スマイルプリキュア♪ Final End♪

□智司の手紙 仲間の力とハッピースマイル!
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 ウルフルンたちはみゆきを見捨ててなどいない。

 みゆきたちの命を狙って七色ヶ丘市に迫ってきている絵本の住人たちを足止めするために、体を張って出陣していったのだ。

星空みゆき「ウルフルン……」

日野あかね『みんな、みゆきのこと思って動いてくれてんねんッ。せやのに、当人のみゆきがこんな状態でどないすんねん! やるべきことがあるやろ!! 行くべき場所があるやろ!!』

 扉の向こうから聞こえるあかねの叫びを、みゆきは黙って聞いていた。

 ところどころに嗚咽が混じり、あかねも涙して訴えてきていることが声で伝わってくる。

 あかねだってウルフルンたちと同じ気持ちだ。

 みゆきのことが大好きで、仲間としても友達としても大好きで、こんな状態のみゆきが心配で、励ましたくて、その声が一方的にしか伝わらない今に怒りを表した。

 こんなに弱気なみゆきは見ていたくない。

 いつも元気いっぱいで、ウルトラハッピーを主張して笑顔を振りまいていたみゆきが、ここにいるみんなが大好きな“星空みゆき”という女の子なのだから。

星空みゆき「…みん、な……ッ…」

 カサッ、と握りしめていた埃まみれの手紙が音を立てる。

 手元に視線を向けると、みゆきの滴った涙で埃が滲み、自然と折りたたまれていた手紙がフワッと開かれて文面が表になる。

 長らく読んでいなかった。

 読み返したくない理由があって、本棚の上に追いやってしまった。

 今は亡き叔父、星空智司の最期の手紙。

星空みゆき「ニィニィ……」

 みゆきは、今一度だけ手紙に目を通していく。

 そこに書き綴られていたのは、智司がみゆきに残した思いの形と、忘れてほしくない事柄の全てだった。







 七色ヶ丘市と隣市の境。

 ウルフルンたちは三百人もの絵本の住人を相手に、相対する戦いを繰り広げていた。

ウルフルン「うぉらぁぁぁあああああ!!!!」

 腕を振るい、脚を振るい、時には爪や牙を用いて。

 次々と絵本の住人たちを蹴散らしていく。

アカオーニ「鬼に金棒オニッ!」

 アスファルトの地面を叩き砕き、その残骸を野球ボールのようにして金棒で打ち放っていく。

 主に空を飛んでいる絵本の住人たちに向けて放たれたそれらは、そのほとんど全てが命中していた。

マジョリーナ「逃がさないだわさぁ!」

 また、ウルフルンやアカオーニが倒し損ねた絵本の住人たちはマジョリーナが引き受ける。

 水晶玉から発する魔法で撃退し、小さな体を活かして俊敏に戦場を駆け抜けていた。

ジョーカー「おやすみの時間です。アナタ方は不思議図書館に戻るのですよ……♪」

 仕上げに、ジョーカーは三幹部たちが倒していった絵本の住人たちを元の絵本の姿に浄化していく。

 かつて一度マッチ売りの少女を絵本へと戻したみゆきの力を参考に編み出した能力だが、オリジナルのみゆきの力と大きく異なる点が一つ。

ウルフルン「ったく! 思いっきり弱らせねぇと浄化できねぇってのは、もうオレたちを試してるとしか思えねぇんだが!?」

ジョーカー「では、そういう解釈で頑張ってください♪ それとも、三百人を相手にするのは厳しいのですかぁ〜?」

アカオーニ「そんなわけがないオニ! 三百人全員、俺様が倒しちゃうオニ!」

マジョリーナ「あたしだって負けないだわさ!」

 ウルフルンとアカオーニが前線に立って絵本の住人たちを蹴散らし、倒し切れなかった者たちはマジョリーナが一人残らず受け付ける。

 三幹部の猛攻によって弱らされた住人たちは、ジョーカーが責任を持って絵本の姿へと還していった。

ジョーカー「さてさて、ネバーランドのみなさん? アナタ方の用意した部下たちがワタシたちの手元に返ってくるのも時間の問題ですよ?」

マッチ売り「……」

王子様「むぅ…」

末っ子ブタ「ブッヒィ…ッ」

 ネバーランドの三幹部も、元々は不思議図書館の絵本の住人。

 彼らが絵本へと戻ってしまう時間も、目に見えて迫ってきているようだった。

ジョーカー「アナタ方が帰るべき場所はネバーランドではありません。大人しく不思議図書館の本棚へと、戻っていただくとしましょうか……んふふふ♪」

 三幹部とジョーカーの戦闘を見て、マッチ売りの少女はクルッと背を向けた。

王子様「逃げるのですか?」

マッチ売り「まさか。ちょっと交渉に行くだけよ。この場は任せるわ」

末っ子ブタ「交渉、って何だブッヒィ〜……?」

 末っ子ブタの質問に答えることなく、空高く浮上したマッチ売りの少女は、今も戦闘を見物中だったピーターパンとティンカーベルの眼前に現れる。

ピーターパン「どしたの〜?」

マッチ売り「少し戦力が欲しいの。生き残った異世界人を何人か貸して」

ティンカーベル「クスクスクス♪ 随分と強気ね? そんなに絵本に戻るのは嫌ぁ?」

マッチ売り「………私の、この世界に対する恨みと怒りは…まだ何も晴らせてないわ…」

 マッチ売りの少女の思いを汲んだのか、ピーターパンは少しだけ真面目に検討してくれた様子を見せた。

ピーターパン「う〜ん……そうだねぇ………」

マッチ売り「………」

ピーターパン「…よしッ、分かった! じゃあティンカーベル。手頃な異世界人を五人ほど連れてきてよ♪ あぁッ、あんまし強いのはダメだよ? 後のお楽しみにも残しておきたいからさ♪」

ティンカーベル「クスクスクス♪ 了解。ちょっと呼びかけてくるわね」

 ティンカーベルが、歪みの向こう側へと姿を消す。

 あの殺し合いから生き残った異世界人の投下が、マッチ売りの少女の決断によって始まろうとしていた。
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