スマイルプリキュア♪ Final End♪

□進め! “永遠迷宮(ネバーエンディングストーリー)”!!
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 ネバーランド、ピーターパンの城。

 とある一室から外の風景を眺めていたジェスターは、慌ただしくなっていく城内の様子に耳を傾ける。

ジェスター「(ウルフルンさんたちが城の中へと侵入したようですが……、あのピーターパンが見過ごすとは思えません……。何かを企んでいる可能性が…?)」

 そのまま窓の外を見渡してみると、ウルフルンたちの相手をするために駆り出されたはずの異世界人たちの姿は、ほとんど見当たらない。

 あっさり倒されてしまった可能性は否定できないが、確立としては低過ぎるだろう。

ジェスター「(ウルフルンさんたちは、ほぼ戦わずして城の中に入ることが出来た。そう考えておくのが妥当ですが、一体何の意味が……)」

ティンカーベル「あら、そんなところで何をしているの?」

ジェスター「…………」

 ウルフルンたちが城内の何処かで暴れているかもしない中で、ティンカーベルは窓辺に立つジェスターへと自然に声をかけてきた。

 その様子からは、今の状況に反して明らかな余裕が見て取れる。

ジェスター「……別に何も。ただ外の様子を見ていただけです」

ティンカーベル「クスクスクス。ひょっとして、恋人さんのことでも思い出していたのかしら? たった一言で別れを告げるほどなら、未練などないと思っていたけど」

ジェスター「…………」

 正直なところ、ジェスターはティンカーベルの指摘に呆れた。

 れいかのことが気になるのか、という問いには百歩譲って頷けるが、重要なのはその後だ。

 あの“一言の別れ”に秘めた真実に気付いていません、と明かしてくれたようなものなのだから。

ジェスター「(…まぁ、気付かれていないのならワタシとしても動き易いですがね♪ 問題は…、この件がれいかさんたちにも伝わっているのかどうか……)」

 もしも目の前のティンカーベルと同様に、れいかたちもジェスターの“一言の別れ”の意味に気付いていなかったら。

 ネバーランド勢力の穴を見つけ、プリキュア勢力に陰ながら助力する役目となるジェスターの目論見は、達成までの道のりが非常に困難となる。

ジェスター「(とにかく、今は手紙を託しておいたポップさんを信じるしかありませんね……。それまでワタシも目立つ行動を控えなくては……)」

 ジェスターが今後のネバーランド勢力内での行動を改めて確認していた、その時。



 ピーターパンの城中に、先ほどと同じような警報が鳴り響いた。



ジェスター「ーーーッ」

ティンカーベル「また侵入者……。クス♪ 誰がネバーランドに入って来たのか、なーんて調べるまでもなさそうね……♪」

 ジェスターは内心ホッとしていた。

 そのことを自覚して、何とも言い難いムズ痒さを抱いてしまう。

ジェスター「(……かつては…バッドエンド王国に身を置いて、プリキュアと敵対していた立場だったはずが……。これほどまで安心感を与えてくれる彼女たちの存在は…一体何なのでしょうね…。んふふ…)」

 今後もジェスターは、しばらくネバーランド勢力の一員を“演じる”ことになる。

 でも絶望ない。

 何故なら、このネバーランドに“彼女たち”が来てくれたから。

 存在そのものが闇であるジェスターの心でさえも明るく照らし出す、彼女たちの存在がジェスターを前へと進ませていった。



 間もなくして、城内に設置されたスピーカーより……プリキュアたちがネバーランドに侵入してきた、との情報が流される。



 そのことに喜びを感じているジェスターは、感情を表に出そうとせず、あくまでも今はネバーランド勢力の一員として行動を始めたのだった。







 一方、ネバーランドに到着したプリキュアたちは予想外の事態に陥っていた。

 この世界の地に足を踏み出した瞬間、辺りの情景が一気に歪みだし、建物という建物の全てがユラユラと揺らぎ蠢き出したのだ。

サニー「な、何やッ、これ!?」

ピース「あぁ!! 周りの浮島もッ」

 ネバーランドは、上下前後左右の四方八方に空が広がっており、地平線が存在しない。

 “空”だけが広がる空間の中心に本島とされる大きな島が存在し、その周りを十個ほどの小さな浮島が旋回している。

 それが、プリキュアたちの知る今までのネバーランドの姿。

 それが今、大きく姿形を変えようとしていた。

 十個ほどの浮島は全て本島に呑み込まれていくように吸い寄せられ、その姿を次々と消失させていく。

 本島に広がっていた賑やかな城下町も、丸ごと地面に吸い込まれていくように姿を消していった。

 その光景を見て、ハッピーは真っ先に常冬の浮島で出会ったドレスの少女のことを思い出す。

ハッピー「(あんな風に浮島がなくなっちゃって……ッ、あの子は無事なの!? それに城下町にいたネバーランドの住人たちは!! みんな……何処に行っちゃったの……ッ)」

 声にならない疑問を繰り返しても、答えなど出るはずもない。

 仮に声に出していたとしても、その疑問は解決しなかっただろう。

マーチ「…ッ!? みんな気を付けて!! 城下町があった場所から、何か出てくる!!」

ビューティ「こ、これは……ッ、一体…ッ!?」

 更に本島の動きは治まることを知らず、全ての浮島と城下町を呑み込み終えた瞬間に、石や樹木で形作られた装飾豊かな“壁”が地中から伸びてくる。

 右へ左へと入り巡る形で姿を現した壁は、まるで迷路のようなフィールドを作り上げてプリキュアたちの前にズラリと並んだ。

 唖然とするプリキュアたちの前には、迷路に繋がる三つの入り口。

 見るからに複雑な迷路は、城下町……今で言うところの迷路の先にあるピーターパンの城までの道のりを盛大に惑わせてくれた。

キャンディ「これ…迷路クル…?」

サニー「三つの入り口から一つを選んで、城まで辿り着け……っちゅーことか?」

 サニーの疑問に、予想していなかった人物の声が答えてくれた。



ピーターパン『それじゃあ50ってーん!! 目的は正解だったけど、もうちょっと面白味のある回答を提示してよ、キュアサニー♪』



 迷路の遥か先……おそらくピーターパンの城がある方面より、まさかのピーターパン本人がスピーカー越しに返答してきたのだった。
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