IS〜インフィニット・ストラトス《蒼き月の輝き》

□占拠と拘束と
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「何が起こってるの……?」

 悲鳴と怒号が重なりながら響き合うフロア内で藍染(あいぞめ)時雨(しぐれ)はそう呟いた。僅か数秒前に聞こえたのは間違いなく銃声である。

「てめぇら! 大人しくしないと、撃つぞ!」

 また一発の銃声が響く。怒号と悲鳴がそれに共鳴したかのように、ぴたりとやんだ。やがて、静まり返ったフロア内に一人の男の声が響いた。

「はーい、みなさん。これ見える? もう何か分かってるよね、そう銃です。引き金引いたら、ビュンッ、って弾出る奴ね。あ、もちろん人に撃ったら死ぬよ?」

 男は軽い口調でそう言った。手に持つ拳銃をまるで玩具のように弄びながら、男は更に言葉を紡ぐ。

「だから、動かないでねー。僕も撃ちたくないから、君たち大事な大事な人質さんだし。だからさ、今は大人しく拘束されてちょうだいねー。抵抗すると、撃つよー」

 そんな男を時雨は離れた位置に設置してある商品棚に隠れながら見ていた。どうやら立て籠もりする気らしい。
 男たちの数は確認できる範囲で十数名。他のフロアにいる者も含めるとなると、相当数がいるようだ。武装は全員が拳銃を一丁、アサルトライフルかサブマシンガンを一丁ずつ。男たちの体格から見て、軍に所属していた者の可能性がある。

 時雨がそこまで状況を整理したとき、建物外からある音が聞えたきた。パトカーのサイレン音だ。

「やっぱり、警察は早いわね……」

 そう呟いてから、時雨は隠れていた商品棚から動いた。男たちが巡回するこのフロア内にいつまでも留まっておくのは危険だと判断したからだ。

 数分前と違い、不気味な静けさが漂うフロア内を一人無音で歩く。
 商品棚と柱の陰を利用し、徘徊するテロリスト達から身を隠す。どうやら、このフロア以外も占拠しているようでこのフロアにいる人数はさほど多くないようだ。

『あーあ、テステス。ううんっ。あー、外にいる警察諸君に告ぐ。今から三十分後にこの建物を爆破させる。どかーんとな、ドカーン。そして、俺たちには人質がいる。一目見る限りでは、三十人近くだ』

 突然、店内に設置されているスピーカーから声が流れてきた。察するにその声の主は先程の軽い口調の男だろう。警察に警告するためか、少々喋り方が違うがひとを馬鹿にしたような言葉遣いと聞くだけで苛立ちが募る声は間違いようがない。
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