と、妙がすでにいて談笑をしていたようだった。
「おはt…初めまして。ご指名感謝いたs…します!…レンです!以後おみs…ゲフンゲフン!」
なれないつくり笑顔に顔の筋肉をヒクつかせながらも自己紹介。
(普段:「お初にお目にかかります。ご指名感謝致します。須藤恋歌じゃ。以後お見知りおきを」)
時々素の口調で話してしまいそうになり、慌てる。
「あ、どーも、どーも。坂田でーす。」
「長谷川です。」
落ち着いて見てみると、目の前にいた客とは何を隠そう銀時と長谷川(マダオ)だった。
(どっちも顔見知りじゃねぇか!!)
「さあさあ、レンちゃん。こっちに座って。」
妙は自分の隣をポンポン叩く。順にしたがって座った。
座ってからというもの、冷や汗で顔が青くなり、眉が絶えずヒクヒク動く。
(何故にこのマダオ二人組が客!?帰れよ!大した金銭持ち合わせておらぬくせに!
・・・不味い。こやつ等特に銀さんなんぞに弱味を握られたら何をされるか分からぬ。
それに隊には秘密にしてあるし、第一…何じゃ、その、アレ…恥かしい。
もちつけ…じゃなかった落ち着け私(わたくし)!今は「レン」であって「恋歌」ではない。
「恋歌」なら絶対にせぬ態度で接すれば多分案ずることは無い!)
「へーぇ、此処もようやく接客方針変えたってわけだな。イイ子が入ってきたじゃねぇか。
でもどっかで見たような・・・」
「そんな・・・気のせいじ・・・ですぅ♪」
危うかったが、少々声を甘ったるく調整して誤解を解いた。それから彼はそれ以上何も言わない。
「俺、これから金が入ったら絶対毎回ここ来るよ!」
二度と来るな。恋歌は心の中で毒づいた。
「嫌だわ、銀さん、長谷川さん。それじゃあまるで私達の接客方針が間違えてるみたいじゃない。」
にこやかな表情で持っていたのは殺傷力の高い瓶(ボトル)であった。
「お妙ちゃん!坂田さんとマダ…長谷川さん死んじゃうわ!!」
やっと定着してきた言葉遣いで止めに入る。客(金づる)がいなくなっては元も子もない。
「お嬢さん!?俺の事今マダオって言い掛けなかった!?もしかしてオッサンの知り合い!?」
「オメーなんかと知り合いなわきゃねーだろ無職が!!」
言った途端に見る見る彼女の顔が青白くなっていった。
「オイイィィ!!もうそれある程度長谷川さんの事知ってるだろソレ!!自白したよ!!
やっぱりお嬢さんどっかで見たよ俺。思い出せ、思い出すんだ俺。」
(ヤベエエエエエ!!何じゃ!?何思い出そうとしておるのじゃ!!
お願い止めて?300円くれてやるから!)
「あ!もしかしてお前、れn…」
万事休すか。そんな思想が頭をかすめた時、妙の声がした。
「銀さん。この子は人間によく似た天人(あまんと)なのよ。知ってるわけないじゃない。」
「え?あ、そなの?じゃあ他人の空似か。」
「そうだよ銀さん。この子が、街中にバズーカぶっ放す様な野蛮な娘に見えるか?」
長谷川の言葉にピクリと眉が上がる。
(こやつ…完全に5話前の事を引きずっておる。明日密偵に行く前にしょっ引こう。)
何とか切り抜けて少し安心していた時に、ドアに着いていた鈴が鳴る。
「いらっしゃいませ。」
新たな客か。グラスの中に氷を積みながら横目で確認した。
「わぁ〜!可愛い!女の子みたいねぇ〜。」
「ありがと〜!お姉さんっ♪」
聞き慣れた声が聞こえてふと入り口付近へ目をやって見開く。
「ここが『キャバクラ』ってトコ?土方さん!」
「何で俺が・・・・つーか李麻、お前未成年だろが」
「だって未成年の入店って保護者同伴じゃなきゃダメなんでしょ?とっつぁんが言ってたもん!」
「そーいう問題じゃねぇよ!!にしたって何で俺なんだよ!!」
(ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…)
心の中で雄たけびをあげた。