中二病でも恋がしたい! Cross

□第02話 雷神鎚
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 駆けつけた木山に四天王の配下を引き渡した二階堂先生は、巡回中に呼ばれるのも困る、と軽く叱られていた。

 そんな中でも駆けつけてくれる旧友に感謝しなくてはいけないだろう。

凸守早苗「……マスター」

小鳥遊六花「何?」

 その一方で、凸守は六花に気になっていたことを尋ねていた。

凸守早苗「最近、活動が活発すぎるデス。我らの結社を守るためとは言え、少しは休養を取るべきデスよ?」

小鳥遊六花「問題ない。戦いに支障を来たすような無茶をしないよう、必要最低限の休養は取っている」

凸守早苗「でも、この二ヶ月でマスターは戦い通しデス。そこまで根を詰めずとも、マスターにはサーヴァントである凸守も、契約者であるダークフレイムマスターもいるではないデスか」

小鳥遊六花「………」

凸守早苗「…マスター?」

 この二ヶ月、多くの功績を上げていたのは六花だ。

 そこまでして行動に出なくてはならない理由が、六花にはあったのだろうか。

小鳥遊六花「……ここ最近、敵の襲撃率が高くなったように見える。まるで、こっちの力量を計るためか、あるいは何か別の狙いがあるのか……」

凸守早苗「……言われてみれば、確かに不自然デス……。襲撃数は比較的高いのに、凸守たちにとって致命的となるような強者が挑んできているわけではないデスね……。どれもピアス一つ分の弱者ばかり……」

 四天王の配下による、不自然な襲撃の連続。

 その真相を確かめるためにも、誰よりも早く動いて活動していたのは六花だった。

 それが、六花が率先して結社の活動に勤しんでいた理由。

 しかし皮肉にも、誰よりも早く動いていた六花を差し置いて、その不自然さの真相に気付いたのは……。







 体育館倉庫の裏。

 大剣と長剣の刃が交差し、甲高い音が連続する。

富樫勇太「ーーー燃え盛れッ! “ダーインスレイヴ”ッ!!」

 柄を握る右手から闇焔を伝わせて、大剣の刀身に赤紫色の炎が揺らめく。

平井佳祐「おぉ、もう簡単に炎を灯すことにもできますか。しかし……“それだけ”でしょうね……。この二ヶ月を、貴方はあまりにも無駄にしました……ッ」

 基本的な力なら五分五分だろう。

 だが平井の剣の方が速く、そして上から下に振り下ろす一撃は重く、基本的な体力を易々と凌駕する。

富樫勇太(……こっちは久しぶりの戦闘に、体が追いついていかない……ッ)

 このままでは押し負けるかもしれない。

平井佳祐「ほら、そんなに弱気でいては消えてしまいますよ? せっかくの闇焔(ダークフレイム)が……」

 そう指摘された瞬間、大剣に揺らめいていた闇焔の威力が衰えていくように見えた。

 勇太の気力しだいで爆発的に燃焼する闇焔は、勇太の気が弱くなれば火力も同時に衰えていく。

富樫勇太(……ぐッ!! 言葉に惑わされるな……ッ!! 気をしっかり持てッ!!)

 思い直せただけまだマシか、大剣の炎は無事に火力を増していった。

平井佳祐「……ふぅ。やはり、一筋縄ではいきませんか」

 キィィンッ! て剣を弾いて後退する平井。

 情けからかもしれないが、この隙に体勢を立て直すことはできた。

 だが形成は逆転しない。

平井佳祐「今の時期に出てくるのが懸命だと思いましたが、早合点し過ぎましたか……。やはり当初の予定通り、力量を計る程度に済ませればよかったものを」

富樫勇太「……? 何を言っている?」

平井佳祐「これは失礼。貴方は見た目よりも低脳でしたね」

 わざとカチンとくる台詞を繰り返しているようだが、それに激昂したら相手の思うツボだ。

 ここは堪えなくてはならない。

平井佳祐「不思議に思いませんでしたか? 何故、この二ヶ月も四天王勢力のトップが貴方たちを粛清に来なかったのか……。何故、この二ヶ月は低脳な配下ばかりを送って、貴方たちを襲撃してきていたのか……」

富樫勇太「……?」

 平井は、まだ分からないのか、という態度で溜息を吐いた。

平井佳祐「低脳な貴方でも分かるよう、キッパリとお答えしましょう。その理由は……」





凸守早苗「ーーー食らうデス! “ミョルニルハンマー”!!」





 平井が何かを明かそうとした瞬間、二人の頭上から何かが飛び出し、巨大な質量を誇る何かを思いっきり振り下ろした。

 土埃が舞い上がり、一時的に視界が失われた勇太の目に映ったのは、巨大な鎚を持ち上げた凸守早苗の姿だった。

富樫勇太「凸守ッ!!? お前、その力……」

凸守早苗「気を付けるデスよ、ダークフレイムマスター! 敵の狙いは、初めからお前なのデス!」

富樫勇太「……? どういうことだ……」

 おそらく、六花に感化されて覚醒したのだろう。

 実現したミョルニルハンマーを片手でグルグルと振り回し、辺りに漂う土埃を吹き飛ばす。

 そこには、無傷の平井が折れたボロ傘を握り締めたまま立ち尽くしていた。

平井佳祐「得物は、なくなってしまいましたか……。ですが、自分は無傷でしたね。貴方の力も高が知れます」

凸守早苗「むむ……、ピアスが四つ……。よりにもよって四天王デスか……」

 グッとミョルニルハンマーを握り締めると、口元に笑みを作りながら凸守は叫んだ。

凸守早苗「初戦の相手として、不足なし!! “ミョルニルハンマーの使い手”凸守早苗、全身全霊で突撃するデスッ!!」
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