3つの恋が実るミライ♪
□-- エピローグ
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こうがたちが未来に帰ってから、もうすぐ三ヶ月が経過しようとしていた。
三月末日が迫る中、みゆきたちは進級の準備で大忙しである。
ウルルン「みゆき。忘れ物すんじゃねぇぞ」
星空みゆき「分かってるよぉ。はぁ〜、わたしも、もう中学三年生かぁ〜」
春休みが終われば、また学校が始まっていく。
ウルフルンたちも、普段は妖精の姿でヌイグルミのふりをしてきたが、また人間としての生活が再開される。
ちなみに、どうやら中学三年になった区切りのいい時期を見計らって、マジョリーナとジョーカーも七色ヶ丘中学にやって来るようだ。
三年生から加入するのは、常識的に考えて正直どうなのかとは思うが。
星空みゆき「でも、みんな一緒の方が楽しいもんね」
ウルルン「ウルッフフフ、そうだな」
星空みゆき「あれ? そういえばウルルン、キャンディはどうしたの?」
今になって気付いたが、今日はキャンディの姿だけが見当たらない。
気付かぬ内に、何処かへ出掛けていったのだろうか。
ウルルン「ん? あぁ、何だかジョーカーに用事があるみたいだったぜ?」
星空みゆき「え? ジョーカーに……?」
オニニンを抱えたやよいが、少し大きめのカバンを持って青木家に駆け込んだ。
れいかが応対した時、やよいは涙目だったという。
青木れいか「やよいさん。どうしたんですか?」
黄瀬やよい「お願い、れいかちゃん! わたしの宿題、手伝ってぇ!!」
青木れいか「……え?」
オニニン「やよい。マンガの完成に夢中で宿題を忘れてたオニニ……」
先日、やよいがコンクールに応募した漫画“ミラクルピース”が雑誌に掲載された。
それを始めとして、本格的に漫画家を目指して頑張り始めたのだが、その努力が仇になった。
もうすぐ三年生になるというのに、やよいの宿題はほとんど手付かずだったのだ。
青木家に上がらせてもらったやよいを出迎えたのは、星空家からやって来たキャンディだった。
キャンディ「あ! やよいとオニニンだクル〜!」
オニニン「キャンディ〜!」
黄瀬やよい「あれ? キャンディだけなんて珍しいね……」
青木れいか「先ほどまでジョーカーがいましたよ。もしかして、もうバッドエンド王国に向かったのですか?」
キャンディ「クルクル〜♪」
黄瀬やよい「バッドエンド王国に?」
話の内容に追い付けないやよいが首を傾げると、キャンディがここに来た目的を簡潔に話しだした。
キャンディ「キャンディ、忘れちゃってたクル。ジョーカーから、残りのキュアデコルを返してもらいに来たクル〜」
一方、バッドエンド王国にて。
ウルルンたちが人間界でヌイグルミとして住まうようになってから、マジョリーナもジョーカーもこの世界に帰ってきていない。
つまり、実に三ヶ月ぶりの帰還だった。
ジョーカー「まさか、もう一度戻る日が来るとは思いませんでしたけどねぇ……」
キャンディへとキュアデコルを返すため、ジョーカーは未使用だった赤っ鼻とデカっ鼻を取りに来たのだ。
しかし……。
ジョーカー「……? おや……?」
辺りを見渡して、目的の物を探して行く。
しかし、見つからない。
三ヶ月前までは確かにあったはずなのに、全ての赤っ鼻とデカっ鼻が消失していた。
ジョーカー「……おかしいですね…。何処かに片付けたでしょうか…?」
だがそんな記憶はない。
それに、辺りを隅々まで見て回ったことがキッカケで、もう一つの違和感にも気付くことができた。
ジョーカー「…………」
バッドエンド王国が、綺麗すぎる。
といっても、別に清潔感があるわけではない。
以前と変わらずに淀んだ空気が漂っているが、そうだからこそおかしいのだ。
三ヶ月も放置していたのに、以前と何も変わっていない。
埃も塵も、何一つ積もってさえいないのだ。
ジョーカー「(妙ですね……。ワタシのいない間に、バッドエンド王国で一体何が……)」
