IS〜インフィニット・ストラトス《蒼き月の輝き》

□プロローグ・海斗
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「これは……何?」

少年は自分の首に下げられているネックレスを見ながらそう言った。
ダイヤを模したネックレス、子供の手でも収まるサイズのそれは夕焼けと相まって神秘的な輝きを放っている。
目を輝かせながらそれを眺めている少年は思い出したように顔を上げた。

「綺麗だね!」
「ふふっ、どういたしまして」

少年の満面の笑みに少女も満面の笑みで返した。
鮮やかなオレンジ色の髪をした少女。
純白と表現した方が正しい白い肌。
少し吊り上った紅い瞳が彼女に妖艶な雰囲気を更に引き立てている。

「そのネックレス上げる」
「え、いいの!?」
「うん。私は貴方に持っててほしいから」

幼い容姿とは逆に落ち着いた話し方をする少女は、ネックレス大事そうに握っている少年の手を握ると、それを自分の胸に当てた。

「これは貴方と私がずっと一緒にいるための物。今までそうだったように、これからもずっと一緒にいるための……」

心臓の音が手のひらを通して少年に伝わる。若干、速く脈打つ鼓動から彼女が緊張しているのが分かった。
彼女の心臓の鼓動が徐々に速くなるにつれて、彼女の顔が赤く染まっていく。そんな少女を見ていた少年は、普段の彼女と違う彼女におもわず失笑してしまった。
いつもの強気な態度とは真逆の態度があまりにも可愛くて、愛おしいくて思わず笑みがこぼれた。

「な、何で笑うのぉ〜!」
「ごめんごめん。君が可愛いから、つい……」
「か、かわいい!?」

更に顔を真っ赤にした少女は顔を隠すように俯いた。
恐らく、今自分は茹蛸のように顔を赤くしていることだろう。それを彼に見られたくなかった。そんな自分を見ても彼は普段となに変わりなく接してくれるだろう。
だが、今は俯いていたかった。穴があったら入りたいとはまさにこのことだろう。

「だ、大丈夫……?」
「ふえっ?」

少女の視界に突然、見慣れた少年の顔が映し出された。空色に近い青い髪と黒い瞳、綺麗に整った顔立ちの少年。
そんな少年がこちらを心配そうに覗き込んでいる。
だが、問題なのはそこではない。

「な、ななななななっ……」
「どうしたの?」

いきなり挙動不審になった少女を不思議な目で見ている少年。その少年の顔と少女の顔の距離、約二十センチ。
少年が呼吸をするたびに生ぬるい風が頬を撫でる。あと少しでキスしてしまいそうな、距離。
顔が熱くなっていくのが分かる。心臓の鼓動がはち切れそうなほど速く、胸の中で響く。

「あわあわわあわあわぅ……あぁあああああああ!」

「え、ちょっとどこ行くの!」

突然逃げ出した少女を追いかけるように少年も走り出した。悲鳴にも近い声を発しながら町中を二人は走り抜けていった。
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