信約 SRP:妹達共鳴計画

□Report.09 十月十二日A
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 御坂美琴からの呼び出しで、第七学区のとあるファミレスに向かう一方通行。

 その足取りは重く、見るからに倦怠感を漂わせていた。

一方通行「ったく……一体、何だってンだァ……?」

 何か話すことがあって呼び出したのだろうが、一方通行自身には身に覚えがない。

 そもそも、電話では語れない内容を話されるほど、美琴と深い仲になった覚えもないのだが……。

一方通行(……まァ…、妹達の実験に加担してた以上、無関係ってわけでもねェンだよなァ……面倒臭ェ)

 負い目を感じているなどと素直に言葉に出来ないが、美琴からの頼みでは無下に出来ないのも事実。

 溜息を吐きながらも、一方通行は指定されたファミレスへと到着したのだった。

一方通行「え〜っとォ……」

御坂美琴「一方通行、こっちこっち」

 店内を見渡し、店員に一言断りを入れて美琴と合流する。

 いや、正確には美琴“たち”と合流した。

一方通行「あァン? お前らは……」

白井黒子「お久しぶりですの」

佐天涙子「ど、どうも……」

 見覚えがあった。

 確か、エンデュミオンの崩壊阻止に関わった際、風紀委員の構えてたテントの中で知り合った顔ぶれだ。

御坂美琴「いきなり呼び出して、悪かったわね」

一方通行「この際、もォそンなこと気にする必要はねェよ」

 美琴たちの着くテーブルの横に杖を立てかけ、一方通行の席に座る。

 水を運んできた店員に、とりあえずコーヒーを一つだけ注文し、早速美琴へと話題を振った。

一方通行「それで? わざわざ電話してきたにもかかわらず、この俺をこンな場所に呼び出した用事ってのは一体何なンだよ?」

御坂美琴「…………」

 美琴は、一方通行の注文したコーヒーが運ばれてくるまで何も話さず、他の二人も黙っていた。

 店員の対応が早く、待っていたと表現するほど長い時間ではなかったため、それを意図していたのかは分からない。

 だが、一方通行の手元にコーヒーが来たと同時くらいに、ようやく美琴は重い口を開いて本題に入る。

御坂美琴「単刀直入に訊くわ。初春さんを知らない?」

一方通行「あァン? 誰だ、そりゃ」

白井黒子「以前、エンデュミオンの倒壊を食い止めていただいた際、わたくしたちと同席していた風紀委員ですの」

一方通行「……あァ、あの花飾りか」

 頭の上にこれでもかと花飾りを乗せていた風紀委員を思い出しつつ、一方通行はコーヒーを飲む。

 美琴は、その初春という少女のことが知りたいのだろうか?

一方通行「俺がそいつの素性を知ってるとでも思ってたのかァ? 何か知りてェなら、横にいるツインテールにでも訊けばイイじゃねェか。常盤台中学の制服着てるし、先輩後輩の仲なンだろ?」

御坂美琴「そういうことを訊いてるんじゃないのよ! そもそも、そんなことで解決するならアンタなんか呼んでないって!」

一方通行「……じゃあ何だってンだよ。先に言っとくが、俺はそいつのことは何も知らねェぜ?」

 初春を知らない? と問われれば、知らない、と回答する。

 それ以外の回答など用意していない一方通行だったが、対する美琴たちは望みを絶たれたことに表情を暗くした。

一方通行「何があったってンだよ。そろそろ詳細を話しやがれ」

御坂美琴「……三日前…学園都市の独立記念日だったの、知ってるでしょ…?」

一方通行「あン? 学園都市に住ンでる以上、知らねェはずがねェだろ」

白井黒子「あの日、わたくしたち風紀委員は祝日だろうと関係なく、いつも通りの仕事が行われていましたの。平日だろうと休日だろうと祝日だろうと、この町の治安を守るのが風紀委員の務め。休みなどありませんわ」

 一方通行は理解できない。

 いまだに美琴たちの抱える悩みの意図が見い出せないのだ。

一方通行「それが何だってンだよ。この俺を風紀委員に誘い入れる新手の勧誘かァ?」

佐天涙子「初春は、私と同じ中学で、親友で……ここにいる白井さんのパートナーだったんです。でも、その日……」

 初春は佐天の親友で、風紀委員としては白井のパートナー。

 美琴以外の二人の関係性が少し判明したところで、白井は今現在の重要な悩みの種を語り明かした。



白井黒子「その初春が、三日前から音信不通ですの。風紀委員の仕事を怠ったり、サボるようなことが百歩譲ってあったとしても……無断欠席は初めてですの……」



一方通行「音信不通?」

佐天涙子「何度も携帯に電話しても、一向に出てくれる気配がないんです……。それで私、初春のことが気になって、寮の部屋に様子を見に行ったら……」

 言葉を濁した佐天に代わって、美琴が初春の住まう寮の現状を教えてくれた。

御坂美琴「メチャクチャに荒らされてたわ……。多分…、何かからの襲撃を受けたんだと思う…」
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