中二病でも恋がしたい! Cross

□第04話 大罪者
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 二階堂先生の予想していなかった言葉に、勇太たち全員が凍りついたように静まった。

小鳥遊六花「中二病、全員を……」

凸守早苗「皆…殺し………!?」

五月七日くみん「それって、どういう意味なんですかぁ!?」

二階堂啓壱「どういう意味も何も、そのまんまの意味だよ。五月七日くん」

 モソモソとドーナツを食べながら、それでも苦い顔をして二階堂先生は続ける。

二階堂啓壱「まだ頭の整理も追いつかねぇと思うが、あえて整理が付く前に教えといてやる。あとから質問は受け付けてやる。だから今聞いておけ」



二階堂啓壱「今現在、実現した中二病の力を振り回して暴れている“二つの勢力”をなッ」



 一つの机を教室の真ん中に移動させ、その上にティッシュペーパーを広げていく。

 二階堂先生は、その上にドサァッとチョコ菓子の山を広げた。

 たけのこときのこの形をしたアレである。

二階堂啓壱「まず、最初に話した四天王の連中だ。こいつらの目的は、中二病のために一般人を皆殺しにし、中二病だけの理想郷を作り上げること」

 四つのチョコ菓子を選び取って綺麗に並べる。

 どうやら、四天王の代役らしい。

二階堂啓壱「さっき丹生谷くんは、そんなことするくらいなら大きな事件になっている、って言ってたな? そして事実、大きくはないが誌面は騒がせてやがる」

丹生谷森夏「……それが、何か?」

二階堂啓壱「ならよ。何でそんなことを何度もやらかしてる連中が、ただの一人でも捕まった、ってニュースが流れねぇか分かるか?」

一色誠「……え? それってまさか、たったの一人でも捕まったことがないってか!?」

小鳥遊六花「ありえないッ。そんなに何度も行動してるなら、一人くらいは捕まっててもおかしくない。警察側の隠蔽か何かで……」

二階堂啓壱「そうだったら良かったんだけどよ。生憎と俺の旧友が警察の人間でな。一応、確かな資料は受け取ってる」

富樫勇太「…じ、じゃあ……」

 勇太の思い至った答えも、二階堂先生が最初に提示した意見も、それが正解だ。

二階堂啓壱「残念だが、奴らは一度も捕まってねぇ。瞬間移動か何かに似た能力を使うやつが、四天王の下に就いてるからな」

小鳥遊六花「……あッ」

 急に何かに思い至ったらしい六花に、面々は何事かと首を傾げるが、二階堂先生だけは違った。

二階堂啓壱「そういえば、小鳥遊くんは見てたっけな。俺が富樫くんを助けに行った時に」

 勇太も、六花から聞かされたことを思い出した。

 勇太が気を失った後に、いつの間にか現れていた謎の人物が大野と共に去っていったことを。

小鳥遊六花「いつの間に現れたのか、気付けなかった……」

二階堂啓壱「“気付いた時”に来たんだよ。言ったろ? 瞬間移動に似た力だ、って。一瞬でパッと現れやがったのさ」

 そんな移動法を持ってる故に、人殺しという重罪を犯していても一人も捕まっていない。

 犯行を行えば、その瞬間能力保持者が迎えに行き、殺害実行犯ごと去っていく。

 逃走時間0秒の殺人で、警察を翻弄し続けていたのだ。

二階堂啓壱「加えて、やつらは目的を早く実現させるために仲間を集めてやがる。中二病を実現させた奴らを四天王の配下に誘い、一緒に理想郷を得ましょう……的にな」

 そしてそれが、大野が邪王真眼である六花に接触してきた理由。

 だが、中二病の実現に“気付いていなかった”六花を中二病ではなく一般人として、一緒にいた勇太もろとも殺そうとした。

 結果的に二階堂先生と瞬間移動保持者が現れ、勇太も六花も救われたが、それらの加入がなければ本気で命を落としていただろう。

二階堂啓壱「あと、富樫くんがダークフレイムマスターであることが知られていなかったのも好転したな。強力な中二病を消しちまうのは、相手さんのデメリットでもある」

富樫勇太「……強力な、中二病?」

二階堂啓壱「あくまで仮説さ。富樫くんの設定が強力なら、相手さんだって仲間に引き入れたくなる逸材に成り得る」

富樫勇太「…………」

 実感が沸かなかった。

 自分が恥ずかしくも設定していた中二病を、他の中二病の設定と真剣に比べてみることなど、当然ながらあるはずがなかったからだ。

二階堂啓壱「ついでに教えておく。四天王とその配下の見分け方だが、こいつは左耳のピアスに比例してる」

丹生谷森夏「…ピアス? 左耳に?」

二階堂啓壱「あぁ。多けりゃ多いほど四天王に近い。そんでもって、左耳に四つのピアスをつけてる奴が、四天王の一人だ」

富樫勇太「ーーーなッ!!?」

 大野の左耳にはピアスがあった。

 その数は……四つ。



富樫勇太「……あいつが…四天王の、一人…ッ」



 初対面から、いきなりの大物と出会っていたことに、勇太は驚きを隠せなかった。

 対する六花も、何も言えずに息を飲んで驚愕していた。

二階堂啓壱「連中に関する説明は以上だ。中二病のために一般人を殺害している四天王と、その配下の集まり。中二病にとっての理想郷を作り上げようとしているふざげた連中。総称……」





二階堂啓壱「“新世界の四獣”ッ。中二病だけの新しい世界を作って、神様の存在になろうとしてる馬鹿野郎共だッ」
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