スマイルプリキュア♪ Final End♪
□キュアハッピー復活! 絵本の住人と異世界人
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絵本の住人に加えて、異世界人が投下された。
しかしウルフルンたちのやるべきことに変わりはなく、今まで通りの戦闘が続いていく。
絵本の住人たちを浄化させ、絵本の姿に戻していく作業を続けながら、既に二人ほど異世界人を打ち倒すことにも成功していた。
この調子なら投下された異世界人程度なら倒せるかもしれない、と思っていた矢先のこと。
ウルフルンたちの鼓膜をダイレクトに揺さぶるような、聴覚そのものにダメージを与えるギターの音色が響き渡る。
ウルフルン「ーーーぐ、ぁああッ!! うるっせぇッ!!」
しかし、苦しんでいるのはウルフルンたちプリキュア勢力側のみで、ネバーランド勢力側の三幹部や絵本の住人たちは平然としている。
全ての元凶は、ギターを弾き鳴らす異形の姿をした異世界人だった。
その頭と胴体は、セミという昆虫。
だが胴から伸びる六本の手足は、キリギリスという昆虫。
二種類の異なる昆虫が混ざり合った姿の怪物、セミギリスは陽気にギターの演奏を続けていく。
セミギリス「ハーハーハーハーッハーッ!! ドゥですかぁ? ミーの奏でるギター・ミュージック! ユーたちに耐えられますかぁ!?」
アカオーニ「あがッ!! ぐぅッ……その演奏、やめるオニ!!」
セミギリス「ノーンッ!! ノンノンノンノンノーン!! バァカ言っちゃいけないヨー! この程度じゃミーのソウルは燃えないでーす!!」
セミの胴体を持つセミギリスの背中には、もちろんセミの羽が存在する。
ギターの演奏を続けながら、セミギリスはセミ特有の鳴き声を響かせるために背中の羽を大きく広げたのだった。
セミギリス「ハイハイハーイ! ミュージック・スタート!!」
ジィージジジジジジジジジジッ!!!!!! っと、ただでさえ騒音だったギター演奏に加えてセミの羽音も合わさり、いよいよウルフルンたちは耳を塞ぐだけで精一杯になる。
元凶のセミギリスを倒したくても、音がデカすぎて近付くことも出来ない。
だが……。
ジョーカー「……近付くことが…、出来ないなら…ッ」
マジョリーナ「…ここから先は……、あたしたちの出番だわさ…ッ!!」
セミギリスの音響攻撃を受けないのはネバーランド勢力のみで、もちろんマジョリーナたちも騒音による聴覚ダメージを受け続けている。
だがウルフルンとアカオーニの二人とは異なり、マジョリーナとジョーカーの二人は遠距離攻撃の手段を残していた。
ジョーカー「あの異形な異世界人を仕留めます……ッ。手加減など不要ですよ?」
マジョリーナ「ふん、最初から加減する気なんてないだわさ……!」
言うが早いが、ジョーカーが持ち前のトランプを手裏剣のように投げ放ち、マジョリーナは水晶玉から魔法を撃ち放つ。
双方の攻撃がセミギリスへと届くかと思われた……その瞬間。
投げ放ったトランプは一枚残らず、ネバーランド勢力側から放たれた弓矢に仕留められる。
マジョリーナが撃ち放った魔法も、何十本と一斉に放たれた矢の嵐によって相殺された。
マジョリーナ「ーーーなッ!!?」
ジョーカー「……全て…仕留められた…!?」
絶えずに続くセミギリスの音響攻撃に耳を塞ぎながら、ジョーカーは矢の飛来した方向へと視線を向ける。
そこには、スラッとした体つきと長い髪を持つ、北欧系の顔立ちをした少女が立っていた。
ゴスロリ衣装に身を包む少女は、なかなか良いスタイルをしている割りに身長は低く見える。
そして何よりも目を引くのは、その手に握られていた大きな弓だった。
セミギリス「ナイスアシストですよ、カイル! ミーの演奏、途切れさせるなんてダーイモンダーイ!」
カイル「あなたを助けたわけじゃないよ、セミギリス。僕たちの獲物が自由に動けない状況って、すごく都合がいい。それを持続させるため」
そう言って、カイルと呼ばれた少女は新たに矢を構える。
すると、その矢の先端にボゥッと炎が現出し、燃え盛る矢がウルフルンへと狙いを定める。
カイル「プリキュアと、早く戦ってみたいの……。邪魔だから死んで」
矢が放たれ、一直線に飛んでくる矢がウルフルンの胸へと命中した。
ウルフルン「…熱ッ!! あ……あ、ぁ…?」
だが、思っていた以上のダメージはない。
と思った時、ウルフルンに命中したはずの矢がカランッと音を立てて地面に落ちる。
ウルフルンの胸に命中した矢によるダメージは、少し火傷をした程度で矢じりが突き刺さることすらない。
カイル「………チッ…」
ウルフルン「…何だぁ? この程度かよ…?」
既に異世界を倒してきたウルフルンからすれば、やはり高が知れているのか、と思わせるほどのダメージ。
どうやらカイルの表情を伺う限り、別に手加減したわけでもないらしい。
音だけで行動を阻害してくるセミギリスを除いて、カイルなら何とかなるかもしれない。
そう思ったウルフルンの目の前に、いつの間に接近していたのか別の異世界人がヒョコッと眼下から現れた。
????「にゃっははは〜ん♪ 隙あり隙ありぃ!」
ウルフルン「ーーーッ!!?」
間一髪、後ろへと大きく飛び退いたウルフルンは奇襲を逃れる。
というより、奇襲を仕掛ける前にあんな大声を出されては“逃げてください”と合図しているようなものだ。
カイル「ニーナ。声を出せば気付かれるって、何度言えば分かってくれるの?」
ミルジド「おぉーっと! そう言えばそうだったぁ! また失敗しちゃったよ〜、てへ♪」
カイル「まったく……」
ニーナと呼ばれた異世界人の少女、ミルジド・ニーナはチロッと舌を出して自分の頭にコツンと拳骨を落とす。
だが、そんな仕草に苛立つ余裕などウルフルンにはなかった。
ウルフルン「…な……ぁ………はぁ?」
別に何か攻撃を受けてダメージが伝わったのではない。
ウルフルンが驚愕して声も出せなくなっているには、そのミルジドと呼ばれた少女の姿。
髪は赤かったし、背も高かった。
声も口調も性格も、頭の良し悪しも大きく外れている。
でも、その点以外の見た目の全てが“似ていた”のだ。
ウルフルン「オマエ……何だ、その格好…ッ…」
ミルジド「んん〜? あぁ! そう言えば私の格好って似てるんだよね? ピーターパンもビックリしてたの♪ えーっと……誰だったかな……」
顎に手を当ててウンウンと唸るミルジドを見て、思わず口を開いたのは……マジョリーナだった。
マジョリーナ「……な、お……?」
ミルジド「あー!! それそれ、その子だよ! 緑川なお、って子と似てるんだよね? 私の姿♪」
なおよりも背が高くて、なおと違って赤い髪を持つミルジドは、なおと瓜二つの容姿でピョンピョンと飛び跳ねる。
声も口調も性格も違うのに、イメチェンしただけの緑川なおがそこにいるような錯覚に、ウルフルンたちは襲われていた。