信約 SRP:妹達共鳴計画

□Report.10 十月十三日
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 一方通行は私室に置かれた寝台の上に寝そべりながら、学園都市の町並みを窓から眺める。

 いつもと変わらない風景が広がっていたが、一方通行の胸の内や脳裏に広がる光景はいつもと違う。

一方通行「…………」

 全ては昨日、公園にて遭遇したバグパラの三人目の構成員“タランチュラ”を名乗る女性が関係していた。

 と、そんな時。

 礼儀として一方通行の扉がノックされ、その向こうから入室を求める声が聞こえる。

09423号『一方通行、部屋に入っても宜しいでしょうか? とミサカはお願いします』

03709号『あうえあえーあ』

一方通行「………おォ…好きにしろ……」

 一方通行が入室を許可し、すぐに扉は開かれた。

09423号「失礼します。と、ミサカはぺこりとお辞儀をします」

03709「あうあー」

レディリー「失礼するわ」

一方通行「テメェの入室を認めた覚えはねェ」

レディリー「仲間外れなんて寂しいわ。会話の邪魔をするつもりはないから、ここにいても構わないでしょ?」

一方通行「……チッ」

 不機嫌そうな態度を取って示すものの、一方通行はレディリーを追い出すような真似はしなかったし、ミサカたちに指示することもない。

 単に面倒なのか、それとも諦めたのか。

 またはそんなことに気を回していられないほどに、今は何かを考えなくてはならないのか。

09423号「また…戦いが始まるのですね…とミサカはバグパラとの戦いを示唆して呟きます……」

一方通行「………連中の正規構成員は四人だ。ムカデとサソリを潰した以上、残りは二人。その内の蜘蛛女がまず顔を出してきたってだけだ…」

 センティピードは空の彼方に葬った。

 スコーピオンも撃破した。

 最後の一人が何者かは知らないが、三人目としてタランチュラが現れた。

 彼女が、次に一方通行が挑まなくてはならない敵。

09423号「昨日の件ですが、バグパラは何を考えているのでしょうか……とミサカは不安でいっぱいの胸に手を当てながら首を傾げます」

03709号「ぁう〜?」

一方通行「さァな…。どォせ鬱陶しいお祭り騒ぎだろォよ……。クソッタレが…」

レディリー「……」







 昨日の公園でのこと。

 佐天の隣りでブランコに揺られていた一方通行の前に、バグパラの下部組織が所属の二人が顔を出した。

 いまだに詳細の掴めない男、大野。

 電撃使いの能力者である女、杉山。

 そしてバグパラの正規構成員の一人、タランチュラ。

一方通行「のこのこと現れるなンざ余裕だなァ、おい。俺がテメェらをブチ殺す気でいるのを知らねェわけじゃねェだろ?」

タランチュラ「もちろんよぉ。でも、アタシだって殺されに来たわけじゃないの」

 そう言ったタランチュラは自身の細い腕を上げると、一方通行に向けて軽く拍手を送った。

一方通行「……何のつもりだ?」

タランチュラ「見ての通り、素直に称賛してるだけよ。まさかバグパラの構成員を二人も倒されるなんて思わなかったものだから」

一方通行「ナメてンのか? よっぽど愉快なオブジェに変わり果ててェと見えるが、そォ捉えても構わねェよな?」

タランチュラ「あらあら。今日は挨拶に来ただけなのに……。そんなに好戦的なのかしら?」

 ギリリッ、と奥歯を噛みしめた一方通行は電極のスイッチを確かめて身構える。

 背後に佐天を退けさせて、ただ前だけを見据えて腕を振るう。

一方通行「そンなモン、結局はテメェらの都合だろォが! 狩人の前に獲物が顔出してンなら、狩るより他に道はねェンだよッ!!」

 足裏のベクトルを操作し、一気に距離を縮めていく一方通行。

 しかし、タランチュラの傍らにいた杉山がデタラメな演算式を組んで、次の瞬間には狙いが全く定まっていない電流が周囲へと放たれた。

一方通行「あはぎゃはは!! 何だァ、その様はァ!? 能力の基礎を改めたらどォだァ!!」

杉山「うるっさいなぁ! こういうデタラメな攻撃で十分なのよ!」

一方通行「はァ? 脳みそ大丈夫ですかァ? こンな攻撃、俺が干渉できねェとでも思ってンのかァ?」

大野「あぁ、そう考えちゃうか。そりゃ残念」



大野「狙いは、そこじゃないんだよ?」



 大野に言われて、一方通行は即座に気付く。

 この電撃が放たれた先に目標はいない。

 本当の意味でデタラメに、暴発する銃の玉が四方八方に飛び散っていくかのような攻撃。

 その攻撃は確かに一方通行の能力の前では無力なのだが、逆に言えば“一方通行だけには”効果がないのだ。

一方通行「ーーーッ!!」

 つまり……。



 一方通行の背後にいた佐天涙子には、これ以上に危険な奇襲はない。



佐天涙子「……あ…ッ…!!」

 佐天が気付いた頃にはもう遅い。

 あちこちに放たれる電撃の帯が、佐天の眼前まで迫っていた。
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