スマイルプリキュア♪ Final End♪
□キュアハッピー死す! ネバーランド勢力 大集結!!
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ピーターパンの城、最上階。
自分の部屋でゆったりと寛いでいたピーターパンは、閉じていた瞼をゆっくりと開いて天井を見上げる。
その瞬間、予想外の事態に慌てた様子のティンカーベルがピーターパンの許へと駆け込んできた。
ティンカーベル「ーーーピーターパンッ!!」
ピーターパン「ぅひゃぃッ!!? ぅあ〜……、ビックリしたぁ……。急に大声出さないでよ〜」
素っ頓狂な声を上げたピーターパンなど構わずに、ティンカーベルは先ほど城の出入口付近で起きた戦況の結果を一言で報告する。
ティンカーベル「……キュアハッピーが…、殺されたわ…」
ピーターパン「…………」
ハーメルンの能力で操られたウルフルンの手によって、ハッピーはその一生に終止符を打った。
その事実を聞いたピーターパンは……。
ピーターパン「そっか」
と、一言で片付ける。
ティンカーベル「……え?」
ピーターパン「いや〜、意外にも早かったねぇ〜。キュアハッピーならもうちょっと頑張ってくれるかなぁ〜、って思ってたけど……まぁこんなもんなのかな♪」
当然と言えば当然なのかもしれない。
だってピーターパンは、元々プリキュアを殺すために活動してきたのだから、その相手が命を落としたと聞いて変に動揺する方がおかしい。
だが、これではあまりにも拍子抜けだ。
ティンカーベル「…それだけ……? もっと、何か反応があるんじゃ…」
ピーターパン「んん? 何でぇ?」
ティンカーベル「何で、って……」
ピーターパン「“そんなこと”よりさぁ〜。もっと重大なことがあるんじゃないのぉ〜?」
ハッピーの死を“そんなこと”と一蹴して話題を切り替えてしまうピーターパン。
彼なら、もっとプリキュアに……その中でもキュアハッピーには何処か固執する面があった気がしたのだが、気のせいだったのだろうか?
ティンカーベル「もっと…重要なこと…?」
ピーターパン「そうそう♪ とりあえず、僕は大広間に向かうよ。全員そこに集合ね〜。三幹部と四天王と、ピエーロとジェスターを集めてきてよ♪」
ティンカーベル「……分かったわ」
何故かモヤモヤの晴れないティンカーベルを差し置いて、ピーターパンは部屋を出ていき、そのまま大広間へと向かっていった。
ハッピーの肌から血の気がなくなり、既に青白く染まっていく。
キラキラと輝いていたはずの瞳からも一切の光が失われ、体温もなくなった体は氷のように冷たくなっていく。
首元が大きく抉れたハッピーを腕に抱えて、呆然とするウルフルンは、ただただ目の前の現実を受け入れられない。
誰がハッピーを殺した?
