スマプリ! Request Smile♪

□29 ガールフレンド
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 ブライアン・テイラーが日本にいる。

 その事実が信じられなくて、あかねは思わず呆然としてしまった。

日野あかね「(何や、これ……? また、ティンカーベルの作った偽モンか何かか……?)」

 以前、ティンカーベルの術中にハマって苦い思いをした経験が蘇る。

 しかし、目の前にいるブライアンはあかねの記憶の中のブライアンと恐ろしいくらいに面影が重なる。

 もはや偽者だとは到底思えないほどだった。

日野あかね「ホンマに……、ホンマにブライアンなんか……?」

ブライアン「Oh、アカネ。ボクのこと、忘れちゃったんデスか?」

日野あかね「忘れてへん! ブライアンのこと忘れてへんけど……その…、色々あったんや…」

 嫌な過去を振り飛ばそうと、今は現実を直視する。

 目の前にいるのは間違いなくブライアンだ。

 そう認識した時のこと……。

英国人の女性「ブライアーン! やっと見つけた」

日野あかね「…え?」

 少しイントネーションが違ったものの、ブライアンよりも饒舌に日本語を話す英国人女性が駆け寄ってきた。

ブライアン「メイ! 何処、行ってたデスか?」

メイ「それワタシのセリフ。あれ? この子、知り合い?」

日野あかね「え? あ…」

 不意に話を振られ、何を話したらいいのか分からなかったあかねに代わり、ブライアンが紹介を始めてくれた。

ブライアン「メイ。こちら、日野アカネさんデス。アカネ。こちら、メイ・ロジャース」



ブライアン「ボクの幼馴染で、Girlfriendデス」

メイ「アカネちゃんね? ヨロシク♪」

日野あかね「……え? ガール…フレン、ド…?」



 英語に弱いあかねでも、その言葉の意味は何となく分かった。

 分かったと同時に、その言葉を受け入れたくない感情も自覚していた。







 ネバーランド、ピーターパンの城。

 山のように積まれた絵本の見渡しながら、ティンカーベルはクスクスと笑う。

ティンカーベル「クスクスクス♪ これだけ戦力が集まってくれば、きっとピーターパンだって大喜びね……。さ・て・と♪」

 城を飛び出し、単身で人間界へと向かい始めるティンカーベル。

 目的はもちろん、プリキュアたちの打倒だった。

ティンカーベル「まぁ、そう簡単には倒れてくれそうもないけど……。退屈しのぎにはなってよねぇ〜♪」







 ブライアンの日本来日は、すぐに皆の耳にも届いていった。

星空みゆき「ブライアンがッ!?」

黄瀬やよい「帰ってきたのッ!?」

日野あかね「あー…、うん…」

 近所の公園に集まり、ブランコの周辺で五人は自然と集まっていた。

緑川なお「良かったじゃん、あかね!」

青木れいか「またお会いできたなんて……嬉しかったでしょう?」

日野あかね「……せやな…。また会えて、嬉しかった…」

 あかねの言葉に偽りはないだろう。

 しかし、そのテンションの低さから伺えるのは明らかな落胆の色だった。

星空みゆき「ど、どうしたの……?」

黄瀬やよい「またブライアンと会えたのに。あかねちゃん、元気ないみたい……」

緑川なお「何かあったの?」

日野あかね「………それがな…。ブライアン、彼女…連れて来てたんや………」

 その言葉には皆も驚愕した。

 まさか、ブライアンが自分の彼女と共に日本の地に戻って来るとは予想もしてなかったのだ。

 そもそも彼女がいたことも初めて知った。

日野あかね「幼馴染の彼女、って言ってた……」

青木れいか「それは…、本人の言っていたことなのですか?」

 あかねは黙って頷く。

 こればかりは、あかねの勘違いや思い違いなどではない。

 他でもないブライアン本人から紹介されたのだ。

日野あかね「実はな。今から、また会う約束してんねん……。せやけど…ウチ、どないな顔して会ってええんか……。もう、よう分からんくなってきた……」

 あかねの心境を察しつつ、皆も考えを巡らせる。

 とにかく、これから会う約束をしているのならば会いに行くこと。

 話はそれからだ。

星空みゆき「よし! それじゃあ、あかねちゃん!」

黄瀬やよい「わたしたちもこっそり見てるから、何かあれば手助けするよ!」

日野あかね「えええ!? 一緒に来てくれへんの!?」

緑川なお「いやぁ、さすがに…。約束したのはあかね一人だからねぇ〜」

青木れいか「会ってからどうするのかも気になりますし、ここはあかねさん一人にお任せします」

日野あかね「そんなぁ〜ッ」

 四人に背中を押される形で、あかねは公園を出ていく。

 目指すのは、ブライアンと待ち合わせ場所に指定した七色ヶ丘駅前の広場だった。







 七色ヶ丘駅の駅前広場。

 先に到着していたブライアンが、あかねを見つけて声をかけてきた。

ブライアン「アカネ!」

日野あかね「あぁ…ブライアン…」

 やっぱり嬉しい。

 手を振って自分を迎えてくれるブライアンを見て、あかねはそう思って微笑んだ。

 そんな二人の様子を、隠れながら見守るみゆきたちも興奮を抑えるのに必死だった。

星空みゆき「(本当だ! 本当にブライアンが日本に来てるぅ!!)」

黄瀬やよい「(これで、あかねちゃんに会うために日本に来ました、ってことなら理想的なのになぁ〜ッ)」

緑川なお「(あ! 移動するみたいだよ!? あたしたちも急がなくちゃッ)」

青木れいか「(なお、もう少し抑えましょう。気付かれては意味がないのですよ?)」

 こっそり尾行しつつも、二人の会話だけは聞き逃さないようにギリギリの線を保ち続けた。

 そんな四人の存在に気付かず、ブライアンは日本に来た経緯を話してくれた。

日野あかね「そういえば、何でまた日本に? また留学か?」

ブライアン「いいえ。ボク、日本で暮らすコトになりました。独り暮らしデス」

日野あかね「ええ!!? 日本に移り住むん!?」

ブライアン「That's right。両親には反対されました。けど、どうしても諦められなかったデス」

 ブライアンは、親の反対を押し切って日本での生活を選んできたのだった。

 しかし、それには一つの疑問が残る。

 ブライアンは独り暮らしをすると言っていたが、では一緒に日本に来ていた彼女はどうなるのだろうか。

日野あかね「……なぁ、ブライアン…。この前、一緒におった…女の人のことやねんけど……」

ブライアン「女の人? もしかして、メイのことデスか?」

 あかねは肯定し、メイの今後について訊いてみることにした。

 するとブライアンは、何てことない調子で簡単に語り明かしてくれたのだった。

ブライアン「メイは留学生デス。それで、ボクも同じ時期に日本に来て、少しだけ助け合ってこうと思ってマス」

日野あかね「あぁ…、そうなんか……」

 メイは、この時期に日本の七色ヶ丘市を訪れた交換留学生で、時期に合わせて同じ航路でブライアンも来日を果たしたらしい。

 メイが学校に通い始めるのは新学期が始まる九月からなので、まだ一ヶ月以上も余裕がある。

ブライアン「その間、ボクの生活とか、メイの生活とか、色々と助け合っていきマス」

日野あかね「……そっか」

 ブライアンとメイ。

 幼馴染の二人が故郷の英国から離れた日本の地で助け合っていくことに、何もおかしなことはない。

 でも、何だか面白くない、と感じてしまっている自分がいることに、あかね自身も気付いていた。

日野あかね「(何やろな……、このモヤモヤ感……)」
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