IS〜インフィニット・ストラトス《蒼き月の輝き》
□嫉妬と買い物
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「それで……その金髪女にほいほいついていった挙句、奢らせられたと?」
マドカは食べ終わった食器を片づけながらそう言った。
「そそ。いやいや、参った。弾と食ったパフェ代も合わせたら、今日のお小遣い全部使い切っちまったか
らさ、明日からもう何も買えねぇや」
はは、と笑い食後のお茶を啜る。俺はあまり熱いのは好きではないのだが、オータム曰く熱いお茶がう
まいらしく、俺も半強制的に飲まされていた。
マドカが食器を一通り片づけ、席につくと俺の向かい側に陣取っているオータムが呆れ顔で俺を見て、
「お前、阿呆か?」
と、失礼極まりないことを言いだした。
俺から言わせてもらえば、お前が阿呆だ。そう言いたいのだが、それを言ってしまえばまた口喧嘩になることは目に見えているので、やめておくことにした。オータムとの口喧嘩は最終的に力での決着となることが多い。そうなれば、非力な俺はまず負ける。
負けると分かっている勝負をわざわざ受けるようなことはしない。無駄なことはしない、それは俺の信条というか性格だ。
だから、俺はオータムの暴言も華麗に無視した。
「とはいえ、どうしたもんかねぇ」
お茶をすすりながら、そう呟く。
どうする、とは例の新入部員勧誘についてだ。どうやってあの部に興味を持たせるか、というのも勿論悩みどころだが、それ以前に転校生が女性なのか男性なのか、というのが俺の中では大分部を占めていた。
はっきり言うと、俺は女性が苦手である。先の金髪美女さんも然り。ごく一部の例外を除けば、クラスの女子とは話したことはなく、また話しかけられたこともない。
何故、苦手意識を持っているのかと言われれば、答えに窮するのだが、こればかりはどうしようもないのだ。なので、転校生が女子だった場合俺は果たして声をかけることができるのだろうか、などという馬鹿な心配をしてたりする。勿論、その場合弾に全て任せるつもりなので問題はないのだが。
俺のそんな呟きを訝しむような表情で見ていたマドカが、
「何がだ」
と、何故か不機嫌そうに聞いてきた。
まさかこの子、自分の悪口を言われたのではないだろうかと思っているのではなかろうか。
「いや、こっちの話だ。気にしないでくれ」
そう言うと、ますますマドカの顔が不機嫌そうに歪む。
なんだ、興味があったのか。
「いやね、なんでも転校生が来るらしいんよ」
「転校生?」
「それでさ、先輩がまだ来てもいないそいつを部に入部させろー、とか言っちゃて困ってるのよ」
簡潔だが要点はおさえられていると思う。
言いたいことが伝わったのか、マドカは大きなため息を漏らし、
「そうか」
とだけ言い、隣の部屋に引っ込んでしまった。
「なんか、あいつ怒ってる?」
なんとなくオータムに話しかけてみた。
最後の一滴を飲み干した湯呑を手で持て余しながら、オータムは興味なさげに言う。
「知るか。お前がまた何かまずいこと言ったんだろ」
それが何かを俺は訊いているんだが…………。
「女心ってやつか……」
女性に囲まれて生活している俺が言える立場ではないが、やっぱり女は分からん。