操られていたとはいえ、その結末に導いたのはウルフルンだ。
ウルフルン「あ…ぁ、ぁ…ッ」
そんなウルフルンの横顔に、炎をまとった拳の一撃が容赦ない勢いで襲い掛かる。
ウルフルン「ーーーうぼぁッ!!」
サニー「ーーーウルフルンッ!!!! あんたッ、ホンマに何してんねんッ!!」
サニーの一撃に対応できなかったウルフルンの体は易々と殴り飛ばされ、無様に転げまわって仰向けに倒れる。
そんなウルフルンの体に馬乗りになったサニーは、再び拳を握りしめて容赦なく殴り掛かる。
サニー「何でやッ!! 何であんたがハッピーをッ!! 平和ボケして気でも触れたんかぁ!!? あぁんッ!!」
ウルフルン「…………ッ」
サニーの打撃と罵声を、ウルフルンは一切の抵抗も見せずに受け入れる。
ウルフルンがハーメルンに操られていたことを知らないサニーの責めは、第三者から見れば正当に映らないかもしれないが、重要なのはそこではない。
例え意図も意思もなかったとしても、ウルフルンがハッピーに手を上げてしまった。
そのことが、サニーにはどうしても許せなかったのだ。
サニー「何で…ウルフルンなんや……ッ!! 何、で…ぅぐッ!! ごふッ!! げっほッ!!」
先の戦いで胃を潰されたサニーの体内から吐き気が込み上げ、ウルフルンの体の上で盛大に吐血する。
咄嗟に手で口を押さえたものの、腹部に広がる激痛も酷く、そろそろ体に限界が近付いていた。
このままではサニーまで死んでしまいそうな勢いで。
ビューティ「サニー…、少し落ち着いてください…」
サニー「落ち着け、って……ッ。こんな状況で落ち着けるかッ!! ハッピーが…ッ、ハッピーがぁッ!!」
歩み寄ってきたビューティに視線を向けたサニーは、思わずハッとしてしまったかもしれない。
ビューティの声色は今まで通りだったが、その表情は異なっていた。
平常心を持とうとしても、ビューティの瞳から溢れる涙は止まることを知らず、その両肩も握りしめられた拳も、ワナワナと震えたまま止まらずにいる。
ビューティ「気持ちは…みんな同じです…。だから、お願いします…。落ち着いてください…」
サニー「…ぁ……」
ビューティ「このままでは、ハッピーに続いて……。あなたまで…」
ビューティの背後にて、横たわるハッピーに飛びついて泣きじゃくるキャンディとピースがいた。
その光景は、もう変えられない一つの事実を物語っている。
キュアハッピーが死んだ。
改めて認識した瞬間、ついにサニーも両手で顔を覆って静かに泣き崩れてしまった。
泣き喚くプリキュア勢力の様子を、離れた場所からハーメルンが観察する。
元々、仲間割れを目的とした戦略を立てていたハーメルンにとって、この状況はチャンス以外の何ものでもない。
ハーメルン「さて…踊っていただくとしましょうか…。わたくしの力の前に、あらゆる感情は妨げになり得ません…」
強固な意志を持っていようと、それが生き物であるならばハーメルンの制御下に置かれてしまう。
例え命を持たない無機物であろうとも、生き物の姿形をしているならば支配下に置くことができるハーメルンの力は絶大。
このまま一度でも笛を吹き鳴らせば、プリキュア勢力の殺し合いという滑稽な結末を迎えさせることが可能なのだ。
ハーメルン「……四天王の出番など不要です。ここでわたくしが幕を下ろすと致しましょう」
みゆ眠「ほぉ? ではここで出しゃばっておくとするか」
ドズッ!! とハーメルンの背中に銀色の刃が勢いよく突き刺さり、その胴体を易々と貫通した。
ハーメルン「…あ……は、ぁ…?」
顔だけ振り返ってみれば、そこにいたのは四天王の一人である博士が浮かべる怒りの形相。
みゆ眠博士「見放していたのは失敗だったよ……。まさか、俺の計画をこんな形で破綻させるとはね……」
ハーメルンの背中から刃を引き抜いた博士は、床に崩れていく彼を一瞥してプリキュア勢力の方に視線を向ける。
と、その時。
ティンカーベル「あなたも勝手なことをしてくれたわね。四天王と言えども、同じ勢力下の異世界人に手を上げるなんて」
みゆ眠博士「一部始終を見ていて止めに入らなかった時点で、君も同罪だよ」
博士の背後に現れたティンカーベルは、ピーターパンからの集合命令を告げる。
ティンカーベル「大広間に来なさい。ピーターパンから話があるそうよ」
みゆ眠博士「……やれやれ…、何の話題か見え透いてるせいで気が滅入ってしまうよ…」
白衣に飛び散ったハーメルンの返り血を見つけて舌打ちしつつ、博士はティンカーベルと共に大広間へと向かっていった。