中二病でも恋がしたい! Cross
□第06話 各話合
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ココアの注がれていたカップを二階堂先生が集めていく。
既に飲みほされたものと、残っていても冷めてしまったものばかり。
二階堂啓壱「んじゃあ、先にカップを片付けてくるから。それまで、少し頭を休めときなさい」
富樫勇太「あ……」
二階堂啓壱「今すぐに色々話しても、どうせ理解が追いつかないよ」
ニィッと笑って台所へと消えていく。
すぐに水の流れる音が聞こえてきたため、おそらくカップを洗っているのだろう。
二階堂先生がいなくなったこともあるのか、勇太は皆へと頭を下げていた。
富樫勇太「ごめん……みんな……」
その謝罪は、自分の中二病が既に実現という形を持っていたことを、今の今まで話さなかったことに対するものだ。
六花は知っていたが、勇太が明かさないことを勝手に皆に話すわけにもいかなかった。
丹生谷森夏「それはいいわよ。でも、まぁ、ちょっと驚いたけど」
五月七日くみん「すごいよねぇ〜、手から火がボォって」
皆の様子から怒りは窺えない。
しかし、勇太の謝罪には別の意味も含まれていた。
富樫勇太「……俺の力が実現してる以上、きっと、二階堂先生と一緒に戦っていくことになると思う……。でも、皆はそんな力は使えてない」
凸守早苗「何を言うのデスか。ダークフレイムマスターに実現が成功しているのなら、この凸守だってミョルニルハンマーの使い手として……」
富樫勇太「……いや、多分だけど、力が実現しちゃったら、皆も色んな奴らに狙われていくかもしれない……。そう考えると、俺はもう奴らの標的から逃れられない」
丹生谷森夏「……何が言いたいの?」
勇太の意図が掴めない丹生谷が質問し、勇太は自分の考えを口にした。
富樫勇太「俺のせいで、皆を巻き込みたくない……。戦いが治まるまで、俺とは関わらない方がいい……」
小鳥遊六花「ーーー勇太!?」
皆を敵の目に向けさせたくない。
標的扱いされるのは自分だけでいい。
自己犠牲精神というわけではなく、あくまで友達を思っての考えだった。
一色誠「んな水臭いこと言うなって。それに、もう小鳥遊さんは標的になっちまってんだろ?」
富樫勇太「六花が危ない目に遭う前に、俺が相手側を食い止めればいい……。それに、俺も標的なんだろうけど大罪患者ってのもいるみたいだし……」
小鳥遊六花「勇太……」
この同好会メンバーで集まるのも、今日が最後の方がいいかもしれない。
仮りにいつも通りに活動を続ける場合、そこに勇太の姿はない方がいい。
勇太は遠回しに、そう伝えていた。
富樫勇太「………俺、二階堂先生を手伝ってくるな…」
台所に向かう勇太。
止める者は誰もおらず、きっと止めたくても止められなかった者もいたのだろう。
流し台の前に立ってカップを洗っている二階堂先生に並び立つ勇太。
富樫勇太「先生、手伝いますよ」
二階堂啓壱「お、マジで? 悪いね〜。んじゃ、お願いしようかな」
といっても、カップの洗い作業などすぐに終わる。
しかし、まるで勇太が来るのを待っていたかのように洗い済みのカップは少なかった。
二階堂啓壱「あれで良かったのかい? お友達からわざわざ遠ざかる選択肢でさ」
富樫勇太「……聞いてたんですか」
二階堂啓壱「いいや、聞こえちゃっただけだよん」
水音を立たせていて聞こえちゃった、とは苦しい言い訳だろう。
どうやら、元々勇太たちの会話は聞く気満々だったようだ。
富樫勇太「……これでいいんです。俺のせいで、皆が危険な目に遭うのは嫌ですから……」
二階堂啓壱「友達思いだね。いいことだよ」
富樫勇太「だから、今ここで聞いてもいいですか? 新世界の四獣を名乗ってる、四天王のこと」
二階堂啓壱「……そうだね。話しておこうかな」
キュッと蛇口を締めて、洗い終えたカップを拭いていく。
その際に、二階堂先生は四天王について知っている情報を話し始めた。
二階堂啓壱「まず、四天王を含めて新世界の四獣に属してる連中は、日に日に仲間を集めてる。大野くんって子が小鳥遊くんを勧誘しに来たみたいにね」
富樫勇太「…はい」
二階堂啓壱「今現在の総員数は分かんないけど、日本全国で最低でも一万人は超えてるはずだ」
富樫勇太「そんなにッ!!?」
予想よりもずっと多い人数に驚く。
これから勇太は、そんな大人数を相手にしなければならないのだろうか。
二階堂啓壱「ま、俺たちが取り押さえるべきは四天王の頭だ。配下の連中は見つけ次第で取り押さえる。ついで、って考えていいんだよ」
富樫勇太「え、あ、そうですか……そうですよね」
少しだけホッとした。