スマイルプリキュア♪ Final End♪

□託された真実! いざッネバーランドへ!
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 ネバーランド、ピーターパンの城。

 少し広めの客室にて、ピーターパンはピエーロとジェスターの歓迎会を開いていた。

ピーターパン「ネバーランドの主戦力! 新たな仲間にッ、かんぱーいッ!!」

 ピーターパンがグラスを掲げ、集められた皆もグラスを合わせて乾杯する。

 乾杯も早々に、ネバーランドの三幹部は客室の中央に置かれた大きな丸テーブルへと飛びかかる。

 と言うのも、そのテーブルの上には所狭しと見た目からして食欲をそそる料理が並べられていたのだ。

 先ほどの初戦でプリキュアと対決していた三幹部は、空腹で仕方がなかったらしい。

マッチ売り「いただきますッ」

王子様「あっはは! これはッ、何と美味な…ッ」

末っ子ブタ「最高だブッヒィ〜♪」

ティンカーベル「まったく……。何人とも、もう少し落ち着けないのかしら…」

ピーターパン「今日限りは無礼講ってことで、許してあげなよ♪ ティンカーベル…………それにしても……」

 ピーターパンは、客室の一角を見据える。

 そこには、ネバーランド勢力の中でも自由な戦闘を任された異世界人“四天王”も招待されていたのだが。

ピーターパン「ファン。君一人だけ?」

ファン「いいや、もう一人来ているぞ」

 大きなフライドチキンに食らい付きながら、ファンはクイクイッと部屋の隅を指差した。

 そこには、大きなお皿を片手に持ったまま、あらゆる料理を取り分けて回っている、まだ16歳の少女がいた。

 長い黒髪を持つ細身の彼女は、どういうわけか歩くたびに“ガチャガチャ”という無機質な足音を立てている。

ピーターパン「やぁ、リーナ。えーっと…………結局、君たち二人だけなの? 他の二人はどうしたのかな?」

 リーナと呼ばれた異世界人の少女にして、四天王の一人に選ばれた彼女“リーナ・スカーレット”は片手に持つ大皿の上にデザートを乗せた後で説明した。

リーナ「あとの二人は欠席とのことです。ピーターパンさんから与えられた部屋に入って、何か自主的な作業に没頭している様子でしたよ」

ピーターパン「ん〜、そっか。ざーんねん♪ せっかく新しい仲間が増えたのにな〜♪」

 そう言いながらクルクルクルと回転しつつ客室の中を動き回ったピーターパンが、ピタッ、とピエーロとジェスターの前で停止する。

ピーターパン「ね? そうでしょ、二人とも♪」

ピエーロ「ふむ…まだネバーランドには馴染めていないが、それも時間の問題だろう」

ジェスター「右に同じくです」

ピーターパン「そっか。まぁ、ゆっくりしていってよん♪ んっふふ〜ん♪」

 ピーターパンが二人から離れていった瞬間を見計らい、ピエーロはジェスターに耳打ちする。

ピエーロ「(ジェスター、どうしたのだ?)」

ジェスター「(……と、申しますと?)」

ピエーロ「(以前ならば、このような催し物には進んで参加していただろう? 何か気にかかることでもあるのか?)」

ジェスター「(…………)」

 ピエーロに指摘された時、不意に脳裏に浮かんだのは愛しい少女が泣き叫ぶ姿。

 あの姿を目の当たりにしておきながら、背を向けてきた自分の行動をグッと堪えて、ジェスターは今までと同じ様子で返答する。

ジェスター「(………いえ、おそらく…まだネバーランドに馴染めていないせいです。お気になさらずとも問題はありません……)」

ピエーロ「(そうか…? なら良いのだが…)」

 ピエーロの反応を確認するまでもなく、ジェスターはピーターパンから持て成された飲み物をグイッと飲み干して誤魔化した。

 その様子を見てピーターパンが不敵に微笑んだ瞬間……ピーターパンの城内部に設置していた警報が勢いよく鳴り響く。

ティンカーベル「……ッ!? 何があったの?」

 ティンカーベルの問いに答えるように、客室に設けていたスピーカーから警備を任せていた異世界人男性の声が聞こえる。

警備の男『侵入者です!! このネバーランドに、複数人の侵入者が攻め込んできました!! 捉えた容姿の視認情報より、プリキュア勢力の妖精たちかと思われます!!』

 ウルフルンたちが、ピーターパンを追ってネバーランドに到着したらしい。

 確かに耳を澄ませてみれば、城の外で何かが暴れまわているような騒がしさが聞こえてくる。

末っ子ブタ「あ〜ぁ〜、せっかくの歓迎会が台無しブッヒィ〜」

ピーターパン「元気があって良いことじゃないの♪ 少なくとも、僕を退屈させる気はないみたいで嬉しいなぁ〜」

 パチンッ!! と指を鳴らしたピーターパンは、ティンカーベルたちを通じて異世界人たちにウルフルンの迎撃を指示した。

 その様子を、ただ黙って見送るジェスターの心境は……まだ誰にも分からない。

ジェスター「…………」







 ウルフルンたちに先陣を任せ、人間界に残っていたプリキュアたち。

 変身を解除し、一先ず星空家に戻って来たみゆきたちは、今のテーブルに伏せっているれいかを見て何も言えずにいた。

 先ほどはみゆきが塞ぎ込んでいたが、今度はれいかが塞ぎ込む番だった。

星空みゆき「れいかちゃん…」

緑川なお「れいか……」

 ウルフルンたちのことも気になるため、早くネバーランドに行くべきなのだが、この状態で赴いたとしても戦闘に意識を向けられないだろう。

 最悪の場合、敵となってしまったジョーカーと本気の戦いを繰り広げなくてはならないのだ。

 そう思っていた矢先、タイミングを計ったかのように、れいかがゆっくりと顔を上げた。

日野あかね「あ! れいか…ッ」

黄瀬やよい「れいかちゃん、大丈夫……?」

青木れいか「……みなさん…ご心配をおかけしました……。わたしとしたことが、取り乱してしまって…」

 あんなに大口を開けて咽び泣くれいかなど初めて見た。

 今でこそ泣き止んではいるが、その目元は赤く腫れ上がり、見るからに痛々しいほどの悲しみを表している。

キャンディ「…れいあぁ………」

 何と声をかけるべきかと思っていたところ、更なる展開がみゆきたちの前に現れる。



 メルヘンランドより飛来した絵本が、窓の向こうから星空家の中へと飛び込んできたのだった。
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