中二病でも恋がしたい! Cross
□第05話 破綻者
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期末テストが終わり、夏休み目前となっていた現在。
勇太たちは学校が開いた緊急集会で、その事実を確信したのだった。
富樫勇太「…凸守が…、行方不明……?」
丹生谷森夏「昨日の夜、あの子の親御さんから小鳥遊さんのところに連絡があったみたいなの。まだ帰ってないけど知らないですか? って」
今、六花は近くにいない。
集会が終わった直後に、何処かへと走り去ってしまったのだ。
一度教室に戻されたものの、勇太たちもどうしていいのか分からずにいた。
一色誠「凸守って、確か結構なお嬢さんなんだろ? だったら、全力で捜索願とか出せばすぐに見つかるんじゃ……」
富樫勇太「……何事もなく、見つかってくれればいいんだけどな」
嫌な予感が拭えない。
この緊張感は、どうしても慣れることができそうにないほど高まっていき、少しも治まってはくれない。
期末テストが終わった昨日、凸守は家にすら帰っていないのだ。
下校途中で、何かあったに違いない。
富樫勇太「……ダメだッ。俺も捜しに行くッ」
言うが早いが、勇太は通学鞄を掴んで教室を飛び出す。
廊下で九十九先生と擦れ違ったが、事情を話す時間も惜しい。
一色誠「すみません先生! 俺たち、早退します!」
九十九七瀬「え? え?」
丹生谷森夏「指導はしっかり受けますので、今だけは見逃してください!」
背後から二人の声と、こちらに迫る足音が聞こえる。
追いつかれる前に、一色と丹生谷がついてきたことに気付かないはずがない。
富樫勇太「お前ら……」
一色誠「さっさと捜し出して、早いとこ日常に帰ろうぜ!」
丹生谷森夏「あの子がいなくなったら、困るはあんたたちでしょ? とっとと見つける! それで解決よ!」
階段を二段も飛ばして駆け下りていくと、靴箱付近でくみん先輩と合流する。
一色誠「く、くみん先輩!」
五月七日くみん「あ、みんな〜」
口調こそ通常だが、急いで靴を履き替える仕草は通常より二倍は早かっただろう。
どうやら、くみん先輩も考えることは同じのようだ。
五月七日くみん「凸ちゃん、捜しに行くんでしょ? 私も行くよー」
富樫勇太「ありがとございますッ」
四人揃って、勢いよく学校を飛び出していく。
その様子を、一足遅れて靴箱に到着した二階堂先生が見送っていた。
二階堂啓壱「……あー、くそ…。運動しときゃよかった…………」
肩で息を整えつつ、遅れた自分を反省させて二階堂先生も学校を飛び出していった。
二階堂啓壱「まずは木山に連絡だ…ッ。警察なら…、何らかの情報を掴んでくれるだろうしな……ッ」
凸守の下校通路を走りつつ、くみん先輩が解説していた。
五月七日くみん「凸ちゃんの失踪はね、誘拐事件の線が一番濃いみたいだよ」
富樫勇太「誘拐…」
凸守はお嬢様だ。
その凸守が失踪したとなれば、単純な行方不明事件というより、誘拐事件と考えて捜索した方が懸命なのかもしれない。
くみん先輩も詳しいことは知らないようだが、今朝の騒ぎなどからその線が一番可能性が高いと推察したらしい。
丹生谷森夏「どんなに小さくてもいいから、何か見つけたら即連絡。今から別々になって捜した方が良さそうね」
委員長気質を全開にし、丹生谷の指示を聞いた皆は肯定する前に各々に別れていた。
考えることや気持ち、意思が同じなら言葉なんていらないのだ。
凸守の下校通路の一角。
六花は膝に手を当てて肩で息をしている状態だった。
その顔には汗が浮かび、焦りと不安が滲み出ているようだった。
小鳥遊六花「ハァ…ッ…ハァ…ッ…ハァ…ッ…ハァ…ッ…」
喉が渇く、頭も痛い。
吐き気がするほど気持ちが悪いし、脚が休ませてくれと悲鳴を上げている。
それでも、六花は絶対に止まらない。
小鳥遊六花「……凸…、守…ッ」
息を整えてから眼帯を外した。
黄色に光る邪王真眼が呼応し、ほんの少しだけ中二病の力が全身を駆け巡った。
小鳥遊六花「………“イビルバイン・ver.4”…ッ!」
ローラーシューズを応用した高速移動術で負担を減らし、六花は凸守の搜索に戻っていった。