その疑問が浮かび上がった瞬間、ジョーカーの背後から足音が聞こえてきた。
ジョーカーが振り返った瞬間……。
青木家に、やがてみゆきたち全員が集まってきた。
やよいの宿題という事態を聞きつけて、みんなも自然と集合してくれた。
しかし、その目的はやよいの宿題を手助けするためではない。
青木れいか「………みなさんも、なのですね…」
星空みゆき「……」
日野あかね「……」
緑川なお「……」
宿題を片付けられないのは、何も夏休みに限ったことではないらしい。
マジョリン「はぁ〜……人間って気苦労の多い生き物なのさ……」
ウルルン「でも、それが長期休みを得た人間の常識なんだろ?」
キャンディ「ウルルン。れいかは違うクル」
青木れいか「ふふ、ですが条件は同じです。わたしが宿題を終わらせることができたのですから、みなさんにも出来るはずです」
オニニン「みんなぁ、頑張るオニニー!」
と、その時だった。
ガラガラと玄関が開く音が聞こえ、誰かの足音がこちらに向かってくる。
日野あかね「何や? お客さんか?」
青木れいか「…変ですね。今日は誰かが訪ねてくる予定はないのですが……」
緑川なお「あたしたちのせいで、今日はお客さんがいっぱいになっちゃったね…」
黄瀬やよい「でも誰なんだろう?」
みんなが口々に話していると、客間の襖が開かれた。
全身をズタズタに斬り裂かれた、瀕死状態のジョーカーが倒れ込んでくる。
ジョーカー「………ぁ、ぁ…ッ…ぐ、ふ…」
星空みゆき「……ぇ?」
青木れいか「ーーージョーカーッ!!?」
慌てて駆け寄る面々。
バッドエンド王国にキュアデコル、もとい赤っ鼻の回収に出掛けたはずのジョーカーは、ボロボロの姿で帰ってきた。
その手に持ち帰ったものは何もない。
一体、何があったというのだろうか。
そして、人間界でもなければメルヘンランドでもない。
バッドエンド王国に最も近いとされる、深い深い世界の底にて。
????『目的の物は手にしたか?』
????「はい、コンテュー様。全て回収いたしました」
コンテューと呼ばれた男は、重苦しい声と息を吐く。
この場にいるのは、五人の少女。
その五人が囲んでいる井戸の中に広がる水面には、コンテューの顔が映り込んでいた。
コンテュー『キュアデコルを取り出す必要はない……。赤っ鼻のままでも十分に利用できるはずだ』
????「せやけど。ウチらはどないしたらええんですか? バッドエンド王国にあったもんでも、応用はムズいで……」
コンテュー『応用など考えるな…。皇帝ピエーロの遺産など、我らが新たな形で活用してしまえばいい…』
????「あっははは♪ じゃあじゃあ! わたしたちも人間たちからバッドエナジーを搾り取っちゃおうよ! それをエネルギーにすれば、コンテュー様だって♪」
????「バッドエナジーだけじゃ足りない。夢も希望も何もかも、あたしたちの目的の邪魔になるものは全て排除する。徹底的に破壊し尽くすことこそが、あたしの直球勝負だ」
コンテュー『その通りだ…。この世界を奈落色に染めるならば、全ての力を奪い尽くせ…。我の顕現は、その瞬間に果たされるのだ……』
????「んふふ……この世界には美しいものだけがあればいいのです。コンテュー様の現出に不要なものなど、存在する価値もありません」
????「決まりだね。さっき手始めにジョーカーを痛め付けてやったんだし、わたしたちも動かなくちゃ」
口々に会話を進める五人の前で、井戸の中からコンテューが命令する。
コンテュー『進め、我が優秀なる部下たちよ……。人間界を、奈落の底に突き落とすのだ……ッ』
????「うふふ…最っ高に不幸ですね…。この世界はわたしさえ幸せならば、もうそれでいい……。不幸だねぇ、不幸だねぇ。うふふふふ!! うふふはははははッ!!!!」
新たな敵が、奈落の底から湧き上がる。
みゆきたちの前に現れる、新たな敵の姿は……おそらく……。
ネガティブなプリキュアを形とした、もう一人の自分たちに他ならない。
【to be continue】