SRP:妹達共鳴計画U

□Data.06 九月十三日
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 九月十三日、時刻は深夜の0時過ぎ。

 病院の寝台で眠っていたミサカ9423号は、ガバッと掛布団を跳ね除けて起き上がった。

09423号「……ッ。はぁ……はぁ……」

一方通行「よォ、お目覚めか」

09423号「あ……」

一方通行「ご苦労だったな」

 ミサカ0423号の暗い病室の中、寝台の傍には一方通行が立っていた。

 弁解するまでもないが、別に寝込みを襲いに来たわけではない。

 たった今まで、一方通行たちは学園都市の危機に直面しており、その解決に赴いていたのだ。

一方通行「加納詩苑とかいうヤツの忠告は正しかったみてェだな。さっきまで夜空を覆ってた流星群も消えた。馬鹿デケェ魔方陣も砕け散った。もォ片付いたンだろ?」

09423号「…はい。ミサカネットワークを通じての妨害も成功しました。お姉さまや、あの上条という少年も動いてくれていたようです、とミサカは補足説明します」

 数分前の昨日、とある人物によって学園都市が危機に陥っていた。

 一方通行の知るところではないが、上条当麻や御坂美琴。

 その他大勢を巻き込むほどの騒乱だったものの、日付が変わった今、無事に事件は解決した様子。

 今回ばかりは一方通行の出番も不要だったようだ。

一方通行「何処の誰が企てた悪ふざけか知らねェが、事が済ンだなら俺は戻る。じゃあな」

09423号「あ、一方通行…」

一方通行「何だ?」

09423号「任務遂行のご褒美に、頭撫でてください、とミサカh」

一方通行「調子乗ンな」







 そして、数時間後の早朝。

 空が白み始めた学園都市は、昨日の事件など何も匂わせていない。

 カエル顔の医者は、何食わぬ顔で一方通行の病室を訪れた。

冥土帰し「おはよう、一方通行。調子は如何かな?」

一方通行「…………俺の寝起き顔が不機嫌そうに見えねェなら、テメェで眼球治療でも施しとけ……」

冥土帰し「うむ、元気そうで何よりだ。しかし睡眠不足を褒めるわけにはいかないな」

一方通行「好きで夜更かししてたわけじゃねェっつーの」

 まだ眠気の抜けきっていない顔つきで上体を起こした一方通行は、大きな欠伸をしてみせた。

 そもそも、彼が朝に弱いことは誰でも知っている。

 十分な睡眠を取っていたとしても、きっと彼の反応は変わらない。

冥土帰し「本来ならもう少し寝かせてあげたいところだけど、ちょっと頼みたいことがあるんだ。大丈夫かね?」

一方通行「お断りだ。二度寝で忙しい」

冥土帰し「妹達に関わることだ、と言ってもかい?」

一方通行「………………汚ェ野郎だ……」

 二度寝しようと横たわった一方通行だが、その身を直ぐに起こしていた。

 わざわざカエル顔の医者が、妹達に関わること、と区切りをつけてきた以上、それなりに大きな頼み事だと判断したのだ。

 しかし……。

冥土帰し「素直で何より。頼みごとの件だが、ちょっとした人捜し、と言ったところだよ」

一方通行「人捜しだァ? それの何処が妹達と関係あるンだよ?」

冥土帰し「例の、ミサカ3709号さんだったかな? 彼女の姿が昨夜から見当たらないんだよ。他の個体とのスペック差が著しいからね? 万が一でも病院の外に出られたら大変なんだ」

一方通行「…………」

 一方通行は頭を抱える。

 まさか、あのミサカ3709号に自分の睡眠時間を割かれるなど思ってもいなかったからだ。

一方通行(何処まで世話ァ焼かせンだか……あのガキは……)







 病院内の廊下を歩き回る一方通行。

 ミサカ3709号を早く見つけて、さっさと昼寝したい気持ちでいっぱいだ。

一方通行(ミサカ9423号でも叩き起こして巻き込ンでやろォか……。あいつだけグースカ眠ってるなンざ不公平だろ……)

 そう思いつつミサカ9423号の病室に行こうと思った矢先、ふと病院の窓の外に視線を移した。

 そして見つけた。

 病院の庭で、生い茂る草むらの中をジーッと覗き込んで座っている、ミサカ3709号の姿を。

一方通行「……何やってンだか、あのガキは」

 ミサカ9423号を道連れに出来なかったが、目的の人物が見つかったなら問題ない。

 一方通行は病院の廊下を進み、ミサカ3709号のいる庭へと向かった。
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