IS〜インフィニット・ストラトス《蒼き月の輝き》

□文芸部
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 勢いよく家を飛び出した俺はいつものように学校へと向かっていた。俺の通っている学校は私立藍越学園という敷地がやけに広く、迷路のようになってるところ以外普通の学校だ。藍越学園は就職率がここ近辺の学校では一番よく、なおかつ就職できる場所もなかなかいいと評判だ。俺もいつまでも姉貴と結城家の仕送りに頼っているわけにもいけないからな。
 まだ、登校するには早い時間だからだろうか人は疎らだ。いつもは何かしらの音が聞こえてるから少しだけ違和感を覚える。でも静かなのは俺は好きだ。というよりはこっちの方が好きだ。いつもはうるさい『あれ』がいる所為か今日はなんだかいい日に思える。あー、いい日だ。
 と、そこまで考えて足が止まる。何かがおかしい。何か大事な物を忘れている気がする。未だ完全には起きてない頭をフル回転させ、思考を巡らせる。もうすぐそこまで出てきているのに出てこないこのもどかしさは一体なんだろうか。一人道路のど真ん中で立ち止まりうーんと唸りながら考え込む姿は傍から見ればかなり痛い人だろうが、今の俺にそんなこと気にする余裕はなかった。
 
 ふと、思考を放棄した俺が顔を上げると、先ほどまで疎らだったはずの道は学生やスーツ姿の大人達で少しだけ賑やかになっていた。どうやらかなりの時間考え込んでいたみたいだ。俺的にはさほど時間をかけているつもりはなかったんだが……。

「って、そんなことより学校学校!」
 
せっかく早めに家を出てきたのに遅刻したら意味がない。携帯を取り出し今の時刻を確認すると、先程確認した時刻より少しだけ進んで七時十分と表示されていた。俺の家から学園はそこそこ距離がある。そのため俺は登校する時はいつもバスを利用するのだが、その俺が乗る予定のバスが出発する時刻は七時十五分。
 つまりは後五分でバスが出てしまうのだ。これはまずい、非常にまずい。
 俺の通っている藍越学園は色んな校則が緩々だ。緩々と言っても普通の公立高校と比べたらという意味で、何も学校に来なくてもいいなどというものではない。当たり前だ。例えば、ネックレスなどのアクセサリー類を身に着けて授業を受けても指導はない。授業中に音楽を聴いてもよい(ただしイヤホンをつけること)等と逆にそれは駄目だろうと思うことまで許可している。ここまで聞くとただの馬鹿な学校のように聞こえるが、それは飽くまでも校則の話だ。そこまで校則が緩々なのになぜあそこまで就職率が良いのか。その秘密はあの学校のシステムにある。授業を受ける生徒は別に聞かなくてもいいが、その代わりに期末の試験で一つでも赤点取ってしまうと夏休み返上で学校に補習を受けに行かなけれならない、ちなみに補習は夏休みの期間ずっと続くらしい。地獄だ。そして何より先生達もおかしな人たちが多い所為か、テストもおかしな問題が多い。まだ習ってない単元の問題は勿論のこと、先生の趣味はなどという意味不明の問題が出ていることもある。前に受けたやつで一番訳が分からなかったのは『先生の好きな男性のタイプは』だった。クラスで俺だけが不正解だった。
と、言う具合に絶対に授業を聞いてなければ問題が出題されるため生徒は必死に授業を聞くのだ。長期休暇を手に入れるために。とまぁ、授業に出ない生徒がいると筋肉が半端ない先生がそいつを力づく連れてくるのでサボるこもできない(ちなみにこの先生に喧嘩を売った場合、十秒で半殺しにされる)と、知り合いの先輩から聞いたことがある。部活に遅刻した場合もそれは適用される。
 遅刻をした場合は反省文二十枚に加え、グランドを五周も走らなければならない。ちなみに藍越学園のグランドは一周1kmもあるため五周走るとなれば約5kmということになる。
 俺にとってはどうしてもそれだけは避けたかった。運動音痴で体力がまったくない俺にとって、5km走るということは『死ね』と言われているようなものだ。それを避けるためだけにかなり早く家を出たのに……。
 ここで迷っていても何も始まらない!
 足に力を込め、右足で地面を思いっきり蹴った。
「おぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!」
 とりあえず、雄たけびを上げた。周りの人から浴びせられる視線はこの際気にしなかった。
 
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