中二病でも恋がしたい! Cross
□第08話 接触者
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期末テストが終わった日の下校時。
凸守はいつもの通学路をいつもと同じように通って下校していた。
いつもと違った点を上げるとすれば……。
凸守早苗「ダンドンダンドンダンダンドン♪ ダンドンダンド〜ン♪」
鼻歌で効果音を歌っている最中、他人と擦れ違い際に話しかけられたことだ。
????「…………」
凸守早苗「……ぇ?」
自分の鼻歌が大きかったのか、相手側の声が小さかったのか、もしくは両方だったのか。
擦れ違った人物は凸守に何かを話しかけてきたが、それを聞き取ることは出来なかった。
凸守早苗「……何デスか?」
とりあえず聞き返してみると、その人物は振り返って凸守を見据える。
腰まで伸びる黒いストレートヘアに、まったく光のない黒い瞳孔。
日本映画界でも有名な“貞子”が人間として実在していたら、このような姿なのだろうと想像できる雰囲気がある。
残念なことに口元はマスクで隠していたが、一言で表すならその女性は“不気味”だった。
凸守早苗「……な、何デスか…?」
凸守がもう一度聞き返すと、その女性はマスク越しのくぐもった声で答えてきた。
????「……私は、大罪患者、です」
凸守早苗「ーーーッ!?」
大罪患者。
その名に凸守は聞き覚えがある。
凸守早苗(大罪患者……ッ!? 新世界の四獣に敵対する、全ての中二病の敵……ッ!!)
中二病を悪しき存在とし、この世から中二病患者を絶滅させるために動いている組織だ。
しかし、中二病である凸守を前にしても、その女性は攻撃を仕掛けては来なかった。
????「……戦いに、来たのではない。話を、しに来た」
凸守早苗「……ぇ…?」
????「……ついて来て」
凸守の返答も聞かずに歩き出した女性に、凸守は黙ってついていくことにした。
連れてこられたのは、売り土地となっている空き地で、手入れがされていないのか背の高い雑草が何百本と伸びていた。
凸守早苗「……は、話とは何なんデスか?」
????「……その前に、自己紹介」
こんな時でも、彼女はマスクを外さなかった。
百々碧桃「……私、百々碧桃(ドドユラ)」
凸守早苗「ど、百々碧桃…?」
変わった名前だったが、自分も珍しい苗字であるため人のことは言えない。
百々碧桃「……第三勢力、噂に聞いている。新世界の四獣を、倒していると」
凸守早苗「……それが何だと言うのデスか?」
百々碧桃「……私たちと、目的が同じ。大罪患者と、同盟を組む気は?」
凸守は察した。
新世界の四獣は、中二病の世界を作るために仲間を勧誘しつつ殺人を行っている。
それは大罪患者も同じのようだ。
彼女たちも同じ志の仲間を捜しつつ、それでいて中二病患者たちを葬っているのだ。
二階堂先生の情報が正しければ、彼女たちは最後の最後で自害することを了承して行動しているのだから。
そしてもしその勧誘を断れば、断った中二病患者の末路は言うまでもない。
凸守早苗(……どうするデスか…!? ここは断って戦うデス!? 否ッ、ホワイトジャック曰く、中二病を相手にしている連中は力が絶大デスッ。ここは……マスターなら…………、マスター……なら……)
決断する際に浮かんだのは、六花の顔。
マスターとして慕っている六花なら、どう決断するのかを予想した。
百々碧桃「……答えを、聞かせて」
凸守早苗「…………マスター、凸守は言うデスよ……」
凸守は、ブンッ! と虚空からミョルニルハンマーを取り出す。
答える前の行動で、もう意思は伝わったはずだ。
凸守早苗「“極東魔術昼寝結社の夏”はッ、お前たちなどと同盟は組まないデスッ! ミョルニルハンマーの使い手、凸守早苗! 大罪患者を打ち取るデェスッ!!」
バンッ、と跳躍した凸守はミョルニルハンマーを振りかざす。
碧桃の実力は知れないが、強敵と分かっているならば加減するだけ無駄なことだ。
凸守早苗「食らうデスッ! ミョルニルハンマーッ!!」
百々碧桃「……勧誘、失敗」
碧桃が呟くと同時、凸守のミョルニルハンマーが碧桃の脳天に振り下ろされた。
瞬間、パリーンッ!! と甲高い音が響き渡ると同時、ミョルニルハンマーが粉々に砕けて消滅した。
凸守早苗「……え…?」
百々碧桃「…………」
碧桃は、無傷で立ち尽くす。
凸守早苗(……な、何…が…!? くッ!!)
凸守はもう一度ミョルニルハンマーを虚空から呼び出す。
どうやら一時的に消されただけのようで、出せなくなったわけではないらしい。
凸守早苗「もう一度ッ!! “ミョルニルトルネード”ッ!!」
ハンマーをブンブンと振り回し、遠心力を加えて叩きつける。
だが当たると思った瞬間には、パリーンッ!! と音を響かせてハンマーが消滅する。
凸守早苗「ーーーッ!!? こ、の…ッ!!」
もう一度ハンマーを取り出し、もう一度攻撃を仕掛ける。
凸守早苗「“ミョルニルトルネード”ッ!! “ロイヤルレボリューション”ッ!!」
何度続けても同じ。
その度に、ダメージを食らわせる前にハンマーが消滅する。
凸守早苗「……ッ!! “ルナティック・ミョルニルクラッシャー”ぁッ!!!!」
百々碧桃「……無駄」
パリーンッ!! と何度目か分からないハンマーの消滅が行われ、凸守は肩で息を繰り返しつつ膝をついた。