信約 SRP:妹達共鳴計画

□Report.01 十月四日
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 学園都市。

 人口約230万人の内、学生が約180万人という学生の街。

 能力開発が時間割(カリキュラム)に含まれ、学生の大半は何らかの能力を所持する能力者として存在している。

 六段階で評価される能力レベルの中でも、最高位とされる超能力者(レベル5)は約180万人もいる学生の中で七人しか存在していない。

 その七人の最強の能力者とされる超能力者の中で、第一位の座に君臨する能力者“一方通行”は今……。



一方通行「ーーーおォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」



 自分のマンションの屋上にて、ただ一人寂しく雄叫びを上げていた。







 十月四日。

 0930事件から落ち着いてきた様子の学園都市を背景に、一方通行は文字通り血反吐を吐きながら屋上で叫んでいた。

一方通行「……ハァッ……ハァッ……ハァッ」

 内臓に重傷を負っている身でありながらの雄叫びは体に毒だったが、それでも一方通行は試さなくてはならないことがあった。

 九月三十日の深夜に現出した、一方通行の新たな力。

 黒い翼。

 だがどういった原因で現出したのか分からず、今一度振るおうにもコントロールが出来ていないのだ。

一方通行(あの力はデカい……。今の俺を更なる高みに上らせるには、あの黒い翼は必要不可欠だ……ッ。だが、どォする…。どォすりゃあの翼は出てきてくれンだよ……ッ)

 先ほどの雄叫びは、背中に意識を向けての咆哮だった。

 どうすればいいのか分からない以上、思い付いたことは何でもやってみるしかない。

 だが結果は芳しくなかった。

一方通行「チッ…、クソッタレが…」

 舌打ちと同時に口に残っていた血を吐き出し、一度部屋へと戻るためマンションの階段を降り始める。

 部屋で待っていた一方通行の同居人、御坂美琴のクローンである妹達の個体。

 ミサカ9423号とミサカ3709号が一方通行を出迎えてくれた。

09423号「一方通行、大丈夫ですか? とミサカは顔色の悪い一方通行を心配して駆け寄ります」

03709号「あうあー」

一方通行「あァ、問題ねェよ。気にすンな」

 そういうと、一方通行は口を軽く濯いだ後に再び玄関へと向かっていった。

09423号「またお出かけですか? とミサカは確認を取ります」

一方通行「ちっと出てくるだけだ。すぐ戻る」

09423号「では、ミサカも一緒に……」

一方通行「すぐ戻るっつってンだろ。留守番しとけ」

09423号「ふぇ」

 ジワッ、と目尻に涙を溜めて上目遣いするミサカ9423号だったが、既に一方通行も対応に慣れてきている。

 他の個体と違って泣き虫気質なミサカだが、単純な部分もお見通しだ。

一方通行「ここで言うこと聞いてくれりゃ、次に何処か連れてってやるよ」

09423号「ーーーッ!」

 パッ! と一瞬で眼を輝かせるミサカを確認し、一方通行は玄関を閉めて出ていく。

 ついてくる様子が見られない以上、大人しく留守番する選択をしたようだ。

一方通行「扱い易いモンだ」

 一方通行は何てことないように言ったつもりだが、ミサカにとってはデートの約束をされたも同然だった。

 その事実に気付いているのか否かは当人しか分からないが、この様子では意識していないのだろう。
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