スマイルプリキュア♪ Final End♪
□ウルフルンVSジョーカー!! キュアビューティ 別れの涙
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ピーターパンは虹色の絵の具を作り出し、この世界から未来を奪った。
だが、白紙の絵本をバッドエンド王国から持ち出したのなら、それ以外にも手を伸ばしている可能性も考えられたのではないか?
虹色の絵の具を作ってみせたピーターパンは、絵の具は持っていない、など一言も言っていないのだから。
プリキュアやキャンディ、ウルフルンたちやジョーカーの体から、漆黒のエネルギーがピーターパンの持つ絵本へと吸収されていく。
バッドエナジー。
絶望のエネルギーを秘めるその力は、ピーターパンの改良によって強制的に姿を現していた。
ハッピー「ーーーあ、ぐッ!! あ、がぁぁぁああああああああああああああああああッ!!!!」
ジョーカー「ーーーああ!! あぎッ、ぐぁぁぁあああああああああああああああああッ!!!!」
バッドエナジーが溢れ出していくプリキュア勢力の中で、ハッピーとジョーカーの二人だけは悲鳴を上げる。
世界から未来を奪ってしまった責を感じていたハッピーと、存在そのものが人々の抱える闇であるジョーカー。
この二人から溢れ出す絶望のエネルギーは、他のみんなとは比べ物にならない。
ピーターパン「あぁっははははは!! すっごいじゃん! こんなに濃厚なバッドエナジーが集まっていくなんてぇ〜♪」
ジョーカー「が、ぁぁ!! ぎぃ!! で、ですが……ッ、ここにいる十人程度の、バッドエナジーでは……ッ。あのお方の復活には、到底ッ、足りませんッ!!」
ピーターパン「はぁ〜? そんなのはバッドエンド王国の都合でしょ? 僕が欲してるのはネバーランド勢力に加わる力だけなんだよねぇ♪」
プリキュア勢力からバッドエナジーを吸収した絵本が大きく膨らんでいく。
ブクブクブクと気味の悪い音を立てながら“悪の皇帝”の姿を形成していった。
ピーターパン「確かに、ここにいるプリキュア勢力だけのバッドエナジーは少ないよ? でも僕にとってはそれで結構♪ さぁ! 今こそ再臨せよ!!」
ピーターパン「“悪の皇帝”ピエーロのぉッ!! 復活の瞬間だぁぁぁあああああッ!!!!」
ピーターパンが力強く宣言すると同時に、悪の皇帝ピエーロはその姿を復活させた。
だが復活に費やしたバッドエナジーが少なかったせいか、もしくはピーターパンの介入によって何らかの不祥事が発生したのか。
その姿は完全復活時のものと比べて明らかに小さく、アカオーニと同程度の巨体で落ち着いていた。
ピエーロ「……ぅ…む…?」
ピーターパン「おはよう、ピエーロ♪ 復活した気分はどう?」
ピエーロ「………悪くはない…」
その見た目や仕草からは、以前ほどの力は感じられないものの、既に大方の状況把握は出来ているらしい。
バッドエンド空間を発生させ、皇帝復活のためのバッドエナジーが集められた時から、ピエーロの意識は覚醒に向かっていたのかもしれない。
つまり、ピーターパンの率いるネバーランド勢力の一員として、プリキュアと敵対していた以前の意識と記憶をそのままに、今こうして復活を遂げてしまったのだ。
ピーターパン「改めて歓迎するよ。ネバーランドへようこそ、皇帝ピエーロ♪」
ピエーロ「ふん……まぁ、今の世界を見れば、バッドエンド王国とネバーランドの勢力の差は見て取れる……。ここは貴様に従うとしよう……」
ピーターパン「あっはは〜♪ 物分かりが良くて僕も嬉しいよ♪」
プリキュア勢力の面々は唖然とする他に反応は見せられない。
悪夢だった。
あの皇帝ピエーロが、姿も力も以前と比べて衰えているとは言え、ネバーランド勢力の一員として加わってしまうなど誰が予想していただろうか。
ピーターパン「あぁ! そうだそうだ!! ねぇねぇ、ピエーロ♪ 君だって専属の部下が欲しいよねぇ?」
ピエーロ「むぅ?」
ピーターパン「でもごめんね。実は今、ネバーランド勢力でピエーロが自由に扱える駒って、正直いないんだよねぇ〜。僕は異世界人を指揮する立場だし〜、ティンカーベルには三幹部がいるしぃ〜、四天王には自由な戦闘を約束しちゃったからさ〜…………チラッ♪」
ジョーカー「ーーーッ!?」
ピエーロ「……なるほど」
ピーターパンのワザとらしい目配せを受けたのは、プリキュア勢力のジョーカー。
その視線で全てを理解したピエーロは、上空に立つピーターパンの傍らから動かないままジョーカーに話しかける。
ピエーロ「久しいな、ジョーカー」
ジョーカー「…ぴ、ピエーロ…様……ッ」
ピエーロ「この世界を再びバッドエンドに染めようと思うのだが、生憎と兵力が必要だ。我の手足となりて、再び付き従う気はあるか…?」
ジョーカー「…………」
ピエーロは、上空に立ったまま静かに右手を差し伸べた。
ピエーロ「今一度、我と共に歩む気はあるか…? 答えよ、ジョーカー」
ジョーカー「………」
ピーターパンは、ピエーロを通じてジョーカーの勧誘を企んだ。
ネバーランド勢力を増員させるだけでなく、プリキュア勢力を減員させて弱体化させる。
どこまでも尽きることのない悪知恵に、ピーターパン本人が気持ちの悪い笑みを浮かべて状況を眺めていた。
ピエーロ「答えよ、ジョーカー。我と共に来い。それとも……そこにいるプリキュアに力を貸し、我と敵対する選択を手にするのか?」
ジョーカー「……」
ピエーロの問いに、やがてジョーカーは答えた。
その片膝を崩し、忠誠の意思を持って頭を下げる行為と共に。
ジョーカー「御意に…。皇帝ピエーロ様の仰せのままに………」
プリキュア「「「ーーーッ!!?」」」
ジョーカーは、ピエーロの下に就く選択をした。
それ即ち、ピーターパンの部下となってしまったピエーロの配下として、ジョーカーはネバーランド勢力に加わることとなる。
ビューティ「…ジョー…カー……?」
ジョーカー「…」
信じられないものを見るような視線を向けるビューティを無視し、ジョーカーは静かに浮上した。
向かう先は当然ながら、ピエーロの傍らであり、ピーターパンの率いるネバーランド勢力の中だった。