スマイルプリキュア♪ Final End♪

□取り戻せ! 奪われた未来とウルトラハッピー!
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 世界から未来が奪われた。

 それを聞いて、一体どんな状況を思い浮かべるだろうか?





 日野あかねは走っていた。

 お好み焼き屋“あかね”の前まで辿り着き、慌ただしく店内へと駆け込む。

日野あかね「ーーーッ!?」

 目の前に広がった光景を見て、あかねは一瞬、ここが博物館か美術館などの“展示品”が飾ってある場所と錯覚した。

 目を見開いたまま、文字通り“ピクリとも動かない状態”の家族が、ちょうど店の外へ出ようとしていた瞬間のまま、硬直していた。

日野あかね「……うそ…やろ…」

 フラフラする足取りで思わず店の外に出てしまったあかねは、更に追い打ちをかける事態に気付く。

日野あかね「……あ…ッ…ぁぁ……ッ」

 店のすぐ近く。

 おそらく自宅からここまで走ってきたらしき様子で、地面を蹴って走っている“途中”のブライアンを見つけた。

 その視線は空を凝視しており、誰を見ていたのかは考えるまでもない。

日野あかね「ブライアン……」

 彼は何も言わない。

 恋人を心配し、駆け付けずにはいられなかった彼は走り出し、そして到着する前に未来は失われた。

 地面を蹴って、片足だけで不自然に硬直したまま、ブライアンは時を止めてしまっていた。





 未来を失う、とは、時が進まなくなる、ということ。

 未来を奪われたこの世界から、時と呼ばれる概念は消失した。

 時計の秒針は例外なく停止し、草木も水面もガチガチに固まる。

 人々までマネキンのように硬直し、心臓の鼓動さえも止め、0秒の瞬間を永遠に生き続けることになった。

 死んだわけではないが、生きているわけでもない。

 ピーターパンが始めたゲームは、プリキュア勢力を除いて、世界から未来を奪い尽くすこと。

 その勝負に負けてしまった人間界は、今では文字通りの“時のない世界(ネバーランド)”として、悲しみに満ちた味気ない世界へと変わり果ててしまった。





 そして、その事実を誰よりも重く意識している少女がいる。

星空みゆき「…………」

 みゆきの目の前には、机の下に隠れ、そこから窓の外へと視線を向ける母親の姿。

星空みゆき「………ただ、いま…」

 返事はない。顔を向けることもない。ピクリと微動だにすることもない。

星空みゆき「………………」

 涙が溢れた。

 この結末を生んだのは自分だ。

 こんな世界を作り上げてしまったのは自分だ。

 後悔の念はみゆきの胸の内を圧迫させる。

 膝から崩れて床に座り込み、母の育代へと手を伸ばす。

 温かいが、何故か虚しくて、とても冷たい。

 揺さぶりをかけても反応を返さず、育代の時間は生きながらにして永遠に止まっている。

星空みゆき「ごめん……ごめん、なさい…。わたしの……せい、で………ッ」

 背後からバタバタと足音が聞こえる。

 自分の家族たちの様子を見に行った皆が帰ってきたのだ。

 皆に合わせる顔がないと思い至ったみゆきは、震える足に鞭打って、あちこちに体をぶつけながら階段を駆け上がり、そのまま自分の部屋へと逃げ込む。

 後ろでは皆が自分の名前を呼ぶけど、その声に耳を貸せない。

 貸したらいけないような気がして耳を塞いだ。

星空みゆき「(わたしのせいだッ!! わたしが……ッ。わたしが……ッ!)」

 ベッドに飛び込んで掛布団の中に潜る。

 震えっぱなしの自分の肩を抱きしめて身を強張らせていると、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

 誰かが名前を呼んでいる。

 あかねちゃん? ウルフルン? それとも他の誰か?

 でも、誰だろうと関係なくみゆきは無言無視を決め込む。

 自分が惨めに思えて、情けなくて、申し訳なくて、信じられなくて、もうどうしたらいいのか分からなくて。

 みゆきは静かに泣いていた。







 ピーターパンは、人間界とネバーランドの狭間に存在していた。

 どちらかと言えば人間界の方が近い。

 空にポッカリと開いた歪みの穴の中から、静止した人間界の様子を見下している現状なのだ。

ティンカーベル「ネバーランドに戻らず、人間界にも踏み出さず。次は何を始める気?」

ピーターパン「どうしようかな〜♪ まさか、みゆきちゃんがお手伝いしてくれるなんて思ってもいなかったからさ〜」

 世界の未来を賭けた勝負は、みゆきの失態でピーターパンたちネバーランド勢力の背中を押す結果を生み、この事態が発生した。

 さすがのピーターパンも予想外の事態には対応が追い付かず、今現在に至っている。

マッチ売り「とりあえず、七色ヶ丘に向けて出発中の絵本の住人たちは?」

王子様「あぁ、そう言えば住人たちは今どちらに?」

末っ子ブタ「七色ヶ丘市の隣市みたいだブッヒィ〜。あと三十分も経たない内に、七色ヶ丘に踏み込むブッヒィ」

 ピーターパンたちの後ろで会話していた三幹部の言葉に、パチンッ、とピーターパンは指を鳴らす。

ピーターパン「そんじゃ! まずはそのイベントを見届けよっか♪ みゆきちゃんも、その他のプリキュア勢力も、どんなショーを見せてくれるのか楽しみだなぁ〜♪」
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