銀魂〜出動!真選組!!〜

□最終章
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それはまだ少年が入隊する前の話だった。


「なぁ。新しく入ったのって…」


「ああ。アレだろ?女王様気取りのクソガキ。」


「真選組にそんなか弱い女が入るって…あーあー!世も末だなー!!」


ささやき話をしていた隊士の一人が急に大声を張り上げた。


それは遇先そこを通りがかった恋歌の鼓膜を震わせて、恋歌に届く。


ジロリ。深緑のその目で睨まれただけでその隊士は一瞬たじろいだ。


「・・・・あ、違うんですコレは・・・・」


「・・・・・何が違う?私には本音を言うておったように聞こえたが。」


言葉を切って、さらに続けた。


「真選組は強さを求められると聞いておる。そこに女も男も大人も子供も関係なかろう。

つまらぬ事で人を見くびるな。痛い目を見るのはそなた等の方ぞ。」


そう言ってきびすを返そうとした時だった。


不意に木刀が恋歌をめがけて槍のように飛んで来る。首を傾けて避けた。


「女風情がいい気になりやがって…そこまで言うならあんたの実力見せてみろよ!!」


投げつけて来た隊士の一人が罵倒する。それをキッと睨んで


「良かろう。ならそなた等と同じ考えを持つ者呼んで庭に来い。全員じゃ!」











「まったく恋歌の奴、何処に行ったんだか・・・・」


庭近くの縁側を偶然通りかった近藤は庭が異様な光景で包まれている事に気がついた。


そこには自分が探していた少女と少女を囲む大勢の隊士がいた。


近藤は静かに見守る。


「コレで全員か?」


「俺の知る限りではな。怖じ気ついたか?」


ヒヒヒ…不気味な低い笑い声。恋歌は眉一本動かす事無く四方八方を見渡した。


そして木刀を手に取り、構える。


「…私の実力見たくば、一瞬も瞬きをするなよ。」


足を少し後方にもって行く。飛び掛る準備をしているらしい。


「はっ!俺達を見くびんのも大概にしろよ!・・・・やっちまえ!!」


隊士はそういいかけたが、言えずじまいに終わった。背後の隊士達が土に伏しているのを見て。


バカな!!その隊士はたじろいだ。油断していたとはいえ瞬きはしていなかった。


なのに見えなかったなんて。自然と額から、冷や汗が垂れ落ちる。


そう考えている間にも、集まった隊士達は次々に倒れていく。


しかし隊士達は自分の経験値に感謝した。目が慣れていったのか少しずつ残像が見える。


半数が倒れた所で、ようやく姿が見えるようになった。


「・・・・・はああああああああああああああああ!!」


木刀を振り上げ、斬りかかりに行く。それを宙を舞ってひらりとかわした。


外したか。舌打ちした瞬間、懐に栗色の髪が揺れているのが目に映った。


鳩尾に激痛が走る。


「ぐはあ!!」


苦しそうな声をあげて、隊士は池に落ちた。桁違いだ。何もかもが。そう悟りながら。


全員を倒した頃、恋歌は上着のポケットから何か箱をいくつか取り出した。


床に投げ捨てるようにそれを置く。


その箱が絆創膏だと分かるのに時間は必要なかった。


「・・・・・それで足りるか?」


そう言いながら池から隊士を引っ張り出し、地面に座らせた。


無事を確認するとタオルで汗を拭きながら玄関の方向へと歩を進めていったのだ。







「ツンデレかよ。」


冷めた口調で昔話の感想を述べた李麻。近藤は机を強く叩き付けて


「なー!?お前せっかく人が話した感動秘話をたった一言でー!?」


と一喝。聞こえない。と言うように何の反応もしない。


「まぁ何もお構いは出来ないのですがどうぞごゆっくり。

もし泊まられるのなら空き部屋を・・・・」


「何を言う。ワシは恋歌の部屋で恋歌と寝るぞ。」


近藤の言葉をこの一言でピシャリと妨げた歌ノ介。


「アンタ何言ってんのー!?ソレ犯罪だから!!親子つったってソレは犯罪だから!!」


「こんどーさん!アイツ聞いてないよ!?是が非でもあの人の部屋で寝る気だよ!!」


抱えた荷物を持って恋歌の部屋がある方向へ向かおうとする歌ノ介。


「朝っぱらから何してんだよテメー等。」


突然現れた土方により喧騒は一旦止まる。吐いた煙草の煙が天へ昇る。


「トシ!!いい所に!!このロリコン変態野郎を止めてくれ!!」


「・・・はぁ?何言ってんだ近藤さん。恋歌の父親なんだろ?別にいいんじゃねぇのか?」


すでに何者かが触れ回っているらしい。事情を知っていて近藤は少しホッとした。


「何言ってんだトシィ!想像してみろトシィ!

年齢制限ないこの小説でそんな事になったらどんな事になるか考えろトシィ!

連載打ち切り確実だぞトシィ!せっかく僕の出番が増えてきたトコなのにトシィ!」


「お前がトシとか言うな!!あと何さり気に裏事情話してんだテメーはよ!」


「トシという事はそなたが土方十四朗殿でトシか?」


歌ノ介がわざとらしい口調で言う。


「おいいぃ!何か口癖みたいになってんじゃねぇか!親子揃って腹立つな!!」


「一緒にするでないわっ!!」


帰ってきた恋歌が土方の後頭部を木刀の柄で突いた。


「一緒にしてねぇよ。ただ事実を言ったまでだ。」


「どこが事実じゃ。私がそこのバカ親父に似ている所があるとでも!?」


「中身全部だ!」


「んだとォ!?表出ろ!今日こそ…」


と喧騒する二人。真選組ではもはや名物と言えるほど珍しい事ではない。


「あーあー、また始まっちゃったよ。犬猿コンビのケンカが。僕止めてくるね。」


「待て李麻!俺も行く。」


止めに入った二人の背中を追いながら、歌ノ介は思う。


(恋歌、お主あの男の事を・・・・)


娘の心境を読み取った父親は、また部屋に戻り冷めてしまった湯のみの茶をすすった。
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